表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/67

第3話:現実に追いつけない……

 亀が僕に話してくれたことは、突拍子も無いことで、ただ、僕は言葉を失った。



 だって────



「これは、地球以外の星の方からのプレゼントなのですよ」



 ……もう、どこかの電波を拾っているとしか思えない。



 のそのそと亀は部屋に入るなり、亀はそう言ったけど、僕はそれに頭を抱えた。

 今の現状を整理しようとするが、ぜんっぜん、まとまらない!


「いやぁ、窓越しに見てたが、入ってみてもいい部屋じゃねぇか」


 イケボが部屋に響く。

 鳥だからなのか、彼の声は部屋でも響いて聞こえる。

 きっと発声の仕方がいいのかもしれない。


「いい部屋ならよかったよ」


 僕がカンタに答えていると、足元のハチコとモップは亀に興味津々だ。


「申し遅れておりました。初めまして、私はクサガメのカメです」


 亀は頭をゆっくりと下げる。お辞儀をしている。

 僕もおずおずと頭を下げると、ハチコは亀に近づいた。


「あたち、ハチコ。ねぇ、魚みたいな匂いする。カメ、食べれる?」


 小さな手で、てとてとと叩いている。


「私は食べ物じゃありませんっ!」


 首も手も縮め隠してしまうが、ハチコは諦めきれないようで、甲羅の端を噛んでみる。

 モップもハチコにつられ噛んでみたが、思った味ではなかったようだ。


「おいちくない」

「モップ、これ、食べない」


 不服そうな彼らを抱き上げ、僕はベッドに掛け直すと、


「バイキンあるかもしれないから、それ以上近づかないようにね」


「私は、そんな不衛生な場所で暮らしていませんっっ!!!!」


 かなり強く、キレられた……


「まぁ、カメの旦那、そんなにカッカしなさんな。

 オレもしゃべれるようになったんだ。カケル、仲良くしようぜ?」


 僕は追いつけいない現実に目を細めながら、小さく頷いてみる。

 ……というか、カメさんは、オスだったんだ。

 改めての新事実に心を乱されないように深呼吸すると、僕は初めに思った疑問を口にしてみた。


「……その、宇宙からのプレゼントだとして、なんでカメさんが僕を監視するの?」


「いい質問ですね!」


 カメは前足を上げ、自信ありげに説明を始めた。


「どうも、その星の方々は、今まで交信できなかった生物と交信できるようになるとどうなるのか、その情報を集めているようです。

 なので、知識豊富で礼儀を重んじる我々亀が、その任務につくこととなりました」


「へぇ……知識豊富なんだぁ……」

 

 じとりと見ながら僕が言うと、


「なんですか、その冷ややかな目は!!!

 我々は長い年月をかけて知識を増やし、仲間と共有する術を持っているのですっ」


「……へ…うそ……」


「嘘です」


 真顔になった僕を見上げ、亀はひとつ咳払いをする。


「兎にも角にも、我々亀が監視の任を与えられたわけなので、しばらくはベランダに住まわしてください。

 別にあなたが嫌といえば別な家に行くだけです。人の監視はあなたでなければならない理由はありませんから」


「うん……え? ええええええええ!!!! 住むの?? ここに!?!? え? 僕じゃなくてもいいの?!」


 驚く僕に構わず、ハチコとモップは嬉しそうに走り回る。


「ハチコ、ともだち、ふえたの!」

「モップ、たのしい」


 騒ぐ彼らを再び捕まえ、ベッドに置き直すと、今日何度目かわからないため息をつく。

 『ともだちふえた!』と喜ぶ2匹に、『亀よ、どっかいけ!』とは言いづらい。


 ………これは、飼う方向で考えるしかないようだ。


 騒ぐ猫を見下ろすカンタは、自信ありげに羽を揺らす。


「喜んでもらえて何よりだ、カケル。日頃の菓子パンの礼だ」


 照れた雰囲気で言ってはくるが、僕は真顔だ。


「カンタ、馬鹿だろ。イケボだけど馬鹿だろ。なんもお礼になってない」


 僕は異常な現実を直視しないように、まずはパソコンで亀の飼い方を調べる。

 僕と一緒に画面を見ていたカンタだが、部屋の時計を見やり、


「お、朝飯漁ってくるわ。また遊びに来るな」


 そう言って颯爽と飛び立っていった。

 ハチコとモップは床を徘徊しながら、カメにこの部屋にあるものの説明をしている。


「ここ、カケルのベッド。あたちたちの寝床」


「カメはどこでねるの? モップたちといっしょ?」


「私は湿気のあるところがいいですねぇ」


「あたち、じめじめ、ちょっと好き」


「モップきらい。カメさん、お外!」


「私は外の方が合ってます……が、暑い日は少しこの部屋もいいですねぇ…とても涼しいですから」


「ここ、すずちいの。あたち、この部屋好き」


「モップも! モップも!」


 3匹のちぐはぐな会話を聞きいていると、なんだか楽しい。

 

「ハチコとモップ、なんか欲しいものある?」


「あたち、おもちゃ」


「モップ、やわらかいごはんがいい」


 僕は思わず頭を撫でる。

 言葉が話せなかった、前と同じだ。

 ハチコはいつだって遊びたいし、モップはいつだっておいしいご飯が食べたい。


「かわんないな」


 僕が笑うと、ハチコとモップも一緒に笑ってくれた。


「私は葉物が好きです」


 そういえば、亀もいたんだったな……

 僕は改めて亀の飼い方を調べていく。


「これからどうなるんだろ……」


 呟いてみたけど、やっぱり何も解決していない。

 それでも心が浮つくのはどうしてだろう。

 大好きなハチコとモップとおしゃべりできるからだろうか?


 いや、もっと、こう、別な気持ちだ。


 田舎の婆ちゃん家の裏山に行く気分……

 秘密基地を作った、あの夏の日の気持ちに似てるかも……


「……楽しんでみようかな」


 残りの9日の夏休み、ちょっと忙しくなりそうだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ