【安息の中の不穏】①
「セラ、どこ行ってたんだよ……って」
若葉くんに手を引かれて帰宅した私を見て、郁人くんが目を丸くした。
「……何かあったのか?」
「はは、大丈夫――」
「に見えない! 足下フラついてるじゃねーか! とりあえず座れ! 話はそっから!」
有無を言わさぬ勢いでリビングまで連行、そしてソファに座らされる。
やがてドスの利いた声で、若葉くんが呟く。
「――クソ野郎をブン殴ってきました」
……たった一言。だけど郁人くんは察してくれたのか、真剣な表情で続きを促す。
私の代わりに、事情は若葉くんが説明してくれた。
「……なるほどな。これからどうすんの?」
「それはもちろん、犯人をあぶりだして血祭りに上げて……」
「落ち着け元眼鏡。はらわた煮えたぎる気持ちはよくわかるが、そうじゃない。警察には通報しないのかってことだ」
警察。身が引き締まる思いだ。それほどの事件に、巻き込まれたのだと。
「それなら僕に任せて。父が警察関係者だから話してみる。……セラちゃん、大丈夫だよ。きっとすぐに捕まる」
「若葉くん……」
ひとつ微笑んで立ち上がる若葉くんに、郁人くんが声をかける。
「アンタ、もう帰るの?」
「僕は犯人の特徴をよく見ているから、父さんと話をしないといけない」
「俺とセラの2人になるけど、いいの?」
「母さんを呼んでおくから平気だ」
「……抜け目のないヤツ」
「でも、この家の中で男は君だけなんだ。もし何かあったときは、君が彼女を守るんだよ。いいね?」
若葉くんの言葉に、郁人くんは口の端をクイと持ち上げる。
「――やってやろうじゃん」




