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補足 下

1/2

「……元婚約者に襲われた時、助けてくれたのはジュリア、貴女なの?」

「最初から分かっているじゃあない」

「何故? 何故私を助けたの?」


レベッカはソレが不思議だった。

悪役令嬢としてのレベッカはヒロインであるジュリアにとって天敵な筈。バットエンドはレベッカが放たれた暗殺者に殺されるエンドもある。

そんな相手をどうして?


「貴女はあのゲームをどこまで遣り込んだの?」

「私は……友達がやっていたのを隣で見ていただけでしたから」

前世のレベッカの友人は実況者をやっていて、レベッカも時々その手伝いをしていたのだ。乙女ゲームもその時に知ったのだ。


「私はねあの乙女ゲームの中で『レベッカ・ザツロフ』が一番お気に入りのキャラだった」

「そうなの? 私はあのゲームの中では一番恐ろしいキャラだったわ。理由は何なの?」

「あのゲームに裏話があるって知っている?」

レベッカは首を横に振る。


「あ、そう言えば友達が動画の最終回で『このゲームは攻略本しかない葉書を投函して手にいれたパスワードを手に入れて、全スチルコンプリートした後に出てくる画面にそのパスワードを入力したら特別なモノが出るよ!』と言って〆ましたから」

「そう。予約しか手に入らない攻略本の葉書を投函して、尚且つスチルを全て手に入れたあのゲームを遣り込んだ者がやっと見る事が手に入れるのが『キャラクター達の裏話』」

「……レベッカ・ザツロフはどんな裏話を?」


「レベッカが攻略キャラであるチャールズに執着したのは今日襲ってきた屑のせい。

あの男はレベッカを徹底的に虐め、あの事件をレベッカのせいだと嘘をつく事に成功する。そのせいで家族から見捨てられ段々と孤立する。

そんな時に助けてくれたのがチャールズ。彼が断罪した――あのクソッたれスラムの娼婦や子供をなぶり殺していたの――お陰で侯爵家は没落。その時レベッカに何かあったのか家族はやっと気付いたのだけど、もうチャールズにしか心を開く事が出来なかった。……裏話の最後には開始当初からレベッカは未婚なのに処女ではなく、スチルを良く見れば彼女の身体に……」

「もう良い! 言わなくても分かるわ!!」

「……因みに破棄したのは十一歳の時だそうよ」

レベッカは身震いする。元婚約者の異常性はチャールズから聞いていたが、予想以上に最低な男だった。

あのままあの男と婚約していたらどんな目にあっていたか……


「私はゲーム当初から一途にチャールズを愛し、チャールズの為なら形振り構わない『レベッカ』の事を好ましく感じていた。

エンドの一つにヒロインを爆発から助け、死ぬ間際『どうか私の分までチャールズと幸せに生きて』と言った時は感涙したわ。

その上で裏話を聞いた時は本気であのゴミをブチ殺したくなったわ。だから前世の記憶を思い出した時、絶対に『レベッカを助ける』と決めたの」

「もしかして私の小さい頃の記憶があんまりないのは……」

「私が『記憶消去』の魔法を掛けたから。決定的な事件を回避できたとは言え、あのボケのせいでトラウマを作っている可能性があったから、深夜誰もいない内に掛けたの。

流石にあの時『記憶消去』の魔法は習得できなかったから、師匠に頼んで」


その時忌々しそうに顔をゆがめるジュリア。「あの野郎あんな無理難題言いやがって」と呟くからに魔法を掛ける代わりにキツイ交換条件を言った様だ。




「私、貴女に沢山助けられていたのにソレを気付かなかっただけじゃあなく、それどころか貴女に怯えて……」

「しょうがないよ。ゲームではレベッカはどの選択肢を選んでも生存√は無いし、レベッカの家族は自主的に爵位を返上しちゃうもん。『娘が助けを求めている時に、助ける事が出来なかった。そのせいでこんな事件を起こしてしまった』と言って周りの説得も聞かずに、レベッカの冥福を祈る為に家族全員修道院に入る。これも共通の√だからね。

警戒しても可笑しくないよ」

「……本当にありがとう」

深々と礼をするレベッカ。

自分は何て幸せ者だろう。ヒロインのお陰で自分は元凶である元婚約者と破棄出来、チャールズと言う素敵な旦那様を持つ事が出来た。

彼女が助けたお陰で家族との仲がゲームの様に悪くなる事がなかった。

そして今日、彼女によって命を助けられた。

どんなにお礼しても足りない程の借りを作ったのだ。



「それじゃあ、話はこの辺で」

あっさりとジュリアはレベッカに背を向けて帰ろうとした。ソレを慌てて止めるレベッカ。

「待って! どこに行くの?」

「何って冒険者ギルトの任務。この国に来たのは偶々任務の道中に立ち寄るから立ち寄っただけ。まさか事件に巻き込まれるとは思わなかったわ」

「最後に一つだけ聞かせて。どうして貴女は学園に入学しなかったの? チャールズや他の攻略キャラと恋愛してハッピーエンドを目指せば幸せに暮らす事が出来たのにどうして?」


ジュリアは立ち止まり振り返った。


「私はね。こう見えて欲深い女よ。あのゲームは一番偉いのは第七王子のチャールズ。王太子なら兎も角、ただの王子じゃあ物足りない。

もっともっと知識が欲しい。もっともっと力が欲しい。もっともっと美味しい物を食べたい。もっともっとお金が欲しい。もっともっと素敵な男と結婚したい。


だから私は国を出た。そのお陰で私は色んな事を学ぶ事が出来た最高難易度の魔法を幾つも習得できた。美味しい物を一杯食べられた。後は素敵な旦那様よ。一番偉くてお金持ちでイケメン。そして私よりもずっと強い旦那様。ソレを見つける為に私は冒険者になったのだから。それに」


ニッコリとレベッカに微笑むジュリア。

「……チャールズとレベッカが幸せに暮らしているだけで十分だから」


コレにはレベッカも止める事を止めた。

そして貴族令嬢らしく凛々しく礼を取る。


「……ザツロフ次期公爵として改めてお礼を言います。我が一族を助けていただきありがとうございます。

このご恩は一生忘れません。ジュリア・アバーズ様が何かあればザツロフ家は全力で助けます。どうかお元気で」

「貴女も領主の名に恥じない様に家族と旦那様と幸せになってね。どうかお元気で」


そう言って二人の転生者の少女はそれぞれの道に別れて行った


物語は終わりますが、次のページで登場人物達のその後とあとがきがあります。

それがラストです

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