第33話:朝を待つ僕ら
僕たちは、ただ隠れることしかできない。
それを再確認して、解散した。
また、いつも朝を迎えられるように、じっと隠れていよう。
息を潜めて約束した───
その日の夜は散々で、無言の圧力で支配しようする母に、屈しないぞという強気の父がいて、夕食はただただ重圧の食事だった。
睨む先は僕で、やはり夫婦の問題は僕なのだと、再認識せざるを得なかった。
すぐに離脱した僕だけど、兄も同じように部屋へと潜っていくのを見て、やっぱり兄も僕のことが邪魔なんだろうと思えてくる。
それでも部屋に戻ればみんながいる。
ハチコとモップを一緒に抱きあげ、顔を埋めたあと、カメさんの冷えた甲羅をタオルで拭くと、カメさんは気持ちよさそうに目を細めてくれる。
ルーチンと化したみんなとの戯れも済み、まだ夜の9時。
「今日も読書しちゃおうかなぁ」
開いた窓から風が流れ込む。
ひんやりとした夜のベランダは、毎日秋が少しずつ浸透しているからだろうか。日中の残暑なんて残っておらず、今日は肌寒く感じるほどだ。
ブランケットを膝にかけ、みんなでベランダでごろりとしながら、読書は始まった。
不意にカメさんが僕の手元を覗きこんだ。
「何読んでるんですか?」
「今日はホラーだよ」
「夏にホラー、定番でいいですね」
「でしょ?」
毛玉の2匹は眠たい時間のようで、僕の足の隙間で丸まっている。
はい。この姿も撮影済みです。
「おい、カケル」
「声でかいって」
名を呼ぶイケボに僕が言うと、一瞬口を閉じ、小声に直して話しだした。
「おい、カケル」
「なに?」
「マヨネーズは?」
「お昼に食べたでしょ」
「はぁー……俺もおまえん家の子になりたかったなぁ……」
「なにそれ」
「マヨネーズ食い放題だろ?」
「なわけないでしょ」
今日は月がくっきりと見える。
柔らかな月明かりが空にじんわりと広がっている。
「平和だな」
カンタがそう言ってくれたので、僕も「そうだね」そう、返しやすかった。
───だけど、いつもの朝は、望んだ朝は、
………来なかった。





