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第二話  選別

   第二話  選別

    

 最初の部屋から真っ直ぐ伸びた通路を歩くと、次の部屋があった。いや、正確には最初の部屋と言うべきか。

 春香は押し出されるように部屋に入った。見えてきたのはテニスコート三枚分の大きな部屋。しかし、それは金網で区切られ、進む道は決められている。

 細くなった道に一人ずつ入っていく。ここからは一人ずつ進まなければならないようだ。

 進む道の床にはところどころ鉄の板ある。その床に一人ずつ乗って行く。

「何あの気持ち悪いの。何なの。」

 金網の外を動きまわるのは沢山の目玉。宙に浮いた目玉は絶えず動き回りながら通路を歩く人々を見ている。道は途中で二手に分かれ、まるで商品のように振り分けられていった。

 春香は押し出されるように金網で出来た部屋に入った。詰め込まれていく人々。金網の周りを目玉が飛んでいる。

 春香が二手に分かれた反対側を見れば同様に金網で囲まれた部分に分けられた人々が詰め込まれている。何が何だかさっぱりだ。

 金網で出来た部屋はそれぞれ出口へ道が続いている。何故ここで集める必要があるのだろうか。

 その時、どこからかノイズの混じった声が聞こえてきた。

「さて、ここが第一の部屋だ。君たちはこの部屋で、二手に分かれて集められた。これはある基準で分けられている。」

 春香は同じ金網に集められた人を見回した。男女どちらもいるし、特に変わったところは無い。対して反対側の金網の人々を見てみた。金網が邪魔で良く見えないが、こちらと変わりないように見える。どのように分けられたのか謎だ。

「基準については控えよう。君たちに言っても意味が無い。さあ、次の部屋へどうぞ。」

 男の声がすると、出口に続く道が開いた。少なくとも春香が居る側は開いたようだ。みんな恐る恐る通路を通って部屋を出て行く。 春香は人に押し出されるのは懲りたので、一番最後に出るように待った。一緒に行動することになった女性グループも他の人に譲っている。反対側の金網を見れば何か言っているようだがここからは聞こえない。誰も出口には行っていないようだ。

 春香たちが金網を抜けて出口を出ようとする。ふと、反対側の金網に居る人たちを見た。彼女背中に電撃が走り、その場で動けなくなった。彼らの目を見てしまったからだ。何も言わずじっと見る彼らの目には、彼女をその場に留めるだけの力があった。

「ほら、早く行くよ。」

 春香は同じグループの女性に引っ張られて部屋を出た。部屋を出るとすぐに扉が閉まった。唖然とする人々の中で、彼女は扉を開けようと試みる。だけど、開かない。男の力を借りても開かなかった。

 部屋の中から何か聞こえる。叫び声だ。泣き声も混じっている。金網の部屋に詰め込まれ、出口への道は閉ざされた。どういうことだ。彼らは次の部屋に行けないのか。

 男性陣がなんとか扉を開けて再び中に入ったとき、そこにあったはずのものは消えていた。金網も、集められた人々も何もかも。ただ、テニスコート三枚分の大きな部屋の中心に幾つもの腕輪が積み上げられていた。

「ど、どういうこと。どこに行っちゃったの。」

 春香は積み上げられた腕輪の前で崩れた。これは彼女が付けているものと同じ。つまり、この腕輪は誰かが付けていたものだろう。

「何が起きたって言うの。なんなのよこれ。」

 こんな簡単に人が消えるのか。彼らはどこに消えたんだ。

 春香が震える手で遺された腕輪に触れようとする。彼女は腕輪の一つに触れる。積み上げられた腕輪は一瞬光ると、跡形もなく消えてしまった。

 驚く春香の肩を誰かが叩く。振り返れば一人の女性。確か、女性グループに誘ってくれた人だろうか。

「先に進みましょう。こんな所で立ち止まっちゃダメよ。」

 女性は手を差し出す。春香は手を掴んで立ち上がった。早々に何も無くなった部屋から出る。

「ほら、さっさと行くぞ。」

 男性陣は早く先に進みたいようだ。その口調から、今眼の前で起きた事が嘘みたいに思える。他人のことなんて興味ないということだろうか。

 一緒に行動している人数は半数近く減った。同じ女性グループに居た人も覚えるまもなく何人も消えただろう。

 全員が無言で通路を歩く。ただただ足音だけが通路を満たした。

 ふと、前を歩く人達のペースが落ちていることに気がついた。前を歩く人々の顔を見れば、光のない暗い顔をしている。まるで、前方に存在するであろう部屋が春香たちを無理矢理引っ張っているようだ。

 立ち止まったらここから出られない。前に進むしかないのだ。

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