杜若に想いを
杜若と言っただろうか?
兎の耳のような可愛らしい形で、黄の模様で内を飾った青い花を彼女はとても好いており、私にも押した花弁をお守りだと言って贈ってくれたこともあった。
足軽であった私は彼女と多くの時間を共にすることはできず、私の数倍の寂しい思いをさせただろう。
彼女は聡い娘であったから、私がもう戻ってくることが難しいというのもよくわかっていただろう。
次の戦が終わっても、まだ戦は続くだろう。
思えば、いつでもこの花のお守りが私を救ってくれていた。
しかし、私にとっての幸せはこの花の運ぶ幸運などではなく、彼女の好意と笑顔であった。
願わくばもう一度、彼女の笑みが見たい。
最後の時は近い…彼女にこの杜若のお守りを返してやりたいな。
彼女のおかげで私は十分に幸せだった。
どうか次は彼女に幸せを…。
梅雨の時期が巡り杜若の花を見る度に彼のことを思い出す。
あなたがいないと私は幸せになどなれないのに…と私は雨に濡れた花に語りかけた。
杜若の花言葉は、贈り物、幸運は必ず来る、幸せはあなたのもの。