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猫化して異世界を渡り歩きます  作者: 阿谷幸士
第一章 猫の夢
9/40

9,放浪猫

ビックリ仰天。

この世界には車が存在した。

少し離れた大通り沿いの店に買い出しに行ったとき、普通に車が走っていた。

デザインも非常に元いた世界と似ている。

私の家。ブレンダの店の近くや、リタと買い物に行った所は細い路地が入り込んだ場所だったため車が通らなかっただけのようだ。

バスまで存在していた。

ガソリンなのかな?と思って帰ってブレンダに聞いてみると。

「ガソリン? 何だいそれ? 魔石で動いてるに決まってるでしょ?」

と呆れ気味に言われた。


という訳でリタと買い物に行った一週間後。

今度は私からリタを誘い、バスに乗ってこの街を探検することにした。

本当なら一人で行きたい所ではあったが、乗り方も分からなければ帰り方も分からない。

ここは謙遜に、自分の無力さを認めるべきだろう。

リタも快くOKしてくれた。



バス停でリタを待つ。今日という名のこれまた極めて天気の良い朝。

眠たい。とにかく眠たい。


「アヤノ! お待たせ!」

「おはようリタ。危うく眠っちゃう所だったよ」

「今おはようって言ったよね!? 眠たくなるの早くない!?・・・ってもう・・・相変わらずお寝坊さんね・・・」


いつものやり取り。

いや、いつものやり取りとなってきたと言うべきか。

ここ数週間で随分緊張感が抜けたものだ。

その理由は一重に、リタが諦めずに私に歩み寄ってくれたからだが・・・

でも本当に、こんな何気ない同年代との会話が、私にとっては余りにも新鮮だ。

だから・・・


「何だかむず痒いね」

「え!? どうしたのいきなり!? 今の会話にむず痒い所なんかあった!? アヤノさーん! 起きてくださーい! まだ思考回路が眠っておられますよー!」


何を言うか。

猫はいつだって眠っていたいのだ。



バスの乗り心地は非常に快適だ。

何が違うのだろう? 心なしか日本のバスより振動が少なく感じる。

魔石で走ってるからか?

比較的バスの類いは酔い易かった私だが、このバスはそんな気配を感じない。

とにかく今日はかなり距離を走る予定だ。

それならそれでありがたい。

私はリタに頼んで、この街の外周付近を時計回りで一周するルートのバスに乗らせてもらった。

一度もバスから降りずに一周すると、だいたい二時間半位で回れるらしい。

この街全体を城壁で覆われているのだとしたら、かなり広いのではないだろうか。

外周は比較的交通量も少ないらしく、かなりスムーズに走る為、ドライブには最適なのだとか。

今日はこの街一番の繁華街で一回降りて、ぶらぶらしようという事になっている。

バスの乗車中は、リタにガイド役をお願いした。


出発して一つ目のバス停。

ここのすぐ近くに、街一番の図書館があるらしい。

ほほう。これは行ってみないとね。

二つ目から四つ目は住宅街。比較的物件の値段も安いのだが、貧民街に近いものもあり、この街の中でもっとも治安が悪い所らしい。まあそれでも他の街のに比べると全然治安はいいらしい。

あらあら。この街治安いいんだ。ブレンダの剣からして治安悪いと思ってたよ。まあ確かに、私がここに来てから、暴徒とか強面の人とか見てないかも。

五つ目から八つ目は農地や畜産地。

へえ。

九つ目から十二個目は工場等が建ち並ぶ地区。

おー。

十三個目から十五個目も住宅街。だが、こっちは高級なんだとか。

ふむふむ。

そして十六個目と十七個目が繁華街。

あらそう。

十八個目には闘技場があるのだとか。

まあ。


「アヤノ! 起きてる!? 今七割方寝てたよね!」

「・・・そりゃ二時間もこんな天気のいい日にバスに乗ってたら、普通寝ちゃうじゃない?」

「私帰るよ!? ちゃんと聞かないなら本当に帰るよ!?」

それは困る。

気まぐれでごめんね。



さて。とりあえず繁華街を歩いて回る為、手前の十七個目のバス停で降りる。

眠たくはあったが、コロコロ移り行く景色を見るのは楽しかった。

リタ曰く。

「今走って来たのは外周だから住宅街とかも家々の隙間にかなり余裕あったけど、中心に近づくにつれてどんどん密集してくるんだよ」

とのこと。

バスの乗り方も分かったし、今度行ってみよう。


繁華街の中は、もう目眩がするほど人が多かった。

リタのお店も私の所も客商売のため、休みは基本平日。

よって今日もその平日に当たるのだが。

それでこの人の量はどういうこと?

隣でリタは目をキラキラさせながらお店を物色しているが。

私は正直今すぐにでも帰りたい症状に駈られている。

でもガイドをお願いした手前、彼女を無下には出来ない。

・・・結局三時間ほど歩き回らされた。


「あ~~楽しかった! やっぱりここは品揃えも店の種類を最高ね!」

「・・・そうだね」

休憩がてら入った喫茶店に、水を得た魚が一匹と、死んだ魚の目をした猫が一匹。

「アヤノは体力が無さすぎるのよ」

「はいはい。どうもすみませんね~」

私は適当に相づちをを打つ。

猫は瞬発力は高いが、スタミナはないのだ。許して欲しい。

「そういえばアヤノ。この間のこと聞いてもいい?」

「この間?」

「そう。アヤノが飛んで風船取ったときの事」

「あ~・・・その事」

「うん・・・言いたくないなら無理には聞かないけど・・・私、アヤノ怒らせるようなことしたかなと思って・・・」

「私が怒る?」

「うん。だってあの後すごい早足で帰っちゃったから・・・」

「あ~その事。だったらリタが気にするようなことじゃないよ。あの時周りの人が結構ざわついたでしょ? だから・・・その・・・ちょっと気恥ずかしかっただけ・・・」

「そう・・・そういう事だったのね・・・良かった・・・」

リタは心底ホッとしたような顔をする。

本当にいい子だね。リタは。

「じゃあ今度は私がリタに質問していい?」

「私に? いいけど、どういう風の吹き回し? アヤノが他人に興味示すなんて。普段から人に関心すら見せないのに」

「う、うるさいな。いいでしょ。そういう気分なの」

「ふふふ。いいよ別に」

猫だってたまには、人に愛想を見せたくなるのだ。

「リタは私と同い年じゃない? その・・・学校とか行かないの?」

「学校? そういえばアヤノ前居た所で学校通ってたんだっけ? 私、前から気になってたんだけど、アヤノの家って貴族だったの?」

「そんなわけないじゃん。一般的な。いやもしかしたら一般よりちょっと下くらいだよ」

「それなのに学校行ってたの?」

「どういうこと?」

「いやだって、私たち位の年齢で学校に行くの貴族くらいだもん」

あ~・・・そういう感じか~・・・

なるほど。これでブレンダの最初の反応の理由が分かった。

「あのね。私が前居た場所はね、6歳から15歳までは絶対学校に行かないといけなかった。というか法律行くように決まってたの。その後18までの3年間さらに学校に行くんだけど、それは強制じゃないの。でもそこに行かないと、卒業後の仕事先の選択肢が狭くなるから、ほとんどの人が行ってたよ」

「・・・学校行く期間長くない?」

「長いよ。果てしなく終わらないんじゃないかと思うくらい」

「そっか。仕事の手伝いしないでいいってのはいいかもしれないけど、長いのも大変そうね」

「まあね。こっちはどうなの?」

「ここは5歳から8歳の3年だけ」

な、なんだと・・・

「基本的な読み書きや計算教わるだけだからね。あと法律とか」

「ま、マジですか・・・」

「うん。だってみんな家業とか違うんだもん。現場で仕事しながら色んなこと学んだ方が、その仕事に合った知識や技術が身に付くでしょ?」

「た、確かに・・・」

「まあそれ以降も学校に通うおうと思えば通えるんだけどね。魔法学校とか」

ん? 今何て言った? 魔法学校?

「それも、現場で実際に使いながら覚えた方がいいって場合もあるから賛否両論あるけどね。それにほとんどの仕事が、魔法が合った方が楽ってだけだから、無くてもやっていけるし」

何? 魔法って資格みたいな何かなの?

「リ、リタは使えるの?」

「私? うん。まあ基本的な物しか使えないけどね」


ま、魔法の基本って何・・・?

猫は車酔いしないらしいですよ?

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