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 高校生活1ヶ月半、ゴールデンウィークも終わってちょっと中だるみな日々。

 なんとなく部活にも入り損ね、それでもクラスには友達もできて、そこそこ楽しくやっている。

 成績からすると、少し高望みした学校だったけど、無事入れてよかった。

 家から学校までは自転車で20分ほど。

 新しく買ってもらった電動自転車は、こないだ充電を忘れてえらい目にあった。しかし、電池さえ切れてなければ、快適この上なし。

 電車通学にも憧れたけど、今の季節は自転車も悪くない。


 今日も授業が終わり、さあ帰ろうとしたとき、教室の隅っこでプリントを拾った。

 名前しか書いていない、提出物。

 明日締め切りの奴じゃん。

 …相沢君のだ。

 相沢君は小中高と同じ学校。

 同じクラスになったのは、高校が初めてだったけど、たまたま家は知っている。仲のよかった志乃ちゃんちから3件ほどしか離れていない。

 通り道だし、持って行ってやるか。

 テニス部が素振りをする横を通って、帰宅部員は自転車で学校を出る。

 呼び鈴を押してから、ポスティングでもよかったかも、と思った。

 ピンポンダッシュでもいいかな、っと思っているうちに、相沢君が出てきた。

 機嫌の悪そうな顔をしてる。寝てたのか、目が半眼だ。

「起こしちゃった? ごめんね。はい」

 とっととプリントを渡した。

「ん…?」

 左手に持っていた携帯のストラップに目がいった。けど、あえて触れず。

「落ちてたよ。じゃ、また。お休みー」

 寝てたと思って、お休み、と言ったけど昼間の別れの挨拶には向いてなかった。

 まあいいよね。

 これで恩義は返せた、とは思っていない。

 相沢君、君は私の恩人だ。

 だから君への労働を苦にすることはないのだよ。


 あれは忘れもしない、入試の日。

 私は消しゴムを忘れた。

 もうすぐ試験が始まる5分前、必死に筆箱を探してもどこにもなく、焦りまくっていたら、隣の席にいた相沢君が、自分の持っていた予備の消しゴムを惜しげもなく分けてくれたのだ。

 神だ…。

 試験が始まるまで3分くらい、両手を合わせて拝んだ。

 その御利益もあって、無事今の高校に入学することができた。

 あの時の消しゴムにかけて誓う。

 私、日向美咲は、相沢君、君への恩を忘れることはない。

 …当面の間。


 家に帰ると、録画しておいた「シャイニング・フローレ」を見る。

 「シャイニング・フローレ」、4人の選ばれし女の子が変身して魔法少女になり、光の王国復興を目指す、愛と感動の物語だ。

 対象年齢は、…やや低め。そろそろ大きなお友達、と呼ばれるかもしれない。

 しかし、王国の王子様は見目良し性格良しで、敵の魔法使いもダークでヒールな魅力いっぱいのこれまたイケメン。

 中でも一押しは悪の王、アレク様ことアレクシオン。長髪がウザくない、現実にはあり得ない男。声さえも神々しい。例えいつかはフローレどもに倒されることになろうとも、私はアレク様を応援してます!!

 『おまえも闇の虜となれ』

 ああ。私で良ければ、虜にしてくださーい。

 しかし、ラスボスポジションのアレク様は、登場が少ないのが玉に瑕。

 下っ端の魔法使いの方が毎週欠かさず出てくるってのは、イケメンであっても許せない。


 そう言えば、今日見た相沢君の携帯のストラップ、ガーベラだった。

 もしや、同志…? フローリアンなのか?

 しかし、ガーベラのファンだとしたら、フローリアンであっても敵とみなすべきか。

 まだクラスでは、自分がフローリアンであることは内緒にしている。

 例え、鞄につけているのがアレク様のアクリルキーホルダーであったとしても。

 ガチャで集めたシャイニングソードが3種類揃って、あと1個のところで2回もダブり続けていても。

 そう言えばダブったのはガーベラとリリーのだった。

 同志だったら譲ってもいいんだけど、まだフローリアンであることを明かすのは、お互い早いであろう…。高校生活はこれからだ。慎重にしなければならぬ。

 …さて、次は「疾風のクロニクル」だ。これを見たら、宿題しよう。


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