【襲いかかる闇】①
「すみません。重くないですか?」
「はいっ、力仕事は得意なので、任せてください!」
退院祝いにサプライズでごちそうを作ってあげようと思い立った。
なので迎えはいいよとだけ郁人くんにメールした信号待ち。
そこで聞いたんです。ドサッ、という音を。
振り返ると、若いスーツの男性が落し物をしたよう。
男性は屈み込んでいるのだけど、腰を曲げられないのか、伸ばした手が地面に届いていない。
困っている方を見過ごすわけにはいかず、荷物持ちを申し出た……まではよかったのですが。
「最近まで入院してたんだけど、同僚が復帰祝いにこんな重いものばかりくれて。その辺は適当なんだから……あ、ここです」
男性にならって足を止めると、目の前にちいさいけれども立派な造りのお家が。
「一戸建てですか。お若いのにすごいですね!」
「子供がいるから、ちょっと頑張ってみたんです。あ、もういいですよ」
ケガを刺激しないように、そっと荷物を渡す。ありがとう、と呟いた男性は、それから申し訳なさそうな表情をした。
「ずいぶんと遅くなってしまったけど、大丈夫?」
確かに暗くなって風も冷たいし、なんかもう肝試しにこの上なく最適な感じ。
でも本音を言ったところで心配をさせるだけなので、「お気になさらず」と笑って失礼させてもらうことにした。
「急いで買い物済ませなきゃ……」
行きよりもさらに早足で歩き出す。
来た道を戻ればいいだけなんだけど、なにせこの辺りは来たことがない。
静まり返った空気と見慣れない景色が作用して、ビクビクしながら歩を進める。
そんなとき、冷たいものが首筋を撫でた。
「ひゃあっ!?」
持っていた竹刀を取り落としそうになって、必死でふんばる。
でも一瞬のことで、冷たい感触はすーっと引いていく。
「なんだ、風か……」
地味に疲れる……早く用事を済ませて帰ろう。
勇気を振り絞って足を踏み出すと、パキ、と小枝を踏む音が。
足下を見てみる…………私、じゃ、ない?




