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今日レベッカは結婚式を迎える。ウエンディングドレスを公爵邸で着て式場である教会まで馬車で向かう。馬車はオープン式なので平民達が美しく飾れているレベッカを見る事が出来るのだ。

これはこの国の高位貴族達の伝統で、公爵令嬢であり王族の人間と縁繋ぎになるレベッカも例外ではない。


今日の為に侍女や母親、果てに友人達を巻き込んでドレス選びに付き合わせてしまった。いや、レベッカが彼女達の・・・・・・・・・着せ替え人形になった・・・・・・・・・・


やれプリンセスラインが似合う、いや、レベッカにはAラインだ、スレンダーラインが良いだとか。


ネックラインだって、オードソックスにベアトップが良い、馬鹿め、聖母にはラウンドネックが一番似合う、お前こそハートカットネックが一番良いだろう、オフショルダーかワンショルダーが良いんじゃねぇ? とか。


スリーブの話になると、アメリカンスリーブが良い!! ロングスリーブが清楚に見える、フレンチスリーブは? いやいや王族らしく見えるパフスリーブがどうか?


最終的にスカートになって。

バッスルライン!! バルーン!!!! ギャザーが一番!! ティアードスカートの何が悪い!!!!! タッキングスカートがレベッカに似合う!!!!!!!!


と本人そっちのけにデザイナーと一緒に熱いバトルを繰り広げていた。

最終的にマーメイドラインに、ハイネックとパコダスリーブは同じレースデザインで、オーバースカートにはスワロフスキーや宝石を散りばめた、清楚でエレガントだけど華麗さも忘れない一点物のウェディングドレスを、製作時間はデザイン案を考えるだけで学園生活二年生の後半から、卒業する前日にやっと完成させた。


「とても……お美しいですわ……」

「本当に、お嬢様の花嫁姿を見られて私は何時お迎えが来ても構いません」

幼馴染の侍女と年老いた乳母が目元をハンカチで拭う。

まるでレベッカは月の女神の様に神秘的な美しさだった。その場にいた人間は一瞬、このまま神に嫁ぐのではないかと錯覚を起こすほどだった。



後にこの時の様子や教会に向かう時に馬車の上で笑顔で市民達に手を振るう姿、厳かに結婚式を進めるレベッカの姿をあらゆる部門の芸術家達が己の実力の全てを費やして作り上げ、後世で『聖母の結婚式シリーズ』として世界中に知られる事はこの時代の人間はまだ知らない。



そうして屋敷に残る侍女や使用人達に今までのお礼とこれからも宜しくと告げ、馬車へと向かった。

馬車の扉を開く従者。フードを深く被って顔を良く見られないが、ザツロフ家や王家の使用人ではなさそうだ。

「貴方見ない顔ね? どこから来たの?」

「冒険者ギルトからレベッカ様の護衛を担当する事になりました。式場までお供させて下さい」

うやうやしく一礼した。

「そうなの?」

てっきり騎士団だけで護衛をすると思ったが、冒険者ギルドにも頼むのか。しかし自分は第七王子の嫁だし、女領主はこの国ではそう珍しくはないのに少し大袈裟すぎではないかと思ったが。


「ザツロフ公爵様の個人的なご依頼ですので」

レベッカの疑問を察したのか、フードの人物が答えた。

「ああ! お父様も困ったものね。大袈裟すぎなんだから」

レベッカの父親であるザツロフ公爵は、オーガを思わせる様な大柄で厳つい顔の男であるが、愛妻家で娘達を溺愛する親馬鹿で有名だ。だから可愛い長女の結婚式の為に大金を積んで冒険者ギルトに護衛の依頼をする事は予想出来る。

レベッカはやっと納得出来たのでフードの人物の手を借りて馬車に乗った。








厳かながら順調に式を進める。

護衛のフードの人物はこの場にいないが、恐らくは見えない場所で護衛しているだろう。そして式は終盤、誓いのキスを始めようとした時だった。


「レベッカ・ザツロフ――――!!!!!!!!」


怒号と共に突然数十人の鎧を纏った男達がドガドガと教会に踏みいれて来た。

鎧の男達の戦闘に立っているのは身なりは貴族が着ていそうな服だが、薄汚れていて所々解れている男だった。スラム街に住む住人の様にやせ細っていて無精髭を生やし、ギラギラと憎しみに燃えるその眼を見て大分年上に見える。


チャールズは咄嗟にレベッカを自分の背中に隠し、騎士団の人間は鎧の男達と戦ったり避難誘導したりで大騒ぎだ。


「グレフロットの馬鹿息子!! 俺の娘の結婚式を邪魔をするとは死ぬ覚悟があるだろうな!!??」

公爵は司教に斬りかかろうとした二人の男を、自分の愛武器である斧で真っ二つにしながら怒鳴る。

「黙れ!! 俺は父上に絶縁されたんだ! あいつが婚約破棄をしたせいで俺の人生はめちゃくちゃだ!!!!」

「馬鹿を言うな!! 破棄の理由は貴様がレベッカに酷い嫌がらせをしたのが原因だ!!!! そもそもグレフロットはお前に更生のチャンスを何度も与えたのに、ソレを台無しにしたのはお前だろうが!!」

「五月蠅い五月蠅い五月蠅い!!!!」


頭に幾つもの疑問符が浮かぶが、レベッカはチャールズに連れられて避難しようした時だった。

「レベッカ――!!!! お前だけは、お前だけは絶対に俺の手でっ!」

男は湧き目を振らずに私の方へと突進し始めた。公爵は他の男と戦闘を初め、護衛の騎士団達も丁度他に手を回していた時だった。

レベッカに襲いかかる男からチャールズが背で庇おうとした時だった。



――――ガッーーン!!!!




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