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魔宵子たちの北極星  作者: 水越みづき
終章 Light the Fire Up in the Night
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終章 2:この旅路こそ私たちが紡いできたモノ

 2


 田舎から出てきてやっと二年経たない程度の私に、世界の難しいことはわからない。

 ただ、毎日が慌しく過ぎていく。だからこそ私は、日記をつけてみることにした。マリーはうっかりしている所が多いから、私が私も覚えていられないことを残すことにしたのだ。

 幸い、マリーの実家という日記を残す場所も――私には今まで無かった、帰ってもいい場所も得られたことだし。


 クラリッサの悪企みは成功したようで、帝国は他国と貿易をすることにしたようだ。

 帝国は取引に使える食糧や物資も豊富だけれど、男爵や『騎士』の魔法技術を提供する――ただし軍事関係には一切関わらないという条件付きで――こともあり、少しずつ魔人というものの実態を広めるのが目的なのだそうだ。


 魔力動力船は貿易に適しているのに対し、帝国本土までの船旅は厳しすぎるという事情からツェズリ島が中継点に選ばれ、徐々に各国の無人島なども貿易地点として開拓する予定なのだそうである。

 理想としては、数十年から百年くらい時間をかけて、なし崩し的に魔人そのものと魔法技術の恩恵を世界各地にばら撒く予定だという。

 そうして最終的に帝国本土は今より領土を縮小させ、極寒の極北島という本来の姿に取り戻させるのが到達地点(ゴール)なのだとか。

 絶対そう上手くいかないという前提で、クラリッサやヘルマートは苦笑いしていたが。私から言わせれば、この二人の思いつきと実行力の規模が大きすぎるだけだ。


 ともあれマリーはツェズリ島代表ということや、クラリッサと【共犯者】になってしまったこと、さらにはポール都再建のために必要な人材をユニカ家名義で送ることなどの仕事をし続けていた。

 いい加減我慢しきれないという様子になったので、危険を覚えた私は面倒くさいことはもう全部大人に押しつけて、約束通りメルセリーナと一緒に旅に出ることにした。


 最初に行くことにしたのは、私の故郷である共和国だった。

 修行という名目でお世話になっていたレストランが、連邦王国を震撼させ平人(ヒト)食いの魔人を雇っていたわけだから、マリーは気にしていたらしい。……一応、私もあそこで働くマリーの姿は活き活きとしていたので、大事が無いに越したことはない、くらいには考えてはいた。

 結論から言えば、マリーの帰還は大歓迎された。


「マリーちゃん、腕はいいし厨房ぱっと見ても角のせいで誰かわかるでしょ? 怖いもの見たさがいつの間にやら名物扱いになっていたんだなぁ」


 料理長が複雑そうな表情でそう言って、他の調理人はめいめいに「マリーちゃんがあんなことするわけないってわかってた」「マリーちゃん髪の毛もふもふさせて」「平人(ヒト)食うとか冗談にしたってやりすぎだよな。マリーちゃんになら食べられてもいいけど」などまぁ好き勝手に言われていた。

 みんな怯えて一緒に仕事をしていたようで、マリーがいざいなくなってしまえば色々と思うところがあったらしい。

 メルセリーナは、驚くような、睨みつけるような、なんとも言えない表情で姉の歓待ぶりを見ていたけれど。


「やっぱり、姉様はわたくしの、ユニカ家から少しずつ、でも確実に離れて、居場所をたくさん作っていくんですね」

「マリーはメルセリーナが待っているから、安心して好き勝手できるみたいだった。……ううん、メルセリーナに悪いことしているって、気に病んでいた」

「ねーメルセリーナにソーニャ!? 二人でいい雰囲気になってないで、ぼくのことちょっと助けてくんないかな!?」


 店の仲間たちに囲まれて質問攻めや髪の毛を撫でられているマリーの悲鳴に、メルセリーナは口元に手を当てて微笑んでいた。

 私はその間に入って止めることにしたけれど、そうしてマリーから離れた一部の調理師たちや料理長が今度はメルセリーナに話しかけていた。命知らずな。


「マリーちゃんの妹さん? 魔人って姉妹でもずいぶん違うんだねぇ」

「これも魔法の一種ですので」

「魔法って便利だなぁ。でもさすがにあの趣味の悪い映像は贋物でしょ?」

「うふふ。ユニカ家は家族と美食を愛していますので」

「それでその体型ってズルいなぁ。それも魔法?」

「成長期に魔法で体型をいじると後で問題起こるから、ぼくたち姉妹は自前でこれだよ! 失礼だなぁもう!」


 頬を膨らませるマリーの言葉は、私も初耳だった。魔法で体型をいじるのもそれはそれでズルい気がするけれど。

 そう思う私の頬に遠慮なくメルセリーナは手を伸ばし、相変わらず微笑みをたたえている。


「でもソーニャはもう少し食べましょうね? せっかくの姉様手作りの料理を毎日食べられる栄誉が貴女にはあるのですから……」

「……善処はする」

 共和国到着初日こそ、マリーと一緒に久しぶりにレストランで働いたけれど「メルセリーナにも観光案内してあげて」という主人の一言で、いくらでも替わりがきくウェイトレスの私は首都レフィーエをメルセリーナと共に歩いていた。

 観光案内と言っても、私は人間が集まる所は相変わらず苦手だ。ヘルマートみたいに歴史に詳しくもないので、地図と案内表を見ながら投げやりに説明するしかない。


 それでも市場はメルセリーナにとっても物珍しいものだったらしく、額の一本角と青白い髪を見せびらかすように我が物顔で色々な野菜や果物を買い込み、本屋にも寄っていた。

 マリーは主に新聞や雑誌ばかり読んでいたけれど、メルセリーナの目的はどちらかというと小説のようで、なぜだか顔を紅潮させて物色していた。


 私たちはそんな荷物を抱えて二人揃って目立つのもお構い無しに、公園のベンチで買ったばかりの果物――大振りな柑橘系で少し苦味があるやつだけど名前を忘れた――を分け合いながら、少し休憩とした。

 時刻的には昼下がりで、季節はもう完全に冬。寒いはずなのだけれど、私は着ている衣服を暖める程度の電熱魔法を恒常的にかけており、メルセリーナもなんらかの魔法で防寒対策はしているらしく、苦にもしていない様子である。


「ソーニャは、姉様とよくこんな風に?」

「私はいつもマリーの後ろについていただけ。だから、案内が下手で、ごめんなさい」

「懸命に頑張るソーニャの姿は愛らしいものです。よくやっていますよ」


 メルセリーナは私の頭を、マリーとはまた違う繊細な手つきで撫でてきた。こうして見ると、振る舞いや顔つきは姉妹だけあってよく似ている。

 空を仰ぎ、メルセリーナは降りしきる雪を見つめている。


「共和国では、雪とはこのように降るものなのですね」

「……雪は好きじゃない」


 本当に死にそうになった経験ばかり思い出すからだ。あの頃はいつ死んでもいいと思っていたけれど――いや、今も本当はあまり変わりが無いのかもしれない。


「主人のマリーには、言えないことなんだけど」

「なんですか? ソーニャ」

「私は、美味しくて温かい料理を食べていると、悪いことしている気分になる。その気持ちですぐに胸だかお腹だかがいっぱいになる」


 理屈はよくわからないけれど、お腹が満たされると同じだけ責められているような罪悪感がやって来るのだ。


「……姉様はきっと、わかっていらっしゃいますよ。わたくしも、移民してきた人間にそんな方々が混じっていることもありますから、帝国の環境に慣れるよう弁舌を振るったものです」

「そう、なんだ」


 別に珍しい話じゃないのかもしれない。

 メルセリーナはなんらかの魔法を使って綺麗に剥いた柑橘類の一房を口に運び、私の口にも差し出してきた。

 マリーにはそのまま赤ん坊みたいに食べさせてもらうけれど、メルセリーナは主人の妹なので一線を引き、私は自分の手で受け取ってからいただくことにする。

 酸っぱさの中にほのかな甘さがあって、後味から苦味が来る。調理向きの品だろう。マリーならこの苦味も上手く際立てたお菓子を作ってくれるはずだ。


「姉様には言えないことを、わたくしに言えるというのなら、まだお聞きしましょうか? ……ソーニャは、姉様に食べてもらえなくなったことを、残念に思っているのでしょう?」

「……そう、かもしれない」


 マリーに家族(ペット)として迎え入れてもらえた時に交わした契約は、今でも素敵なものだと思う。

 でもそれは、食べられる方より食べる方が辛いことを私は知った。愛しい人間を失うのは哀しいことで、その殺害行為は愛あってのものなのだと全く理解されない辛さは、食べられる側の私には想像を絶する。

 だから、私は自分の我儘をマリーに押しつけない道を選んだ。


「妹のメルセリーナから見て、どう思う? もし、また私が、強く、強く強く、約束を守ることを願ったら」

「姉様は貴族としての義務と誇りに純朴な方です。そして、魔法の実力も非常に高い。でもそれは、心の弱さから生じたものなのです。だからわたくしは姉様を尊敬しています。わたくしには無い、姉様だからこそ持つ、色々なものを掴み取る力と器を。

 でも、ソーニャ、慧眼の魔女。貴女の懸念通りです。姉様は、貴族として、家族(ペット)の貴女に情けない様を見せないように生きているだけで、自分自身の意志で何かを選んで決断するというのが苦手な方です。

 姉様はわたくしたち家族やヘルマート様のことを気にかけて、だからこそ帝国を飛び出しました。そして貴女と出逢い、此度の騒ぎはソーニャを守るため帝国に帰り、ソーニャが傷つけられたから姉様は怒り、ソーニャが泣くから怒りの矛先を収めた。

 ……姉様の手前、わたくしも言えぬことです。姉様は、あろうことか家族(ペット)の貴女を主人にしている。ソーニャのお願いは、姉様にとって命令に等しいものなのです」


 やっぱりそうか。

 メルセリーナの言葉は、ヘルマートが既に結婚していると知って、大人になるという実感に焦って、様子がおかしくなったマリーを見てから薄々感づいていたことだった。

 マリーは確かに私をいつも引っ張って前に突き進んでくれる。けれどそれは私や家族を笑顔にするためであって、そこにマリーの幸せがあって、だから、私の意志こそがいつもマリーを動かしていた。


「呪われた魔女の、こんな小さくてそばかす魔女の私が、マリーを狂わせた」

「そうですね。でも、姉様を狂わせたのなら、ソーニャ。貴女はそれだけ魅力的な魔女なのですよ。わたくしも貴女を妬ましく思いますが、それ以上に愛らしく思います」

「……ユニカ家って変人が多い?」

「よく言われます。姉様は独占欲が強くて、あえて言葉にしないのでわたくしが姉様の気持ちを代弁してあげましょうか? ソーニャは小さくていじらしくて可愛い。それなのにソーニャは気遣ってくれるから優しい。ソーニャはよく物事の本質を捉えて、賢い。ソーニャは本当は、誰も傷つけたくない魔女」

「……家族が喋っている時は割り込むなって家訓が無かったら、今のは止めたかった」


 蔑まれて恐れられるのは慣れているけれど、褒め殺しには慣れていない。私をからかうメルセリーナの愛で方に比べて、マリーの素直で真っ直ぐな愛情表現がどれだけ私に合っているかよくわかった。


「ところでソーニャ。外国に出られたのなら、わたくし、是非見たいものがありましたの」

「何?」


 私という人間をメルセリーナはある程度味わい終えたみたいで、うってかわって意気込んだ様子でたずねてきた。何か嫌な予感がする。


「歌劇ですわ!」

「……ええと、確かに劇場はあったはずだけど、私もマリーも興味が無いから、ごめんなさい。案内しろと言われても、よくわからなくて」

「それでも魔人のわたくし一人より、この街に少しの間とはいえ暮らしていたソーニャがいる方が安心致しますわ。二人で今から一緒に、歌劇の見方というものを道行きの人々にご教授していただきましょう」


 主人の妹の言うことなのだから、できるだけ従うけれどしかしなぜ歌劇なのだろう。

 そう了承と質問を同時に返してみると、メルセリーナは瑠璃色の瞳を輝かせて言った。


「わたくし! 悲恋の物語が大好きですの! 道行かぬ恋路! 誤解とすれ違いの愛情! 決して折り曲げぬ強い自我で以って命よりも誇りを選ぶ! 想い人の復讐のため恋する乙女が魔性の女と化して屈強な戦士たちを翻弄し国をも破滅させる! 恋とは! 愛とは! 魔法よりもきっと、人間を動かす力なのです!!」

「悲しくなくちゃ駄目なの?」

「わたくし、小説でしか歌劇の物語は知りませんの。実際に歌劇を見たのならば、主義も変わるかもしれませんわ」


 答えになっていない気がするけれど、とにかく見たいというのなら仕方ない。努力しよう。

 調べてみたところ、本来劇場とは観覧席を予約制で買い取って観るものらしい。

 ただ、マリーが常連客――マリーの魔法で『施術』する資産家含む――の伝手を使い、今夜行われる席を譲ってもらうことになった。

 連邦王国を掻き回した魔人マリー・リー・ユニカは、共和国では元々名も顔も知られていたこともあって、今や大変な人気者らしく、勝手に肖像画やいつやら撮られていた写真やらが焼き回しされて市場に出回っているとかなんとか。皆殺しにしてやろうか。

 ともあれ、そんな魔人姉妹に恩を売っておいて損はない、という理屈らしい。


「わぁ、ソーニャ! ずいぶん背伸びした格好だね。メルセリーナが見繕ったのかい? よく似合っている、とは言い難いけれど、無理しているソーニャの姿も愛らしいものだ。うんうん」


 歌劇を観覧し終えた私たちは、レストランの仕事を終えて宿泊しているホテルの部屋で待ってくれていたマリーに、帰ってくるなりそう言われた。

 メルセリーナは帝国でも着ていたような白いドレスだけれど、私は当のメルセリーナに黒いドレスを着せられて劇場に向かうハメになった。マリーの言うように、背丈の小さい私に似合うようなモノは少なく、結果的に少し大きめのドレスをメルセリーナが『サイズは魔法で調整できますので』の一言で買い与えられたという次第である。

 落ち着かないので早く寝巻き(ナイトドレス)に着替えたいのだけれど、マリーが嬉しそうに見て触って楽しんでいるものだから、言い出しにくい。


「メルセリーナ、ソーニャに素敵なプレゼントをありがとう。ところで劇はどーだった?」

「…………ええと、言葉が……見つかりません」


 帝国で、歌劇のような派手で大規模な娯楽は無いらしい。異文化に触れたメルセリーナは今や観覧席の熱狂冷めやらぬ状態のようで、心ここに在らずといった呆とした表情をしている。

 私は三角帽子をコート掛けに掛けて、今のメルセリーナの状態をマリーに頬ずりされながらそんな風に説明した。


「メルセリーナにはちょっと刺激が強すぎたってことかな? かく言うぼくも歌劇なんて見たことないから、今度はちゃんとチケットを買って三人で見に行こうか?」

「え? あ、はい! 姉様、是非そうしましょう」


 (マリー)の一言でメルセリーナは現実に戻ってきたようだ。

 歌劇は私にとって、退屈だから寝ていたいのだけれど、うるさくって寝られるわけでもない過酷な時間だった。けれど、メルセリーナにはそうではないらしい。

 所詮私は元が田舎村の農民娘である。たまに村に訪れに来る、人形劇や小さなサーカスなら楽しめたけれど、歌劇は何がなんだか全然わからなかった。


「メルセリーナは好きだよねぇ、ホント。ぼくは恋愛事ってよくわかんなくってさ。素材の組み合わせとかどんな風に調理すれば十全以上の美味しさを出しきれるのか、とかの方が考えたり実験している方が面白い」

「姉様の夢は調理師なのですから、それで良いのです。ただ、わたくしはできれば素敵な殿方と……」

「浮気しまくったり、服毒自殺しあったり、刺したり刺されたりするの?」

「いえさすがにそれは物語の話です。それに、わたくしと姉様は毒も刺し傷もすぐ自己治癒できますのでやはり無理な夢物語です」


 夢物語の定義が違うような気がする。

 いつの間にやらマリーは私のドレスを脱がしながら、(メルセリーナ)にたずねていた。


「そういえば、今まですっかり忘れちゃっていたけど暇が出来たらいつか聞こうと思ってたんだ。ぼく、お兄ちゃんとドロテアが結婚した理由とか経緯とか全然意味わかんないんだけど、メルセリーナにはわかる?」

「ヘルマート様の奥様とは面と向かってお話した機会は短かったですが、ヘルマート様からは微に入り細を穿ち聞き出しましたので、わたくしは理解できます」

「お兄ちゃんも大変だったんだなぁ」


 他人事そのものな口調で、マリーは寄生干渉魔法によって私の身体の不純物を浄化させてから、寝巻き(ナイトドレス)を着させてくれた。

 メルセリーナは椅子に座り、遠くを見つめるような目をした。


「ヘルマート様は『結婚は手段であって目的ではない』と固持していましたが、あの方が己に素直になれないのは姉様に言うまでもないことでしょう?」

「うん」

「ヘルマート様は自分の意志を尊重してくれるけれど強引な奥様を大変頼っておられます。あの方は慎重なので、多少強引な伴侶の方が居心地が良いのでしょう。一方で奥様は、ヘルマート様の大変危険な一面を見抜いているのでしょう。聞く限りにおいては危うい夫を支える道を選んだ賢しい女性に思えましたが、実際の言動を聞いたうえでは、奥様もヘルマート様にぞっこんですね。うらやましいお二人です」


 うらやましいかどうかはともかくとして、時と状況を選ばず惚気る二人だというのはよく知っている。

 しかもドロテアは絶対意識的にやっているが、ヘルマートは完全に惚気ているという自覚が無い。なぜあんな危険人物二人が出会ってしまったのだろうか。魔力量よりもっと恐ろしいものがこの世にはあるということを、あの夫婦は私に教えてくれた。あまり知りたくもない事実だった。


「共和国巡りが終わったら、クラリッサんちに行くついでにお兄ちゃんたちとも会おうか?」

「その頃には大人に放り投げた仕事も一段落ついているだろうし、ヘルマートも北海同盟に顔を出した後だろうし、私はいいと思う」

「わたくしも賛成ですわ。神聖皇国は太古より歌劇も料理も洗練された国と聞きますし、クラリッサが生まれ育った街は是非目にしてみたいものです」


 マリーの提案は全員賛成という形になった。基本的にマリーの言うことは無茶が無ければ楽しいことなので、反対する理由も無い。……レストランの方々にはもう「マリーはたまに顔を出す名物魔人」という形で納得してもらおう。

 北海同盟でお世話になったゾグ酋長は、ヘルマートに会いたがっていた。アイツはそれを伝えると、面倒くさそうにしていたが、本心は罪悪感から逃げているのだろう。

 ヘルマートは育ての親を見捨てた場所らしいし、私としても友達になりたかったビシニアをこの手で殺めた地だ。あまりいい思い出はないけれど、出会った人々はみんな優しかった。

 私も、ゾグ夫妻が生きている間に、もう一度あの寒い寒い北国には行ってみたい。ただ、それは急がなくてもいい、はずだろう。

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