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山の灯台  作者: 吉野貴博
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上中下の上

 トイレには行かない方がいいんじゃないかって話なんですけどね。


 この話を持ってきたのはA君で、大学生の頃の話なんだそうです。

 A君夢を見ましてね、

 塔の入り口の前に立っていまして、高い高い塔です。上を見上げても塔のてっぺんは全然見えなくて、首が痛くなる。

 空は雲一つ無い青空で、深い青なんです、見ていて気持ちよくなってずっと見ていたい空です。

 塔も真新しい真っ白で陽の光に照らされてピカピカ光っているように見えるほどで、神々しいんですね。

 周囲は森です。木がたくさん立っていて、向こう側は見えない。自然にうまく調和している。

 立ってる場所は塔の土台階段下で、階段は同心円状というか半円で幅が何メートルあるんだろうってほど大きいいんです、前後の幅がとても広くて、高さはそれほどでもありません、二十段はないくらいです。

 もう空から塔から階段から威風堂々として、凄いなぁと思えるんです。

 A君喉が渇いていて、中でちょっと水を飲ませてもらおうと階段を上るんですが、その階段にですね、

 広い階段に女の子が大勢うつぶせで寝ているんですよ。

 死んでるんだか眠っているんだか全然解りません。みんな長い黒髪で白いワンピースを着て赤い靴を履いている。A君がおっかなびっくり近づいてもピクリともしない。近づいたA君、女の子の中にはつま先が上を向いている子がいるのを見つけるんですが、長い髪が顔を覆っているんですね、だから近寄るまではうつ伏せだと思っていた。

 で女の子のワンピースも下ろしたてで良い材質のようで、地べたに寝ているのに汚さが欠片もない、髪もつやつやして、寝てるのかな?とも思えるのですけど誰一人起きてる子がいないのは変だなあと。

 階段を上がりきりますと、女の子が掃き掃除をしています。その子はクラシックなメイド服を着てまして、A君のことなんて気にせず掃除をしています。

 A君も話しかけちゃ駄目なのかなと見るだけでドアノブに手をかけるんですが、鍵が掛かってなくて開きます。

 中に入るんですけど、入った途端喉が渇いていたことがすっかり頭の中から消えて、トイレに行きたいなとトイレを探すんですよ。

 そこで目が覚めたんです。

 夢を見たときあるあるですぐ忘れたんですけど、なんで思い出したかといいますと、


 大学が夏休みなりまして、廃墟巡りをしている仲間のB君が帰省する、実家に帰ると言い出したら、C君が車を買ったから慣らし運転をするから送ってやるよと言いまして、A君も誘われてB君の家までドライブしようということになりまして、ブーっと走って山の中を通っていたら、灯台が見え始めたんですよ。

 ナビにはそんな建築物ありません。

 山の中に塔が建っていたり、観音像とか大仏像とかだったら解りますよ、宗教施設がそういうところにあるのはよくある話ですし、塔も何かの象徴として理解はできます、それが灯台?とB君もC君も不思議に思うのですが、そこはそれ、廃墟巡りが趣味ですから進行方向左側見ながら「行ってみたい!」と思うのですが、山を抜けるまでナビは一本道しか表示してなくて灯台は表示されない、道路の脇に立っているのならともかくナビにない道を通らないといけないのなら、山のことを知らない自分たちには行けないだろうと悔しく思うのですが、二人が熱くなる一方でA君は(あれ、なんだっけ、どっかで見たことあるぞ)と気になって、集中して記憶を探りまくってようやく、

(あぁ、夢で見たのか)と落ち着きました。

 灯台の胴体が夢で見た塔の胴体と同じで、夢の中ではてっぺんが見えなかったので時間がかかったのですね。

 二人が盛り上がってる中A君は

「不思議だね~」と感心しているテンションで静かにしていたんですが、しばらくして道が左側に分岐しているところまで来まして。

 ナビは相変わらず一本道を示していて、そんな左に行く道なんて表示していません。地図情報が古いのか、存在しない道なのか、三人思案のしどころです。

 三人とも灯台に行ってみたい気持ちはあるのですけど、存在しない道に入ったら帰ってこられなくなる話だってたくさん読んでいます。

「どうしよう」

 考えること十分、

「行こう!」

 決めました。


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