静けさ:3
月曜日。学校の登校日。
いつものようにキーホルダーをつけようとして……少し考えて、私はキーホルダーを鞄の底に仕舞うことにした。
昨日もキーホルダーを持っていくか否か悩んだんだけど、逆に知らないところで大変なことになっていたら嫌だし、なんだったら見えるところで見張った方がいいよね、という結論になったので。
キーホルダーと教材が入った鞄を背負って、私は部屋を出た。念の為お兄ちゃんの部屋を覗いていないことを確認する。
階段を降りると、靴を履いているスーツ姿のお父さんと会った。
お父さんは私を見つけると、「行こうか」と言って先に立つ。
今日から暫く、私はお父さんに学校まで送迎される。どうやら変な事件が近くで起きているらしく、その事件対策で私は車で送り迎えされるらしい。
別にいいのにと言ったのだが、これだけはどれだけ言ってもお母さん達は譲ってくれなかったので、諦めて私はその厚意に甘えることにしたのだ。……本当は自分の足で行きたいけど。
因みにお兄ちゃんはいいのかと聞いたけど、お兄ちゃんは朝が早くて私と時間が合わないし、そもそもお兄ちゃんは友達と登下校しているから、取り合えず大丈夫かなっていう判断らしい。……私も友達と一緒に学校行ってたら、送り迎えとかされなかったのかな。そんなことを考えてしまった。
通勤ラッシュの混雑した道を潜り抜けて、私は遅刻することなく学校に着くことが出来た。
道路の脇に停めてくれたのでさっさと降りる。忘れ物がないか、というお父さんの言葉に、無い!と私は返した。
その返事をして、漸くお父さんは仕事場へ向かう為に車を走らせた。
私を学校まで送り届けた後、お父さんはこのまま仕事に向かう。そして仕事が終わった後に学校まで行って私を迎えに行く、という流れになる。
それまで私は学校の中で待っていなくちゃいけない。今日から何で時間潰そう、と私は校門と通りながら考えた。
教室に入ると、友達が話しかけてくる。話題は特に記憶してもしなくてもどっちでもいいどうでもいい話。だから当たり障りのない返答して、話を切り上げた。
友達が別の人に話しかけたのを見た私は、そのまま自分の席に行く。机の上に鞄を置いて、鞄の中から荷物を取ろうとして……隣からやけに視線を感じるのに気づいた。
隣を見ると、いつも本を開いている隣の席の女の子が、私を凝視している。
というより……驚いている?
なんで驚かれているのかわからなかった私は、彼女に声をかけた。
「……あの、何か?」
「!……い、いいえ、なんでもないです、ごめんなさい……」
肩をびくつかせた隣の席の子は、慌てたようにそう言って、何事もなかったかのように本と向き直る。
……ええー……気になるんだけど。でもこれ以上話してくれなさそう。
「……取り合えず、おはよう、ええと……」
「……はい、おはようございます、九十九さん」
取り合えず挨拶だけはしようと声をかけたけど、直ぐに返されてそこからまた本と向き直ってしまった。
これ以上話すと鬱陶しがられそうだと感じた私は、彼女の言動に気になることはあれど、それ以上話しかけることはしなかった。




