【真実の物語】③
「え……? そん、な……俺が、親父の子供じゃないって……」
「ああ、ひとつ言葉が足りなかったな。お前だけじゃない。隼斗もだ」
依然笑みを浮かべていた宗雄さんだったけど、ふと、興が削がれたようにそれを消す。
「俺がお前たちを愛していたとでも思ったのか? ふん、とんだ勘違いだな。俺はお前も、隼斗も、彩子も、愛したことは一瞬たりともない」
それは直接的で劣悪な、暴言。
「いいだろう。この際、全て教えてやる」
やっと頭が働く程度の私たちをよそに、宗雄さんは話し始める。
「あるところに娘がいた。莫大な財産を相続する権限を与えられた娘は、ある日重い病気にかかる。
娘は自分の身体の異変を嘆きながらも、治療のためにある医大を訪れた。そこで偶然出会った若い研修医……その男はふさぎがちな娘を励まし、勇気付けられた娘は当然のように恋に落ちた」
……それはまるで、物語を読み聞かせているよう。
「2人は互いに励まし、助け、愛し合った。娘の身体も日増しに良くなっていき、病は完治するものと思われた。
2人は約束を交わした。病が治ったなら、共に人生を歩もうと……。だがそれに反対する者がいた。娘の両親だ」
これは……八神さんが言っていた話……。
「両親は躍起になって2人を引き離そうとし……その手として、大病院の御曹司との縁談を持ちかける。
娘は当然頷かなかった。受け入れなかった。挙句の果てには、男と駆け落ちをした……。
やがて子供を授かり、慎ましくも幸せな日々が娘に訪れた――束の間の、な」
それは、幸せな2人に訪れた悲しい出来事。とても残酷な運命……。
「もうわかるだろう? 子供とは隼斗とお前のこと。そして、その親は彩子と――」
慌ただしい足音が聞こえた。
荒い呼吸が聞こえた。
「この男だ」
宗雄さんの視線の先、部屋に駆け込んで来たのは……。
「……八神、さん……」




