表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/67

第39話:ヒッチコック作戦、決行!

 僕たちの準備は整った。

 カンタ部隊は上空待機、僕と兄とカメさんが潜入部隊。井上さんは金川さんと合流し、車で待機となる───


「の前に、駆、変装しなきゃな」


 真顔で兄が言うので、なんのことかと首をかしげると、僕のクローゼットを漁り出した。

 井上さんがいる手前、そんなにおおっぴらに開けないでほしいっ!!!


「地味な色ばかりですね」

「カメさん、うるさいっ」


 兄がごそりと取り出したのは、大きめのTシャツとカーゴパンツ、そしてキャップだ。

 突き出された僕は渋々受け取り、ひとり部屋にこもると、もぞもぞと着替える。

 のっそりとベランダに姿を出した僕を見て、みんながいっせいに吹き出した。


「カケルくん、白のハイソックスはないっ」

「駆、マジで似合うな!」

「やばいな、カケルっ」

「カケルさん、似合ってますよ」


 僕自身わかっている。

 大人が無理してコスプレした小学生だ。


 僕はざっとカーテンを引き、着替え直してベランダに出ると、みんなの顔が素になっている。


「カケルくん、面白くない」

「さっきのでいいじゃん」

「まともになったな、カケル」

「カケルさん、似合ってますよ」


 まじまじと全員の顔を眺め、僕は息をつく。


「なんで、普通のTシャツにジーンズでそんな顔されなきゃいけないんだよっ」


 この発言に井上さんがため息だ。


「もういい。あたしがコーデするっ!」


 そう言いながらクローゼットに手をつけた井上さんに僕はアワアワとするが、


「パンツ出てきたってなんとも思わないし。うち、弟いるし!」

「そういう問題じゃないってば!」


 僕の制止の声は虚しく部屋にこだまする。

 井上さんは僕の黒歴史を探しあててしまった。

 彼女がむんずと掴んで差し出したのは………


「はい、これ着て!」


 これは昔気の迷いで買ったTシャツ。


 そう、黒歴史を具現化し暗黒のTシャツ!!!


 黒いTシャツに白でよくわからない英語と羽がごちゃごちゃと書かれた、厨二病患者が好むデザインだ。

 背中にデカデカと書かれた2枚の羽がもう、痛々しくてたまらない。


「なんで見つけるの……」

「これにジーンズとキャップかぶれば完成! ちょっぴり影あるくらいの方がいいよいいよー!」


 僕はため息ごと受け取り、井上さんをベランダに押し出して、嫌々ながらようやく着替える。

 再びベランダに出るとみんな納得の顔だ。


「ちょー痛そうな中学生だな、駆」

「うるさいよ、兄さん」

「似合ってる似合ってる!」

「……井上さん、言わないで」

「そういう中学生、よく見るぞ」

「えぐらないで、カンタ」

「似合ってますよ、カケルさん」

「カメさんはうわべだけだよね」


 これにキャップを深くかぶって、黒いリュックを準備する。

 リュックの中には、まずカメさんを。カメさんには保冷剤を渡せば問題ない。

 そして、カメさんは嫌がっていたけど、()()()()をカバンに詰める。



「では、準備ができたなら、決行なのです!!!」



 リュックからひょっこり頭を出したカメさんの声を受けて、自転車にまたがった僕たちは走り出す。

 井上さんはホームセンターへ。

 僕たちは大学へ。


 井上さんは10分程度。僕たちが向かう大学までは20分。どちらも大した距離じゃない。

 ハチコやモップ、シロにハチミツのことを考えたら、これぐらいどってことない!


 スマホにつなげたイヤホンから、井上さんの声がする。


『カケルくん、金川さんと合流した! 今、大学近くの公園に向かってる』

「僕たちは順調に進んでるよ」


 自転車は順調だ。

 ぬるい空気も自転車のおかげで涼しく感じる。


 だが大学の近くに進むごとに、人が増える。

 それこそ大学の100m前には、報道陣、動物を奪われた飼い主、そして、しゃべる動物反対派の人間たちであふれている───



『バードテイマーカケル! 行ってこいっ!』

「まかせろっ!」



 ───今を楽しむ邪魔をするのは、許さない!

 だって僕は、バードテイマーだからねっ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ