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朝一番で宿題を写させてもらって、何とか提出にこぎつける。
夢なら結構寝たはずなのに、全然疲れがとれないどころか、むしろ疲れ倍増。
あんな疲れる夢、…やっぱり魔法少女は体力勝負なのか。
最近、体動かしてないもんなー。
そう言えば、次は3日後と言っていたけど、これって、シリーズ?
悪役の名前もないし、敵の正体もよくわからないし。
しかし。ひらひらフリルたっぷりのスカート、ちょっとセーラーっぽい広い襟のオーバーブラウス、しかも私がオレンジ色って、何よあれ。
私、かわいすぎ!
攻撃がしょぼくても、頑張れば何とかお役に立てそうだし、前に5回ってあのちっさいのが言ってたし。
ただの夢じゃなければ、あと4回は魔法少女になれるってこと。
いや、夢であってもよし。
…とは言え、私は何のために、何と戦っているんだろう。
せっかく魔法少女やるなら、正義の信条を元に、愛と友情と素敵な悪役に囲まれて、ちょっと胸キュンに行きたいところなんだけどなあ…。
昨日の敵は、何というか、『もの』っぽいのよねー。戦闘ものみたいな感じで。
UFO飛来みたいでなんか、…違うのよねー。
あのキツネみたいなちいさいのをひっ捕まえて、いろいろ聞いてみるか。
3日後の夜。
今日も白いもやから始まった。多分また居眠りしてる。
キツネもどきのちいさいのは現れなかった。
みんな仲良くペアしてるのに、どうして私だけ1人?
「では、今日は私の番で」
今日の「番」と言ったのは、赤のルージュだった。
黒猫型ちいさいの、トレが「にゃおん」と、人間が棒読みするように泣いた。
ルージュが剣を一振りすると、白いもやが晴れた。
白くて大きな何かのパーツが、芝生広場いっぱいに転がっていた。
今日は攻撃じゃない。
「さあ、組み立てるわよ!」
ルージュに言われて、パーツを拾っては組み立てる。
白い立体パズルは、とかくでかくてわかりにくい。
「右右!」
「そっちじゃないって」
飛べる小さいものが上から声をかける。
「もう、重すぎー!」
ジョーヌがぼやく。
「ちゃんと持ってよ」
ブルーも疲れて、愚痴が出る。
とかく今日は肉体労働。魔法もなし。みんなの武器も、私のステッキも出番がない。
結構時間をかけて、ようやく推定5メートルほどある白い円柱っぽいものが、きれいな形になった。
みんなゼエゼエ…
…終わり?
「オランジュ、仕上げ頼むわ」
ルージュに言われるけど、…何を?
「組み立てたのが、ちゃんとつながるように」
握った手を振る仕草。フリフリしろ、と。
…もしや、私の魔法?
あの魔法ステッキ、どうやって出すんだろう。
くそお、あの性悪ギツネ、何にも教えないから!
前回は、気がついたらステッキを握っていた。
今回だって、使おうと思ったら出てくるとか…?
何もない手を振る。
出てこい、ステッキ、出てこい、出てこい、出てこい
「シャイニング!」
お、フローレどもの決めポーズをしたら、出てきた!
素晴らしい。
ここでフリフリしたらいいのかな。
できあがった円柱に向かって、ふりかけでもかけるかのようにフリフリフリ。
元々しょぼい泡しか出ないので、とても効いているように見えない。
とりあえず、さっきまでの組み立ての疲れは忘れて、円柱の周りをステッキを振り回しながら5周ほど、ステップを踏み、飛び回って、振り回し続けた。
すると、組み立てたパーツがゆっくりとつながり、やがてつなぎ目は見えなくなった。
「ありがとう、これで大丈夫ね」
ルージュが微笑み、トレが「にゃおー」と雄叫び?をあげた。
ネコ型ちいさいのと人が手を取り合って喜ぶのを、みんなで見ていた。
目覚めるともう明け方の4時だった。
前より時間かかってる。
そりゃそうよねー、あのパズル、大変だったもん。
今日は宿題はないけど、椅子で寝ていたせいであちこち痛かった。
あー。学校休みたい。