表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】ベランダの秘密基地 〜しゃべる猫と、家族のカタチ〜  作者: 木村色吹 @yolu


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/67

第37話:秘密基地に全員集合!

 一度、僕は空気を吸い込み、兄の言葉を頭のなかで繰り返す。



 ───が、やっぱりわからない。



「兄ちゃん、言ってる意味がわかんないんだけど」


「お前もマークされてるってこと」


「は?」


 唐突な告白に僕は戸惑ってしまう。


「駆、赤いリュックに猫詰めて走ってるだろ?」


 あまりの的確な言葉に言葉がなくなる。


「動物回収チームの中じゃ有名だぞ? ()()()()()()()がいるって」


「なにそれ」


「猛獣使いを文字ってるんだろ。とにかく、赤いリュックのお前はマークされてんだよ」


「よく兄ちゃんの弟ってバレてないね」


「たりまえだろ? おれはうまく立ち回ってんだよ」


「で、僕が3番目の弟ってどういう………」


「お前がバードテーマーだとバレるのはまずいから、中3の弟がいる設定にして、大学に潜入しようぜ」


「は?」


「とりあえず、おれが先輩方の目を引くから、お前がその間にハチコとモップを回収。完璧だろ?」


「いや、結構無理あると思う」


「お前が中学生らしく無邪気に檻のなかに入っていけば問題ねぇよ」


「………それこそ無理あるだろ」


 僕が呆れて言うと、兄はがばりと立ち上がる。


「とにかく! 2人で行けば、ハチコとモップを回収するのは問題ねぇよ。他の動物の家族とかは絶対入れないようになってるけど、おれとお前なら入れる。こんなもん、入れたモン勝ちだろ。思い立ったら吉日、ほら行くぞっ!」


 僕は兄の腕を思わずつかんだ。


「………それじゃダメだ」


 僕の言葉に驚いたのか、兄はいぶかしげに見つめてくる。


「だって、()()()帰りたがってるんだろ? それに井上さんのハッチにシロも……」


「そんな頭数、さばけるわけないだろ」


 兄は大げさにため息をついた。

 すぐ即答した兄の頭の中には、これからのシミュレーションができあがっているのは間違いない。

 さらにいえば、かなりの頭数が収容されてるのだろう。

 


 だけど────



「……やらなきゃ。僕らの他に誰ができるの……?」


 見上げた僕の目を兄は見据える。

 僕にとって、これは絶対しなければならないこと。

 最優先のこと。

 どんなことよりも、これからどうなろうと、しなきゃいけない。




 しゃべる動物を救う───!!




 兄は僕の目をしばらく見たあと、再び大げさにため息をついた。


「お前って昔からそうだよな。こう決めたら、ゆずらねぇもん」


 兄は再び座り直すが、睨むように言う。


「……じゃ、どうするんだよ?」


 その顔に、僕は笑顔を向ける。


「まずは作戦会議だよ、兄ちゃん」


 僕は鳴り止んだスマホを取り上げた。


 数分前の僕じゃない。

 何もかもに諦めた僕じゃない。



 ───立ち向かえる僕が、ここにいる。



 自分の頬を叩いてから、僕は井上さんに通話を入れた。

 すぐにつながった井上さんにこちらの現状を伝えると、さらに声を震わせるが、僕は努めてしっかりと言った。


「井上さん、秘密基地で作戦会議だ」


 弱々しく沈んでいた彼女の声が、一気にハリのある声に変わる。


 すぐ行く。の言葉通りに、ものの10分で到着した井上さんの目は、赤く腫れてはいるものの、強い意志が見える。


「ね、あたし、何をしたらいい?」

「焦ってはダメですよ、リンさん」

「カケル、みんなを救うんだろ?」

「ようやく、おれの頭脳が役立つときがきたな」

「……まずは僕たちの手駒を確認しよう」


 この秘密基地が、基地となった瞬間だ。

 そのメンバーは、僕に井上さん、そしてカメさん、イケボのカンタに、新入りの兄。


 みんなを救出する作戦会議がこれから始まる───!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ