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 帰りに突然の雨に降られて、気分は最悪だった。

 数Iの小テストの結果も良くなかった。

 そういう日だってある、と思うけど、あまりの厄日っぷりになんだかへこむ。

 アレク様に救いの手を求める。

 が…

 撮れてない。

 撮れてない?

 …と、撮れてない!

 あああああああ!

 人生最悪の日だ。

 先週の展開からして、今週こそはアレク様が出る日なのに。

 しかも、先週の予告でアップで映ってたのに!!!

 …自腹でサブスク? DVD発売待ち?

 はあああああああ。

 宿題も手につかない。

 本気で涙が出てきた。

 アレク様がいない人生なんて。

 明日の英単語のテストは、もう終わりだ。

 神のいない世界で、一人撃沈する。


 そんな日に、4回目がやってきた。

 白いもやの中、今日もジョーヌは遅れている。忙しいのかな。

「…揃わないけど、行くわよ。今日は、私の番で、いいわよね?」

 予想通り、ブルーが言った。私に向けている言葉でもある。

 私はこくりと頷く。

 ブルーのボムで晴れたもやの向こうは、溶岩の海と、火山だった。

 今までで一番、戦闘っぽい背景だった。

 天から黒い丸いものが降ってくる。ブルーのボムとルージュの剣、ヴェールの鞭が迎え撃つ。

「ごめん、遅くなりました!」

 ジョーヌが加わる。

 丸いものは、空中で打たれると一時的に数を減らすものの、地面にまでたどり着いたものは二つ、四つと分裂し、数を増していく。

 私もステッキを振り回すけど、何とも威力が乏しい。

 それでも地面につく前であれば、幾分かは効く。

 それにしても暑い。

 ジョーヌが、空から来る黒い丸ではなく、周りにその矢をまき散らす。

 360度、周囲にきれいに広がった矢から、キラキラと黄色い光が散らばると、火山は噴火をやめ、溶岩の暑さが少しだけ収まった。

 ブルーと、ヴェールの合わせ技、小さなボムが鞭で作った竜巻に乗って、黒い丸いものを巻き上げていく。

 ルージュの刀が水平に振られ、地面についた黒い丸を払い打つ。

 私は…私にできるのは、ただずっと、地面に、空に、しょぼくて淡い小さなオレンジ色の泡を広げていくこと。

 ステッキを振り続けて、走り回り続ける。ただ、ひたすら。

 黒い丸いものは、その多くは払われ、消えていったけれど、全部じゃなかった。

 残った黒いものは、ただじっと、潜んでいる。

 今だけ、静まっているに過ぎない。

「今は、これは精一杯ね…」

 ブルーがウノを抱きしめて、泣いていた。

「ごめんね」

「充分だよ。もう少し、君といられるなら」

 みんな、うなだれて、負けてはいないけれど、勝ったとも言えない戦いをかみしめていた。

 キツネもどきは、いなかった。

 

 戦いは重かった。

 だけどまだ11時。

 英単語テストの勉強をする。

 頭に入らない…。

 ちくしょう、英単語。

 くそお、キツネもどき。

 おのれっ、アレク様を取り逃した、ハードディスク容量!

 全てが私の敵だ。


 現実の私は、何も倒せない。

 何も解決できない。


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