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第2話:平凡な夏休み!?

 逃げられない不可思議な現実に、僕はただ階段を転げるように降りていく。



 だけど、飛び出しておいて、僕は一体どうしようとしてるんだろう……



 寝起きの覚めきれていない頭でぼんやり思いながら、いつもの流れでリビングを隔てる扉に手をかけたとき、



 ───『殺処分』



『「世界各地で動物が喋る事例が増えており、ウイルスの可能性も否めず、そういった動物を見つけた際は然るべき機関へと届けていただきたい」そう国が言ってるんだから国⺠は届け出るべき。だいたい動物がしゃべるなんて気色悪い。殺処分でもしたほうがいい!』

 そのコメンテーターの言葉にアナウンサーがたしなめる声がする。


 さらに続いて、

『おって、喋る動物の保護などをしていないか、公的機関の巡回も考えているとのことです』

 そう繋げた。


 あとから両親の声が聞こえてくる。


「うちの猫も喋ったらどうしましょう……」

「そうだな。いや、届けるしかないな」

「ですよね。気味悪いし……」


 目の前が白くなる。



 ───隠さなくちゃ……



 素早く振り返ったとき、そこにいたのは兄だ。

 不機嫌そうに僕を睨む兄の顔がある。


「兄ちゃ…あ…ごめ……」

「お前、ウザい」


 兄の声に気圧されてしどろもどろになったとき、


「ねえ、ウザいってなに?」


 かわいらしい声が胸元から聞こえる。

 腕の中を見ると、ハチコが目を輝かせてこちらを見上げていた。

 モップは「ごはん!」そう言ってまん丸の目で僕を見る。


「あああーーーーーー!!!!!!……朝から高い声ってなかなか出ないね!!! きゃぁぁぁぁ!!!!!」


 僕は奇声を上げながら、一気に自室へと駆け上がった。

 2匹を放って、ばたりと部屋の扉を閉める。


「お、お前たち、喋っちゃダメっ!」


 怒ってみるが首を傾げるだけでわからないようだ。


「お前たちが喋っているのがバレると、……ようは、死んじゃうの!!!」


 2匹で首を縮め、体と尻尾を膨らませた。


「……モップ、死ぬの?」

「あたち、やだ」


 床に座りこんだ僕は2匹を撫で、そっと抱き上げる。

 ぴったり僕にくっついた2匹は、ただただ戸惑う僕に反して、


「でもカケルがいればモップ大丈夫」

「あたちも!」


 そう言いながら喉を鳴らして、安心した2つの丸い顔が上を向いた。



 ───僕がどうにかしなきゃいけないんだ……



「……大丈夫。僕がついてる……!」


 2匹は答える代わりに、僕の頬へとすり寄った。

 それが温かくて、優しくて。

 だけど僕の心は戸惑うばかりで、一体どこから始めたらいいのか全然わからない。


 小さくため息をついて途方に暮れていると、いきなり窓が叩かれた。

 驚き振り返るとベランダの窓をつつくカンタがいる。その隣にはカンタが連れてきたのか、掌ぐらいの亀もいる。


 カンタに気づいたモップは、僕の腕からするりと抜けると、窓越しに声をあげた。


「カンタ、おはよう!」


 羽をばさりと挨拶がわりにカンタが広げて見せる。


「モップ、おはようさん。なぁ、窓、開けてくれよ」



 僕はカラスのあまりのイケボに固まった……



 艶のあるいい声だ。

 だがあのカラス、しかも、カンタから聞こえてくる……


 神は僕に何もお与えにならなかったのに、カンタには羽もイケボも与えるとは、なんとも不公平だっ!!


 僕は妙な脱力感とともに、言われたとおりに窓を開けた。


「お、カケル、ありがとな」


 カンタの声に頷くが、亀が黙って僕を見上げている。


 なんだろう、この亀は……

 カンタの朝食だろうか……


「……君はカンタのご飯…かな?」


「私は宇宙からの使者ですっ!!!」


 小さな爪のついた手で、ベランダのコンクリをぺちぺち叩きながら亀が言う。

 よほどご立腹なのか、口をパクパクさせ、首をブンブン振っている。



 僕は亀の言葉を脳裏で反芻させながら、改めてその亀を見下ろした。



「………いやいやいや!!! ただの亀でしょっ!?!?」





 驚き続ける僕に、この亀が話し始めたことはとてもじゃないけど信じられるものではなくて……


 だけどこの日から、短くて濃密で、特別な時間が始まったんだ────

プロローグが終わった感じになります。

次話から、秘密基地を作っていきますよー!

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