9
中学からの友達、伊吹に聞いたら、相沢君が入院している病院は判った。
教えてもらえた代わりに、変な探りを入れられた。
「相沢ねえ…。今、北高行ってるんだよね」
「そうそう、同じクラス」
「あんたら、付き合ってんの?」
「いや、付き合ってたら、直接本人に聞くわ。ちょっと用事ができただけで」
いぶかしがる伊吹に、
「私の愛はディスプレイの向こう側にあんのよ。3次元はないわー」
2次元しか愛せない私を知っている友は、「はいはい」と雑な相づちを打った。
「…あいつさあ、小学6年の時に病気して、中学受験できなかったんだよねー」
伊吹は元々情報通な上、相沢君とは幼稚園からの知り合いらしく、未知の情報が出てくる。
「中学2年の時にも体壊して、体調のこと考えて家からバス1本で行ける北高にしたって。ほんとは東高に行きたかったみたいだよ。だけどあそこ、バスと電車乗り継いで、結構歩くじゃん」
東って、うちより偏差値10近く上だったような…。
「いやあ、東高なんてアウトオブ眼中だったから、どこにあるかも知らないし」
賢かったんだ。まあ、ばかには見えないけど。
「…あんた、少しはZ軸にも目を広げなよ」
「アレク様より素敵な人がいたら考えるわ」
まあ、あり得ないけど、と鼻で笑うと、あきれたような溜め息が聞こえてきた。
貯金箱をひっくり返す。
貴重な1万円札。
学校が終わったら、まずゲーセンに行って、全部100円玉に崩した。
持っていたレジ袋に全部突っ込んで、ガチャコーナーへ。
シャイニング・フローレはちびっ子に人気だから、どこもガチャは空っぽ。残っていても中は1個か2個。
心当たりのある店、本屋、こないだ潰れたカレー屋さんの跡地のガチャコーナー、スーパー3件、家電屋さん、ああ、ホームセンターにもあった。
ホームセンターのガチャで、中にあと1個残っていた。これはラッキー、とお金を投入するも、途中でレバーが回らなくなった。
ちょいと振り回してみようか、と思っていたら、お店の人がいぶかしい顔でやってきた。
「詰まっちゃったんですけど!」
先手必勝で文句を言うと、
「これよく詰まるんだよねー」
と言って、300円を返そうとした。
「これが欲しいんです!」
そう言って伸ばした手がたまたまレバーに触れて、さっきまで動かなかったレバーがカタ、っと音を立てた。
そろり、と動かすと、
ゴトゴトン。コト
出た。
最後の1個をゲットした。
あんなにあちこち回ったのに、ゲットできたのはたったの7個。
シリーズコレクションが書かれた紙がうまく巻かれて、中身はよく見えない。
店の端っこで、7個のカプセルを1つづつ開ける。
アレク様、私に力を!