#4 お昼の時間
数日前、佐々木先輩に私と諒陽先輩の出会いを話してから佐々木先輩は別人のようだった。
諒陽先輩が私達に会いに来る時、必ず隣にいて、相変わらずぼーっと遠くを見つめていることもあるが私を見るとき、穏やかな表情になるのが分かる。多分、きっと、これは勘違いではないだろうと思う。
それからお昼の時間になると私と杏珠と諒陽先輩と佐々木先輩の4人でお昼ご飯を食べるようになった。今は正にそのお昼ご飯の時間だ。
「あんたって何でそんな毎日毎日自分でお弁当作れるのー」
「えー、何でだろ 趣味なのかな」
「趣味とか…稚依、あんたいつの間にそんな女子力を…」
一人暮らしに憧れて実家を出て一人暮らしをしている私は家事や料理だけはきちんと欠かさず行っているつもりだ。
「稚依ちゃんすごいねー!立派だ!うんうん!俺は嬉しいよー!」
諒陽先輩は嬉しそうに うんうん と頷いている。
その時だった 大きな爆弾発言をされたのは。
「稚依、俺にも弁当作ってよ」
what?一体この人は何を言っているのだろうか。
「はい?」
「だから、俺にも弁当作ってって」
「………」
「えええええええ待って待って待って なに?!佐々木さんと稚依ってなに?!付き合ってんの?!なに?!なんなの?!?!」
それはもう杏珠はテンパりまくりで私ももう何が何だか分からない。諒陽先輩は目をまんまるくしたまま驚いている。そりゃそうだ。ついこの間まで自己紹介を無表情で聞いていた人が私に弁当を作ってくれと言っているのだから。
「葵、いいの?あかりがいるのに…」
「結城先輩!!あかりって誰ですか!!!」
「あかりは葵の彼女だよ」
「へ?」
自分でもびっくりするほど間抜けな声が出た。佐々木先輩、彼女いたんだ。そりゃそうか。無愛想を除けば俗に言うイケメンというやつなのだから。
「あかり関係ないじゃん。俺は稚依に作ってって言ってんだから」
「いやいやいや待ってください、関係なくないですよね?!彼女さんいるのに彼女さんに作ってもらってくださいよ!」
「えー」
「えー じゃないです!」
そうか。佐々木先輩は彼女いたんだ。
何故だろう。何故だか分からないけど胸の奥がちくっと少しだけ、ほんの少しだけ痛かった。