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4.まるでストリートミュージシャンの音楽をまるで国歌斉唱を聴くときのように目を瞑って軽くリズムに乗るおばさんのような気持ち

 ふと気になって、その音の発生源に目を向けてみる。だけど、視線の先には何もない。

 一瞬、もしかして聞き間違いだったか? と思ったけれど、耳を澄ましてみれば微かにそれ(・・)は俺の耳まで届いた。

 

「これは……聞き間違いじゃない……!」

 

 多分、それ(・・)は場所で言えば城下公園の最奥の広場、目の前の木々を越えた場所から聞こえてきている。

 そして、それ、いや、このヴァイオリンの音色は俺の心を酷く掻き立てた。思わず、小走りになる。

 木々を越えて、土を固めただけのお世辞にも整備したとは言い難い道を走り、徐々に大きくなる音の元へと向かっていく。

 木漏れ日のカーテンを抜けた俺の目に映ったのは、太陽の光によって照らされた長い茶髪を風の思うままに靡かせながらヴァイオリンを弾く美少女。

 

 思わず立ち止まり、その光景を眺める。

 だけど、すぐにハッとして俺はその少女の元までゆっくりと歩いていく。途中で人がいることに気がついたようで、彼女は演奏を中止してヴァイオリンを下げてこちらを振り向いた。

 しかし、向かってきているのが高校生()だとは考えていなかったらしく、一瞬だけ驚いたように目を見開いた。

 

「あら? 貴方のような歳のお客さんは初めてね」

 

「……お客さん……?」

 

「ええ。私の演奏を聞きつけてわざわざ自転車とかが通れない道を抜けてここまで来たのよね? それなら私の演奏を聴きに来たお客さんということじゃないのかしら?」

 

 確かに、そう言われてみればそうだったのかもしれない。

 実際、俺は彼女の演奏に釣られてこうしてわざわざ城下公園の最奥まで来てしまったのだから正しくお客さん(カモ)と言えるだろう。

 

「まぁでも、私の素晴らしい演奏を聴いてしまった貴方の身体が無意識にこちらへ引き寄せられたという可能性もあるかもしれないわね」

 

「……は?」

 

 今何といった? 聞き間違いでなければ素晴らしいとか言わなかったか?

 

「それで、実際、私の演奏を聴いてみてどうだったのかしら? 息を飲むほど素晴らしかった?」

 

「……だよ」

 

「うん? よく聞こえなかったわ。もう一度言ってくれるかしら?」

 

「音がずれ過ぎて最悪だよ!」

 

「な、なな、ななな……」

 

 本当に自分の演奏が素晴らしいと思っていたのか、彼女は放心したような様子を見せる。

 だけど、俺はそんな事お構いなしに今思い浮かんでいる考えを全てぶつけることにした。

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