迷宮について:5
お待たせしました!
動画は、生い茂る森の中を歩いているところから始まる。
撮影者の前には武装した人が映っており、手には銃を持ちながら辺りを警戒している様子が映されていた。
『異常無し。このまま進んでも問題なさそうだ』
『油断するなよ』
映像が、ぐるりと辺りを見渡すように動く。
『どこを見渡しても森、森、森……霧もあるせいか、前方も見辛いな』
『空も見てみろよ。俺達が入る前は雲一つない晴天だったってのに、ここはどんよりとした曇り空で薄暗くて敵わん』
『ダンジョンの中に空があること自体異常だってのになぁ……』
その人達の言う通り、映像に映る光景はずっと薄暗く、霧が深い。目を凝らしても全く前が見えず、映像に映っている人も進み辛そうにしている。
暫く歩く映像が続く。時折採取したり、写真を撮ったりを挟みながら探索を進めていると。
『!待て、音がする』
『モンスターか?』
『それしかないだろ……銃構えとけ。俺が様子見てくる』
ガサリ、と音が聞こえて、足を止める。映像越しでも緊張が張り詰められているのが感じられた。
足音を極力立てずに、前に人が行く。草むらに姿勢を屈め、銃口を前に向け、息を潜める。
その時間が10秒を過ぎたところで――前を見張っていた人が呟いた。
『いた。多分……スライム、か?』
『カメラいいか?』
『ああ、いいぞ。音は立てるな』
映像が段々前へ行き、草むらに屈んでいる人の隣に行くと、映像が大きくブレた後に何かが映し出される。
映像の中心には、ぷよぷよとしているゼリー状の青色の何かが、ずりずりと這いずりながら横切っていた。
一目見て、それがゲームとかによく出てくる「スライム」と酷似していると、私は気づいた。
『確かに、スライム……だな』
『こちらA班。モンスターを発見。恐らくスライムだ。これから観察に入る……ああ、わかった、気を付ける』
『周辺の警戒は継続しろよ。スライム以外のモンスターがいてもおかしくない』
後ろの方で静かに会話が交わされる中、映像は依然としてずりずりと移動しているスライムを映している。
ずりずりと土を移動しているせいか、スライムの身体は砂利や砂に塗れている。しかしその砂利や砂はすぐにスライムの身体の中に沈むと、ぷくぷくと泡を出しながら消えていった。
『あのスライム、ずっと泡出してないか?』
『多分、身体に付いた砂とかを取り込んで消化しているんじゃないか』
『なるほど……』
ずっと前へ前へと進んでいたスライムだったが、急に方向を変えて野草が生えている所に向かう。
そして小さな花が咲いている雑草の前に行くと、その雑草の上に身体を乗せた。
すると、しゅわしゅわと音を立てながら、スライムの身体から煙が出てくる。
暫くしてスライムが動いてその場を去った時には、そこにあった雑草はすっかりと無くなっていた。
『……溶かした?のか?』
『恐らく、な。あれがスライムの食事なんだろう……』
私には何が起こっているのかわからなかったけど、映像に残っている音声から、スライムが今何をしたのかを知ることが出来た。
あれが、スライムの食事……あんな風に食べたりするんだ。
『追跡するか』
『スライムはこちらに気づいていないが……』
『いや、深追いはやめよう。まずはこの映像を持ち帰ることが先だ』
『わかった』
『こちらA班。スライムの情報を入手することに成功。これから帰還する』
映像はそのまま、スライムがどこか遠くへ行くところを最後に終わった。




