#2 諒陽先輩と私①
あれから私達は自己紹介を行った。
「中野杏珠です!大学一年生になりました!経済学部です!」
「頼坂稚依です 杏珠と同じ経済学部です」
「佐々木葵。法学部二年。」
私達が自己紹介をしても表情を変えず自己紹介をしてくれた
「稚依ちゃん 杏珠ちゃん ごめんね!葵って無気力で常にこんな感じなんだー!愛想ない奴でごめんね!」
諒陽先輩がそう言うと佐々木先輩はくるりと向きを変えて歩き出した。
「へ?!葵どこ行くの?!」
「散歩だ、散歩」
勝手だなー!と諒陽先輩が言うと それも無視しているのか聞こえていないのかは分からないが気だるそうに歩いて行く。
私の第一印象はこうだ。
無愛想でいて遠くを見つめている癖に変に色気が漂っていて染められていない黒髪にふわふわの髪の毛の美青年。愛想があるときっともっと素敵な人なのだろうと勝手に推測し諒陽先輩に大学内を案内してもらうことにした。
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大学内を一通り教えてもらい、中庭のベンチに座り話そうということになった。杏珠はこの大学にお兄さんがいて、お兄さんからお呼ばれされたため今は諒陽先輩と二人きりというわけだ。
「稚依ちゃん 稚依ちゃん!聞きたいことが!」
「はい、何でしょう?」
諒陽先輩の聞きたいこととは一体何なのだろうと思いながらも諒陽先輩に視線を向けるととんでもない質問だった。
「稚依ちゃんがここに入学してきてくれたのは、もしかしてもしかしなくても俺がいるからだって期待してもいいのかな?」
にこにことそれはもう楽しそうに嬉しそうに質問してくる諒陽先輩に私は目を丸くするしかなかった。何故この人は私の入学理由を知っているのだろう。もしかして人の心を読み取ることができる能力でも使えるというのだろうか。いやいや待て、いくら図星で焦っているからと言えどそんな非現実的なことはありえない。
「せっ、先輩っ…!」
図星をつかれ、恥ずかしさから思い切りどもってしまった。これではバレバレだ。
「稚依ちゃんはホント俺のこと好きだよねー」
ケラケラと笑い嬉しそうな先輩
そうだ三年前も同じように先輩を追いかけて高校に入学した。その時も先輩は同じように笑いながら私に言ったのだ。
" 稚依ちゃんはホントに俺のこと好きだねー とか言いつつ入学してきてくれること期待してたから嬉しいよー!"
やはり私の入学理由は正当なものだった。何年経ってもこうやって先輩が喜ぶ顔が見られるのだから。この人が居てくれるから生きていく理由が見つかって幸せでいられるんだ。
「稚依ちゃん、これからの4年間も俺に任せてね。いっぱいいっぱい幸せわけてあげるからね!」
「はいっ!」
私と諒陽先輩が話しているのを木の下で日向ぼっこをしていた佐々木先輩が聞いていたのを私は知らなかった。