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徹夜人狼

作者: 恒河沙

「では、これから私を含めたこの七人で、徹夜人狼を始めます。私はゲームマスターとして、このゲームには参加しませんので、あなた達六人で、村人二人、騎士一人、占い師一人、狂人一人、人狼一人をそれぞれ演じてもらいます。それでは、それぞれ先ほど手渡した役割を書いたカードを見てください。」


 八神はやてがそのように、ゲームの説明をした。僕は八神の命令通り、カードを見た。カードには、人狼と書かれていた。


「皆さん、カードを確認できたでしょうか?それでは徹夜人狼を始めていきます。


 最初の夜がやってきました。皆さん、目をちゃんとあけておいてください。


 ……それでは、人狼の人は、手を挙げてください。」


 僕はゆっくりと手を挙げた。皆、僕のことを見ていた。


「それでは、人狼の淡島君。普通の人狼では、最初の夜に人狼は襲わないのが、ルールだけど、この徹夜人狼は、最初の夜でも他の人を襲うことができます。


 では、誰を襲いますか?」


 人狼である自分以外のみんなもその説明を聞いていた。僕は皆の視線を一身に集めながら、鈴音を指さした。


「……鈴音を襲う。」

 僕は皆に見られていることを照れながらも、そう言った。鈴音は口を大きく開け、驚いていた。


「分かりました。それでは、引き続き人狼の淡島君は、目を開けていてください。


 それでは次に、騎士の人は、手を挙げてください。」

 そう言うと、鈴音が手を挙げた。


「鈴音さん。残念ですが、先ほど見た通り、あなたは殺されました。騎士は自分を守れません。ご愁傷さまです。死人はこの部屋から出て行ってください。


 それでは、占い師の人は手を挙げてください。」

 先輩はしょんぼりと肩を落としながら、ゆっくりと立ち上がり、この部屋を出ていった。部屋を出て行く時に、僕はにらまれた。そして、他のメンバーもその一部始終を見ていた。


「では、占い師の阿保あぼ君。誰を占いますか。」


「えっ、占い。お前、占いとかできたの?じゃあ、俺、占ってよ。」

 アホだ。


「えー、阿保君が阿保君を占った結果、阿保君は、占い師でした。」

「俺、占い師なの~。俺ってスゲー。薄々そんな力があるんじゃないかと思ってたんだよ。」

 アホだ。


「では、阿保君は、そのまま目を開けたままでいてください。


 全員、そのまま目を開けておいてください。朝がやってきました。昨日殺されたのは、鈴音さんでした。この村には、恐ろしい狼が潜んでいるようです。これから皆さんには、話し合い、本日処刑する人を決めていただきます。制限時間は五分です。それでは話し合いを始めてください。」


 僕は人狼だと怪しまれないように、真っ先に話し始めた。


「えー、まず、全員の役職を確認していこう。僕は市民だった。じゃあ、時計回りに役職を言っていこう。」


「あのー、私、昨日の夜ずっと起きていたんですけど、鈴音ちゃんを襲ったのって、淡島君だよね。」

「なっ、何を言っているんだ。僕は市民だ。」

「俺も昨日の夜ずっと起きていたけど、淡島が鈴音を殺す所、ちゃんと見ていたぜ。」

「そんなの嘘だ。二人で口裏合わせて、僕を貶めようとしているな。分かった。二人は、人狼と狂人だな。きっとそうだ。そうに違いない。なあ、そう思うよな。結実。」

「そうよ。そうよ。私もずっと起きていたけど、何も見なかったよ。二人とも怪しいなあ~。」

 玲奈と毒島が市民で、結実が狂人のようだな。続けて玲奈が喋り出す。


「……えっ、でも、見ていたし……。」

「玲奈さ~ん、なんか自信なさげじゃな~い。図星だったんじゃないの~。


 鈴音の肉は美味かったか。この人間の皮を被った怪物が。


 人間様なめんじゃねえ。僕は嘘がこの世で一番大嫌いなんだ。早く処刑されて、地獄に落ちろ。」


「そうだ。そうだ。玲奈の嘘つき~。何の罪のない市民である私達を騙そうったってそうはいかないわよ。もう決まりね。話し合いを切り上げて、投票に移りましょう。」


 玲奈と毒島は僕と結実の圧力に圧倒されている様子だった。


「では、話がまとまったようなので、投票を開始します。投票は指さしで行われます。人狼だと思う人物を同時に指さしてください。それではどうぞ。」


 僕と結実は玲奈を指さしたが、玲奈と毒島と阿保は俺を指さした。


「どうしてだよ。なんで僕が殺されなくちゃならない。阿保、お前なんで俺が人狼だなんて、そこの二人の嘘を信じまったんだよ。」


「だって、さっき、八神がお前のこと人狼って言ってたじゃん。鈴音も殺してたし。」


「……まあ、いい。きっと後悔するぜ。まだ残ってる人狼に震えて眠りな。」


「それでは、玲奈さん二票、淡島君三票で、淡島君を処刑することになりました。処刑された人狼の淡島君は、この部屋から出て行ってください。」


「あーあ、今度は誰が殺されるかな~。天国でちゃーんと見ておいてやるよ。愚かなお前らの笑い話を土産に、天使様と仲良くなっておくことにするよ。きっと、お前らの生きるこの世に聞こえるくらいの大爆笑を天使様から取るだろうな。


 その笑い声が聞こえる頃、この中の人狼も、疑心暗鬼で自滅していく滑稽なお前らを見て、笑い転げているだろうな。」

 僕は十分な負け惜しみを言った。


「えー、人狼である淡島君が処刑されたので、村人陣営の勝利です。」

 冷徹に結果を告げる八神に僕は問いかけた。


「何が楽しいん?このゲーム。」

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