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メイズ・マーテル  作者: 沢渡 夜深
第一章
17/21

迷宮について:7


 「……?」


 それと同時だった気がする。

 ちりんと、男の人が前を横切った直後に、私の目の前に何かが落ちてきたのは。

 音を頼りに視線を向ければ、鈴が付いた鍵がポツンと落ちていた。


 「……落とし物?」


 特に考えることもなくその鍵を拾い上げる。

 今落ちてきたってことは……私は、さっき私の前を横切った男の人を探した。

 その男の人はすぐに見つかった。短髪にスーツ姿の、大きなリュックを背負った人は、私に背を向けて立ち止まって時計を確認している。

 これ幸いと、私はその男の人に駆け寄って声をかけた。


 「あの、すみません」


 「!はい……?」


 声をかけると、男の人は肩をピクリと反応させた後、恐る恐る私の方に振り返った。

 私は手に持っていた鈴が付いた鍵をその人に見せる。


 「これ、落としましたか?」


 「………………………………………………ああ!ありがとう、助かったよ」


 男の人は笑みを浮かべた後、私の手から鍵を取る。

 よかった、この人の鍵で間違ってなかったみたい。間違ってたら恥ずかしいし。

 男の人はいやぁと困った様子で頬を掻く。


 「こういうのが起こった時に気づくために鈴を付けてたんだけど……歳をとったからか、耳が遠くなってしまったなぁ」


 「ああ……でも仕方ないと思いますよ。今日は人も多いですし。私も目の前に落ちてこなきゃ、鈴の音なんて聞こえなかったと思います」


 これが普通なのかわからないけど、図書館に出入りする人は多い。これだけ多かったから、鈴の音なんて掻き消されてしまうだろう。さっきも言った通り、目の前に落ちてこなきゃ私も気づかなかったかもしれない。

 運がよかったなぁ〜。


 「……そうか、そうか。ここにはよく来るのかい?」


 「いや、今日が初めてです!ちょっと調べたいことがあって!」


 「おお、勉強熱心なのは良いことだね。何を調べに来たんだい?」


 ……?

 なんか凄い話しかけてくるな、と違和感はあったものの、まぁ別にいいかと割り切って私は話し続けた。


 「ダンジョンについてです!」

 

 「ほう!ダンジョンかい!その歳でダンジョンに興味を持つとは将来有望だな!将来はプレイヤーを目指すのかい?」


 「え?うーん……特にプレイヤーになりたいとかは、ないですね……」


 いくら死ぬことがないとはいえ、プレイヤーになったら危険なモンスターと鉢合わせなきゃいけないんでしょ?そんなの嫌だ。

 それにダンジョンをついて知りたいのは昨日のことがあったからで、プレイヤーになりたいから調べに来たわけじゃないし。


 「そうかそうか。まぁ人によってそれぞれだからね。それはともかく、ダンジョンについて調べるのは良いことだよ」


 「そうなんですか?」


 「ああ。何故ならダンジョンは、無限の可能性を秘めているからね」


 ……無限の可能性?どういうことなんだろう……。

 どう返していいのかわからず黙っていると、男の人はそのまま話し始めた。


 「突如現れた建造物の中には、ゲームに登場するかのようなモンスターや鉱石が存在している。凄くロマンじゃないかい?もしかしたらこの先の未来で、プレイヤーは「冒険者」という名前に変わり、「冒険者」という職業が当たり前になるかもしれないね。今は解明されていない鉱石も時間をかけて解析され、いつかは資金として鑑定に出来たり、武器を作るための素材にもなりうるかもしれないし、さらにダンジョンには階層があるじゃないか。それぞれのダンジョン毎に景色は全く違うし、もしかしたら探索していく中で、我々が知らない謎が眠っているなんていうことも充分有り得るんだよ。凄くワクワクしないかい?」


 「……そ、そうですね?」


 なんか、凄いノリノリに話し始めた……。

 途中から聞き流したせいでこの人が何を言っているのかわからなくなったけど……。


 「……ああ、すまない。つい喋り過ぎてしまったね」


 返事に困っていたら、男の人が申し訳なさそうにそう言った。さすがに態度に出過ぎちゃったと思って、気まづくなる。


 「……あの、もう行っていいですか?」


 このまま話すのもなんか嫌だから素直にそう聞く。

 すると、男の人は「ああ、ごめんね」とまた謝ってきた。


 「引き留めてしまってすまないね。親御さんはもういるのかな?」


 「え?うん……多分?」


 多分、もうそろそろ来ると思う。合鍵を作って食品売り場に行ってから来るから、大体このくらいで迎えに来るって言ってたような気がする。多分。

 その時間が今くらいの時間だったような気がするから、もう駐車場にいるのではないだろうか。


 「――チカコ!」


 と思ったところで、私の名前を呼ぶ声がした。

 声のした方に顔を向ければ、お母さんが走って私の方に来る。

 それは男の人にも見えたようで、男の人はお母さんを目にすると、「それじゃあ」と言って足早に去っていった。


 ……変な人だったなぁ。


 「チカコ!大丈夫?何もされてない?さっきの人は誰!?」


 駆け寄ってきたお母さんに矢継ぎ早にそう聞かれ、私はどう答えればいいのか分からず、とりあえず「落し物を拾って渡しただけだよ」と伝えた。


26/01/05追記

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

大変申し訳ありませんが、諸事情により執筆が進まない事態に陥っておりますので、毎日投稿が厳しくなっております。

何卒ご理解頂きますよう、よろしくお願い致します。

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