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闇の帝王として。

一週間以内に出そうと思っていたのですが・・・ッ!

 今現在、俺は自宅の屋敷へと戻り応接室の長いソファーに座っていた。俺の横にはカンナとモモネが座りミユキはソファの側に立っている。机を一つ間に挟んだ向こうには俺の姉のジュリー・バトラーと、肩までの紫色の髪の女性こと、小さい頃に姉がいない間に俺に色々といたずらしてきた姉の親友のカティ・ブラーシュさんがいる。そして、俺たちの空気はもはや息苦しいと言っても良いくらいの重さがあった。誰からも話し出さず、ずっと沈黙が続いているのみであった。


 何故この二人がいるかと言えば、さっき街中で久しぶりに姉と、姉と一緒にいたカティさんと出くわしてしまった。話したくなかったからあのまま無視してしまいたかったが、カンナたちがおり姉が離してくれなさそうだったから話すことにした。あの街中で話すことが嫌だったため、仕方がなく俺の屋敷に招待することにした。


「どうぞ」

「うん、ありがとう」


 リアがきっかけになりそうなお茶を俺たちの前に出してくれた。カティさんはお茶を受け取るとリアにお礼を言って飲み始める。俺も少しだけ飲み、乾燥していた口内に潤いをもたらす。いつまでもこうしていても仕方がない。彼女たち二人と関わりたくないと思う気持ちは山々だが、話し出さない限り沈黙は解消されずこの場を納められない。そう思って話し出そうとすると、カティさんが話し始めた。


「オリヴァー、久しぶり。もう十年近くになるね」

「まぁ・・・。そうですね」

「元気にしていた? 何もなかった?」

「人並みくらいには」

「今までどこで何していたの?」

「色々です」


 やっぱりダメだ。あの出来事があってからでは、カティさんや姉と前みたいに話すことができなくなってきている。どうしようもないくらいに今すぐにでも二人から離れたい、あの感情が思い出しそうで怖くなってくる。しかし、時間を置いたからかそれほどまでに感情が出てこないが、やはり二人に接触するのはやめたいくらいだ。


「もう、何だかそっけないよ? 久しぶりだからと言ってももう少し砕けてくれても良いんじゃない?」

「いえ、今はこれくらいの方がやりやすいです」

「そう? まぁ十年ぶりくらいだから仕方がないか。で、この子たちはオリヴァーの彼女? もしかして何股もかけているの? そんな節操なしに育っちゃったの?」

「彼女たちは違います。そんな関係ではありません」

「へぇ~、でも彼女たちは違うみたいだけど・・・。まぁ良いけど。それにしてもまさか『闇の帝王』がオリヴァーだったとは思わなかったよ。私たちが知っているオリヴァーの称号は『闇の勇者』だったからね。悪逆非道な勇者だって噂されているけど、何したの?」

「勝手に噂されているだけです。俺は何もしていません」

「もぉ、全く、その感じは調子狂うなぁ。子供の時みたいにカティ姉さんって呼んでも良いんだよ?」

「子供ではないので、カティさんと呼びます」

「随分と強情になったね。昔なら私のすぐ後ろについてきていたのに」

「人は変わります」

「はぁぁぁあ・・・。あの可愛かった頃のオリヴァーはどこにいったのやら。ねぇ、ジュリ」


 こっちを見ては視線を逸らしをずっと続けていたジュリ姉にカティさんが言葉を投げかけると、ジュリ姉は急に投げかけられたことで驚いて動揺していたが、少ししたら落ち着いて俺の方を真っすぐ見てきた。


「・・・大きくなったね」

「まぁ、そうですね。十年も経ってますので」

「格好良くなったね」

「そうですか、ありがとうございます」

「・・・息災に暮らしていた? 何か困っていることはない?」

「大丈夫です。もう大人なので一人でできます」


 俺のそっけない態度に、ジュリ姉は口を閉じてしまった。そして会話が途切れたのを見計らってカティさんが口を開く。


「あまりジュリをイジメてあげないで? 今までオリヴァーが死んだんじゃないかと思って情緒不安定になりながら生きてきたけど、生きていて戸惑っている部分があるんだから」

「そう、ですか」


 俺的にはもう俺が死んだものと扱ってくれているのかと思っていた。その方が、俺がジュリ姉やカティさんが知るオリヴァー・バトラーではないと思ってくると期待していた。俺が死んだことになっていた方が俺は二人に会わずに済み、二人は俺という記憶を抹消しやすくなる。


「世間話はここまでにして、本題に行くね? 何で、私たちの前からいなくなったの?」


 俺がぶっきらぼうな態度を取っていると、遂にカティさんは核心的な部分をついてきた。俺が一番答えにくい答えを聞いてくる。この人は少し腹黒な部分があるからやりにくいと言っても良い。しかもそれは子供の頃からと来たから、今はどれほどのどす黒に育っているのやら・・・。そんなことは置いといて、この質問にはどう答えようか。本当のことを言えば、彼女たちはきっと助けてくれようとする。だから別の理由を言わなくてはならない。できれば、彼女たちが俺をあきらめてくれるような理由を。そのためには、感情込めて、現実味を帯びた言霊で伝えなくてはならない。


「何かあったの? 誰かから何か言われたの?」

「誰からも言われていないですよ。俺の意思で、俺があそこを出ていきたいから出ていっただけです」

「何で? 私たちに些細なことでも言ってくれれば解決するって言っていたよね。私たちでも解決できないこと・・・。もしかしてバトラー公に言われた?」

「あの人には何も言われていないです。そもそもあの人は俺に何も興味を示していなかった。そんな人が急に何か言うはずがない」

「なら何? 私とジュリとオリヴァーの三人で、周りから何か言われても気にせずに生活していた。そんなありきたりな生活をしていて、私たちは楽しかったよね。もう一度聞くわ、どうしていなくなったの?」


 俺は追及を止めぬ視線としつこいカティさんの言葉を聞いて、意を決して口を開く。これをすれば、おそらく俺は闇にまた一歩近づくだろう。だが、それを引き換えに姉とカティさんから離れられるのなら願ってもないことだ。


「そんなに聞きたいのなら言ってやろう、あそこに嫌気がさしたからだ。毎日毎日俺は『闇の勇者』という理由で同世代の子供からイジメられ、親からはいないものとして扱われ、近くに住む大人たちは領主の息子である俺に基本的には直接的な攻撃はなかったものの、無視や陰口は日常茶飯事。ひどいときは直接俺を暴行してきたことがあったな・・・。そんな場所で、俺がいなくならないとどうして思う? 俺は生まれてからあそこを出るまで苦痛しか感じたことがない。これで満足か?」

「・・・そう。でも私たちがいる前ではそんな素振りはなかったんだけどなぁ」

「俺があそこに住む奴らを信用できると思っているのか? 刺激しないように接していたんだよ」

「ふ~ん。そうなんだ。それはジュリの目を見ても言える?」


 チラチラと俺の方を見ているだけのジュリ姉であったが、俺の言葉を聞いて完全に俯いて顔を上げようとしない。しかし、カティさんが無理やりジュリ姉の頭を上げさせて俺と目を合わせた。ジュリ姉の目には涙が今にもあふれ出しそうになっていた。


「・・・オリヴァー」


 ジュリ姉は俺にすがってくる視線を送ってくる。だが、俺には姉を救うことができない。きっとどこかにいる運命の相手に幸せにしてもらうのを願っている。だから、今俺にできることは姉を俺という呪縛を解き放つこと。それがどんなに傷つけても、傷ついても。


「あぁ、俺はジュリ姉を、ジュリー・バトラーを姉と思ったことは一度もない。息子である俺を生き地獄へと放り込んだ親の血を引いている女だぞ? そんな女を姉と思うなどあってたまるか。そしてその親友であるカティ・ブラーシュと話すのも虫唾が走る。俺はジュリー・バトラーとカティ・ブラーシュが憎むほど嫌いだ」


 俺がそう言うと、ジュリ姉は血の気が引いた顔をした後、うつろな顔で俺に触れようと立ち上がろうとするも立ち上がれずに気を失いソファーに倒れようとした。だが、カティさんがジュリ姉を支えて自身の身体にもたれかからせた。


「ねぇ、本気で言っているの?」


 俺の耳元でカンナがそう呟いてくる。カンナがこう言うのは、俺が前に言った言葉を思い出してのことで、今俺が言っている言葉と前に言った言葉が全然違うもので聞いてきているのだろうか・・・。いや、カンナには『真偽の加護』というスキルがあったな。それで俺の嘘を見抜いているのだろう。厄介な相手が身内にいたとは。


「何を言っている、俺はいつも本気だ。今は黙って聞いていろ」

「ッ! ・・・分かった」


 俺がカンナに釘を刺すような視線を送って喋らないように目線と言葉の圧をかける。カンナは俺の言葉の真偽が分かっているはずだから、ただの圧ではないことは分かっているはずだ。カンナは俺の言葉に口を閉じて俯いた。


「女の子にそんな言葉を使っちゃダメだよ。小さい頃に言ったよね? 女の子には優しくしなさいって。それは私にも、ジュリにも優しくして接してほしいよ」

「あんな歪んだ環境で育った俺がそんな気遣いができる男に育つと思うか? それを歪んだ環境の一端を担っていた女に言われるとは思わなかったぞ」

「私たちはあの中でオリヴァーを大切に守っていたつもりだよ? それこそバトラー公からも領土の子供たちや大人たちからも」


 そんなことは守られていた俺が一番よく知っている。小さい頃にそんなジュリ姉とカティ姉に迷惑をかけないように大人ぶったりしたものの、その態度がそいつらに拍車をかけいじめが悪化して結局前よりも迷惑をかけてしまったが、二人は笑いながらからかったりしてそれを許してくれた。二人には本当に大切にされていた。だからこそ、


「そんなものはお前らの自己満足に過ぎないだろうが。俺にその満足を押し付けるな、俺はお前らのおもちゃではない。――だから、俺を大切に思うのなら俺に近づいてくるな」


 これが俺の選択だ。この選択に悔いはない。これで俺の未練は終わり、彼女たちが俺に未練があるのならこれから彼女たちの道が始まるだろう。これ以上俺に踏み込まないでくれ。


「・・・・・・分かった。今日のところは引き上げるね。ジュリは分からないけど、私はあきらめが悪いからまた来るよ」

「何度も言わせるな、俺に近づくな」


 カティさんはジュリ姉を背負い、俺から背を向ける際に少しだけ悲しそうな顔をしながら部屋から出ていった。二人が屋敷から出て行ったのを≪気配察知≫で確認した俺は、溜息を吐きながら深くソファに座ると、モモネが立ち上がって俺の前に立ち、俺を睨めつけながら見下している。


「さっきのはどういうこと?」

「どういうことというのがどういうことだ?」

「とぼけんなし! オリヴァーは二人が好きなはずじゃなかったの? それなのになんで嫌いなんて言ったん?」

「お前には関係ないことだ。口を出すな」


 俺が睨みを利かしながら低い声でモモネに言うが、モモネは少しも怯えることもなく、深く首を突っ込んできた。これ以上突っ込んでほしくない。この場にモモネたちを同席させたのは失敗だったな。いずれ彼女たちにも同じようなことをしないといけないのに。


「それで引き下がると思っているわけ? あたしはそんなんで引き下がらないし」

「知るか。引き下がろうが引き下がらなかろうが何も答えるつもりはない」

「答えなくても、オリヴァーは今辛いんでしょ?」

「何を根拠にそんなことを言っている? 今はあいつらに言いたいことを言えて気分が良いくらいだ」

「そんなはずないじゃん・・・。気が付いていないと思うけど、今のオリヴァーはすごく悲しそうな顔をしているよ?」

「それこそあり得ない。悲しみなど、疾うの昔に捨てている。それに嬉しいはずなのに悲しいなどおかしな話だろう」

「分かるし。・・・・・・いつもオリヴァーのことを見ているから。いつもオリヴァーがどんな表情なのかを、どんな時にどんな表情をするのかを見ていたから」


 こいつは・・・。本当に俺のことを見ていたんだな。いつも見ていなければ俺のほんの少しの変化を気が付けないはずだ。・・・くそっ、厄介な奴を拾いこんでしまったと今思ってしまった。


「ほんの数か月しか一緒にいない仲で、そんなことが分かると?」

「分かる。現に今分かっているからあってるっしょ?」

「いいや、お前は何もわかっていない。そもそもたった数か月で俺の何が分かる? 一年以上一緒にいた男の悪事を見抜けなかった女が」

「ッ! ・・・確かにあいつの時は見抜けなかったけど、今は能力があるし、前以上に注意しているから引っかからないって言えるし!」

「フン。そんな簡単に本性を見抜けるようになると思っているのか? それは大きな間違いだ。俺という最大の悪の本性を見抜けていないのに引っかからないとはおかしなことを言う」

「オリヴァーのことなら分かるし! オリヴァーは、優しくて、他人をきちんと見て、そして寂しがりな人だってことは分かってるから」

「それが間違いだと言っている。俺がした温情は単なる気まぐれだ。それにそんなことで俺のことを知っているとは言えない。俺の体面的なことしか見ていないんじゃないのか? 何より、人は経験により自身を形成させていくにも関わらず、俺の内面的なことや境遇をどこまで知っている? 俺のことを知っているようで本当は俺のことを何も知らないんじゃないのか?」


 引き下がらないモモネに少し強く言ってしまい、モモネは押し黙った。俺は少し言い過ぎたと思ったが、これ以上の追及を許すわけにはいかないから、こう言うしかなかった。そう自身に言い聞かせていると、身体の底からこれまでとは比べ物にはならないくらいの鈍く絡みついてくるような感情が湧き上がってきた。そして右の手の甲に闇を象徴する黒の模様が浮かび上がってきた。


「俺のことを知らずに、俺のことを語るな。お前は単に依存する対象がほしかっただけの子供だろうが」


 俺はそう言い残し、手の甲に浮かび上がっている模様をポケットに手を入れて隠しながら応接室から速足で出て自身の部屋へと足を運んだ。部屋に戻り、ベッドに腰かけて隠していた手の甲をさらけ出す。闇の模様は手の甲だけに収まらず、腕全体を覆うほどの闇の魔力があふれ出している。魔力だけではなく、手の甲だけの模様は次第に右腕すべてに広がっていく。


「・・・早いな」


 この原因は分かっている。一つはジュリ姉とカティ姉さんと決別しようとしたこと。そしてもう一つはモモネにも距離を置こうとしたことの二つだろう。後者は、俺が負の感情を抱いたことによる侵食だろう。このままあいつらといれば、いずれ俺が闇に呑まれてしまう。今できる最大の選択はあいつらと距離を取ることで、もう闇の魔力が収まらないのを覚悟しないといけない。


 しかし、こんなことで闇の侵食が始まるとは思わなかった。これが『闇の帝王』の弊害か。『闇の帝王』になってから五年以上経つが、少しでも親しくなった人がいなかったから分からなかった。俺がジュリ姉たちを一緒にいた頃は『闇の勇者』で、こんなことがあっても少しも侵食が訪れなかった。


 この称号のランクが高くなれば高くなるほど、俺たち勇者はその神に近づいていく。俺ならば闇に近づいていき、最終的なことは分からないが、過去に『水の勇者』が固有スキルを暴発させて身体が水になったという例はある。・・・もしかすれば、力を使う俺たち神の御身が行きつく先は自然に還ることなのかもしれない。


「オリヴァー、開けるよ」


 少しずつ落ち着かせてきた矢先、ノックを三回して扉の前で誰かが声をかけてきた。この声はカンナか。今は抑えるのに必死だから来てほしくない。


「開けるな、今は忙しいんだ」

「すぐに終わるから良い?」

「ダメだ、後にしろ。今は誰かに構っている暇はない」

「それはダメ。今教えてくれないといけないから」

「それはダメとは、どっちが聞きに来ているのか分からないぞ。そんなことより、気が散るから早くそこからどこかに行け」

「今教えてもらわないと、今言わないとモモネの誤解が解けない。モモネに直接言わなくても、私が言っておいてあげるからあの時の真意を教えてほしい」

「誤解? 何を言っているんだ。あの時俺が言った言葉はすべて真実だ。誤解を解くこともない、早くどこかに行け」


 闇の魔力を抑えながらカンナに応答していると、何がきっかけかは分からないが、カンナは急に俺の部屋の扉を開け放ってきた。部屋へと入り、俺の腕の魔力を見てカンナは目を見開くが、それを気にせずに俺の隣に座る。


「それは何?」

「お前には関係ないことだ。そもそも勝手に入ってくるな」

「・・・それは無理。私にとってもオリヴァーにとっても大事なことだから」

「何を根拠に・・・。と言うか、早く出ていけ。俺はこの通り忙しいんだ」

「それって、これを抑えるために――」

「触るな!!」


 カンナが不用心に俺の腕を触ろうとしてきた。だから俺は声を荒げながらカンナが触れようとしていたところを止める。それを受けたカンナは驚いて手を引いた。そして小さな声で謝りながら、黙ってしまった。声を荒げるのはやり過ぎたと思ったが、今はそれを考えている場合ではない。


 沈黙の間、俺は魔力を段々と抑えることができ、手の甲まで収束することができた。ため息を一つ吐くとそれを見計らってたかのようにカンナが口を開く。


「うそ、なんでしょ? 私が関係ないということも、オリヴァーが言った言葉もほとんどが」

「・・・カンナのスキルか」

「うん、そう。私の≪真偽の加護≫のおかげでオリヴァーがお姉さんたちと話している時も、モモネと話している時もうそだということが分かった。私が知りたいのは、どうしてオリヴァーがそうする必要があるのかを知りたい。オリヴァーが言っていたように数か月という短い期間しかオリヴァーと接していないけど、オリヴァーが意味もなく相手を傷つけることはしないということは分かる。・・・もしかしてその黒いもやみたいなのが関係しているの?」


 俺はカンナの質問にすぐに答えることができなかった。その代り、闇の魔力を抑えることを最優先してそちらに集中した。その間、カンナは何も言わずにずっと俺の方を向いて答えるのを待ってくれていた。闇の魔力は収まり、俺はカンナの方を見る。カンナも俺の方を見ていたから目と目が合う。こいつにうそをつくことができないのなら、本心を言うしかない。


「悪いが、これについて、今は言うことができない」

「理由を聞いても良い?」

「あぁ。言えないのは、それが俺の生きている道で俺の選択を左右する大事なことだからだ。それを言ってしまうということは、俺が聞かせた相手を信頼しているということになる。そう感じてしまえば、俺はおそらく歯止めが利かなくなる」

「・・・なら、いつかは話してくれる?」

「それは約束できない。俺の口から言う時は、それなりに覚悟したときだ。俺はその時が来ないことを望んでいるから、どうしても知りたいと言うのなら自分で調べるかそれ相応の覚悟を持ってくることだな。時間が経てば分からないが」

「・・・・・・分かった。でもこれだけは教えて。オリヴァーはお姉さんたちやモモネを傷つける気はない?」

「ハァ・・・。あぁ、ないぞ。これで良いか?」

「うん、満足。モモネには遠回しにオリヴァーも辛いということを伝えておくから、オリヴァーはモモネに今まで通りに接してあげて。それが今回の罰だから」

「分かった。俺は最初からそのつもりだったから罰にもならない」

「それなら良かった。私はモモネに伝えに行く」


 用事が済んだカンナは部屋から出ていき、ようやく俺は部屋で一人になることができた。とは言え、今更一人になったとしても好都合なことはない。俺はベッドに横たわり、目を閉じて今までのことを考える。


 俺の歩んできた道の中で、俺は幾度となく間違った選択をしてきただろう。さっき姉たちにしたことも他から言わせれば間違っていることなのだろうが、俺は後悔していない。俺が後悔したことは過去に一度しかない。だが、後悔していなくても、間違っていることは自覚している。


 相手のためを思えば、それが最善なのだと言い聞かせて俺は行動する。それが、俺の望んでいる未来に繋がらなくても、相手の最善の未来につなげるために俺は俺自身の未来をあきらめられる。俺一人の未来のために、愛するものたちに危害が加えられてはいけない。俺は相手が幸せならばそれで良い。たとえその幸せの形に俺がいなくても、俺が幸せにできなくても、相手が幸せならば。




 ジュリ姉とカティ姉が来た日から一日が経ち、俺は部屋から出る。あのまま目を閉じていたらいつの間にか寝ており、久しぶりに一人で寝れた。いつもならカンナが横で寝ているはずであったが、今日はいなかったから珍しく思った。モモネたちに説明して寝るのが遅くなってしまったのならそれは申し訳ないことをした。


 食堂へと歩いて向かっていると、ある部屋の前を通り過ぎようとした時に部屋から部屋の主が出てこようとしていた。俺は部屋の前で止まり、部屋から出てくる人を待つ。部屋の主はそんなことを知らずに扉を勢い良く開け、部屋から出ようとしたが俺がいることに気が付いて前のめりになりそうになりながら止まった。


「おはよう、モモネ」

「えぇっ!!? あ、うん、お、おはよう」


 支度を終えているモモネは、驚きながらも挨拶を返してくる。このきっかけさえあれば、モモネも俺にいつも通り接することができるだろう。それだけだったため、俺は目的の場所である食堂へと足を進めようとする。しかし、それは俺の服の裾をつかむモモネによって妨げられた。


「何だ? 俺は朝食を食べに行きたいんだが?」

「いやぁ、その、何て言うか・・・」


 言い淀んでいるモモネが何を言いたいのかは分からないが、とりあえずモモネの方に身体を真っすぐ向けて聞く態勢を取る。少ししても言ってくる気配がしないため、声をかけようとした瞬間、モモネが自分の両手で自身の両頬を思いっきり叩いた。


「あぁっ!! うじうじしているなんてらしくないじゃん! ちゃんとやれ、フクシマモモネ!」


 どうやら気合を入れるための行動だったらしい。あまりに言い出せなさ過ぎておかしくなったわけではなくてよかった。俺は頬に赤い手の跡を残しているモモネにもう一度問いかける。


「で、何か用があるのか?」

「ある! オリヴァーの好きなものは!?」

「・・・そうだな、今のところはイノチーターの丸焼きだな」

「イノチーター? なにそれ?」

「山に生息しているイノシシの仲間だ。こいつは俊敏で捉えにくいが、引き締まっている肉は格別だ」

「イノチーターね。じゃあ嫌いな食べ物は?」

「嫌いな食べ物? 特にはないが、あえて言うなら二ガーリックだな。あの独特なにおいと苦みはあまり好きとは言えない。食べれないことはないが」

「二ガーリック・・・。へぇ、そうなんだ」


 俺の答えた質問をポケットに入れていた紙とペンによって書き写している。何を言ってくるかと思えば、俺の好きな食べ物とか嫌いな食べ物とか、質問の意図が分からないものだ。それに言いにくいことかと思えば、言いにくい要素がどこにもない質問だぞ。


「じゃあ――」

「ちょっと待て。どうしてこんな質問をしてくるんだ? この質問に何の意味がある?」

「え? どうしてって、それはオリヴァーのことを知るためじゃん。それ以外に何かあんの?」

「当たり前だと言わんばかりの顔をするな。何故その思考に至ったのか分からないと言っているんだ」

「何故って、オリヴァーが言って来たことでしょ?」

「俺が? ・・・いつ言った?」

「昨日、オリヴァーが部屋を出ていく時に言ってたじゃん。『俺のことを知らずに、俺のことを語るな』って。それって語るのならオリヴァーのことを知ってからにしろって意味でしょ? だからこうしてオリヴァーに好きなものとかを聞いているんだし」


 ・・・まさか、あの時の言葉をそう解釈して来るとは思わなかった。あれは俺のことを語るなと歯に衣着せない言い方をしたつもりだった。それを俺のことを理解しろという意味で理解するとは、馬鹿なのか賢いのか分からない考え方だ・・・。まぁ、モモネがいつも通りで良かった。


「・・・そうか。モモネはやっぱりモモネだな」

「どういうことだし?」

「何も考えていないってことだ」

「はあっ!? ちょー失礼だし! あたしだって色々と考えているから!」

「分かった分かった。モモネは色々と考えているよ、訂正しておく」

「腹立つ言い方・・・。こうなったらとことんオリヴァーのことを聞き出してやるし!」

「ほどほどにな」


 俺とモモネは食堂へと行く最中、モモネが色々なことを質問してきた。誕生日や好きな武器、好きな女性や好きな髪形など様々なことを。質問の中に特に答えにくい質問はなかったためすべてに答えていった。モモネがそれを熱心に紙に書き写しているのを見ていると、気恥ずかしい気分になってくる。俺のことを知ろうとしている人間なんてそうはいない。過去に、ジュリ姉とカティさん、それに師匠くらいか。まぁ、師匠は聞いてくると言うよりかは感じてくれていたと言える。


 モモネが紙に書いているのを見て、熱心だなとだけ思っていないといけない。少しなら良いが、俺のことを本気で知ろうとしているなど心揺り動かされることを必要以上に思ったら、また侵食が始まる。・・・全く、自分の身体だが難儀な身体だ。≪明鏡止水≫を戦闘以外で使うことがあるかもしれない。これを使えば心を揺らぐことがなくなる便利なスキルだ。闇の魔力を落ち着かせるときにもこれを使えばよかった。あまりに抑えるのにやっとで思いつかなかった。


「ッ!」

「どうしたの?」

「いや・・・。何か来ている」


 質問に答えている途中で、この屋敷に高速で怒気を孕ませて来ている気配を察知した。闇の結界を通り抜けているということは魔族の類ではない、人間だ。・・・どこか覚えのある気配だと思ったが、この気配は炎の勇者か。何であいつが怒りながらこちらに来ているんだ。今まであいつが俺に付きまとっていたことはあったが、家まで来ることはなかった。


「何かって、何?」

「・・・大丈夫だ。それよりも質問は後にしてくれ。俺は客を出迎えなければならない」

「それならあたしも・・・」

「一人の方が話がこじれなくて済む。モモネは朝食を取っていてくれ。客人を追い返してから俺もすぐに食堂に向かう」

「・・・分かった。なら待っとくから」


 俺は近くの窓から外へと出て、炎の勇者が来るであろう正面の門で待ち受ける。あいつは直情過ぎるから中でやって屋敷を壊されたらたまったものではない。それに、怒って来ているのなら戦いは逃れられないだろうから少しだけ心の準備をしておく。そして、ついに炎の勇者が目に届く範囲にまで来ていた。長い赤い髪を後ろで二つに結んでいる女性こと、炎の勇者であるマリー=クリスティーヌ・ランズマン・ザイカはすでに燃え上がるような赤色を基調としている鎧を装備しており、真っ赤な魔力が身体から滲み出している。


 遂に俺との距離が五十mに至った時、ランズマンは一瞬で俺の目の前まで迫ってきて赤い剣を振り下ろしてきた。俺は魔力で盾を作り出して赤い剣を受け流した。


「おい、急に攻撃とは随分と礼儀知らずなお姫様だな」

「うるさいっ! お前みたいなやつなんかに礼儀知らずなんて言われたくないわ! このクズ!」


 随分な言われようだ。俺が何をしたんだ? こいつに関することでこいつの逆鱗に触れることなんて何もしていないと思うぞ。今はこいつの剣を受け流しながら色々と語りかけてみるか。こいつを知っている身からすれば、炎の勇者はわがままであっても、理不尽なことはしない質だったはずだ。だから意味もなくこんなことをするはずもない。


「俺がお前に何をしたんだ? 俺には身に覚えがないんだが?」

「私じゃなくて自分の胸に聞け!」


 自分の胸に聞いても分からないから俺はお前に聞いているんだよ。そう思っていると、ランズマンの攻撃は一層激しくなり俺に襲い掛かってくる。だが、俺はその一つ一つをすべて盾で受け流して対応する。こいつが教える気がないのなら、どう納めるのが正解なのか分からない。本当に俺が悪いのか、それともこいつの勘違いなのか。俺は後者だと思っている。


「お前の言っていることが本当に分からないんだが? いい加減にしてくれ」

「私のパーティーメンバーを傷つけたくせに分からない!? そんなに思い出せないのなら死んでから思い出しとけ!」


 パーティーメンバー? ・・・本格的に分からなくなったぞ。こいつの仲間と会ったことがないからな。これは本当に勘違いじゃないのか? 俺が最近こいつの知り合いで誰かを傷つけたことなんてないぞ。あるとすれば、昨日のジュリ姉とカティ姉だけだが・・・こいつがパーティーを結成したのは数年前の話で、王都・ザイカの第二王女であるランズマンは自分の家を拠点に冒険者を続けていた。それなのに、同じくザイカで行動していた俺と二人が昨日会うとは奇跡的な確率だぞ。それ以外に考えられないが・・・。にわかに信じられない。


「お前のパーティーメンバーは、バトラーとブラーシュか?」

「やっぱり二人を傷つけていたんでしょ! 身に覚えがないと言っておきながら!」


 あぁ、やっぱり二人か。これは俺だ、逃れられない事柄だ。そもそも二人がランズマンの仲間だったとは何とも運がない。そうとなれば言い逃れはできないから、どう切り抜けたものか。まずやることはこいつの動きを止めることから始めるか。そして話し合いをする。


「死んでつぐなえ!」


 ランズマンはSランクの冒険者でも油断していれば簡単に死ぬ炎の魔力がこもった剣を俺に向けてくる。俺はそれを闇の魔力をこめた盾で受け止めた後、がら空きになっている腹に、闇の魔力を込めた拳を打ち込む。鎧を着ていたが、その部分を軽々と砕き、直接腹に打ち込んだ。ランズマンは威力を受けきれずに後方へと飛ばされた。


 これで気絶でもしてくれたら良いが、さすが勇者。Sランクモンスターくらいの骨ならバキバキにできる威力を受けても立ち上がり、ものともしないか。・・・いや、ダメージは通っていたが、炎による肉体再生をしたのか。ランズマンは立ち上がると鎧の修復を行い、炎の魔力を解放している。俺のところまで熱さが伝わってきている。これは、まさか、ここでするつもりなのか?


「もう許さない、全身全霊を持ってお前を殺す。『一切を焼き尽くす常世の業火よ、天より現れ我に宿れ』」

「ここで使うつもりか? それをここで使うべきではないだろうが」

「『一切の不条理を無に帰し、罪をも浄化し、絶対の正義に屈服せよ』」

「聞いているのか? お前がそれを使う時は“極燃龍”を倒す時だろう」


 ランズマンが炎の勇者の固有スキル≪神炎≫を使おうとしている。俺は使わないように言っているが、彼女は全くこちらに耳を貸さずに詠唱を言い続けている。こんな馬鹿げたところでそれを使われては笑い話も良いところだ。たとえ≪神炎≫を使ってきても、ランズマンには勝てるが、“極燃龍”を倒すにはこいつの力が必要なんだ。それにスキルを暴発されて勇者に穴をあけられても面倒だ。


「ちょっとそれはまずいよね、マリー。いくらジュリが傷心で帰ってきてもそれはやり過ぎだよ」


 詠唱を終える前にランズマンを無力化しようとした時、予兆もなしにランズマンの背後にカティさんが現れ、ランズマンの口を手で押さえて詠唱を止めた。止まったのは良かったが、どうやって来たんだ? おそらく空間操作系統だろう。小さい頃は俺にはスキルのことを全く教えてくれなかったからな。そもそもスキルという存在自体、ジュリ姉とカティさんは俺に教えてくれなかった。たぶん闇の力を使わせないためなんだろう。


「ごめんね、オリヴァー。うちのリーダーがお邪魔をしていたみたいで。昨日の出来事を言ったらすぐにオリヴァーの家に行っちゃった。こうなることは分かっていたんだけどね」

「そう思っているのなら、そいつを鎖か何かでつないでおけ」

「それは無理な話だよ。そんなことをしても、無理をしてでも行くんだから」

「なら早くそいつを持って帰れ。そいつは迷惑という言葉を知らないようだから、それをついでに教えておけ」

「うーん、考えておくね。あ、それと、もしかしたらうっかり目を離してここに来るかもしれないけど、その時はごめんね」

「謝るくらいなら見ておけ」


 俺は終始きつめの口調でカティさんに話していた。そう話していたからかどうかは分からないが、またこの本能で動き出す我儘な赤ん坊を解き放つとほのめかしてきた。この人のことだから、ランズマンをこちらによこしてくるかもしれない。あれだな、こう考えたらランズマンは完全にカティさんのおもちゃになっている。こう考えれば、ランズマンが不埒に思えてきた。もう少し優しくしてやろう。


「じゃ、私たちは帰るから。また近いうちに会おうね」

「それは御免こうむりたい」


 カティさんは大人しくなったランズマンを抱きしめながら、また唐突に消えた。・・・ランズマンとジュリ姉、それにカティさんのパーティーか。二度と会いたくない最悪な組み合わせだ。特に最後が最悪だ。あいつらが王都から出るはずがないから、俺が出ていくことも考えないと・・・。あまり国には行かないようにして、まずは闇の結界に細工をして三人を入れないようにしよう。




「今日は良い買い物日和だね」

「そうでもないぞ。晴れていても日差しが暑いだけだ」


 今日、国に行かないと思ったのに、俺はリアと共にザイカへ買い物に来ていた。食料品や消耗品、そしてリアのご両親が欲しいと言っていた工具などを買いに来た。最初はリアのご両親が行くと言っていたが、いつも屋敷の手入れや食事の支度をしてもらっている二人にそんな負担はかけたくはなかったため、俺が行くことになった。カンナは珍しく俺と別行動をしてモモネとミユキとでどこかへと行くらしい。残ったリアと俺で買い物というわけだ。


「もぉ、そんな考えをしないでよ。もっと明るい考え方をしないと」

「そうだな・・・。だがな、俺にはこの世に隕石が降ってくるくらいしか明るいことが思いつかないんだ」

「それ明るいことじゃないよね、暗いことだよね?」

「それくらい暗い気分が俺の心を支配しているんだ。これから俺がある人たちに出会う未来しか見えない」

「どんだけその人たちと会うのが嫌なの・・・。買い物は私だけでも良いよ?」

「いや、そうはいかない。言ってしまったからには最後までやるつもりだ。それにリアを一人でやらせるわけにもいかないしな」

「・・・そ、そう。ありがとう」


 俺たちは二人で次々と色々なところへと回った。食料品と消耗品を買い集める際に、店側に嫌な顔はされたものの、ひどい値上げなどはなく定価で買えた。これも風の勇者であるリチャードソンのおかげなのだろうか。ハァ。全く、同じ勇者でも対極にあるな、風と炎の勇者たちは。一方は人を思いやって先のことを考える。かたや一方は人を思いやらずに我が道を行くだけ。同じ勇者とは思えない行動の違いだ。他が聞いたら絶対に自分のことを棚に上げていると言われそうだ。


 ・・・それよりも、何だこれは? どこからか見られている感覚は。気配の元をたどっても消えて、また気配がして見ても消えるを繰り返している。本当にそこにいたはずなのに、俺が見ようとするといなくなる。誰かのいたずらにしては随分と凝っているな。


「どうしたの?」

「・・・いや、違和感を覚えただけだ。気にするな」

「そう? ならいいけど。それよりも次は工具を買いに行こうか。お父さんの工具はもうボロボロだからね」

「あの人は物を大事にするから、ボロボロになるのはよほど使い込んでいるからだろうな」

「うん、そうだよ。確か三十年以上はずっと使っているって言ってた」

「よく使い込んでいる。リアのお父さんは大工だったか?」

「そう。うちは代々大工を生業にしているんだ」

「そんな人がこっちに来て良かったのか?」

「良いの。お父さんは身体にガタが来ていたから、やめる機会を探していたところにバトラーさんが来たんだからむしろ感謝していたよ。私もお父さんが身体を壊さないか心配していたから良かったと思っているから」

「そう言ってもらえると助かるな。・・・道具屋はここだな」


 話している内に道具屋の前にたどり着いた。ここには色々な小道具が売っており、工具もここに売ってある。俺とカンナが店内に入ると店主は嫌な顔をして、俺と接触しないようにするためか他の客のところへと行った。俺としては自分のペースで決めたいから好都合だ。


「どれが良いのかな? 高い奴が良いの?」

「それはどうかな。高くても装飾だけで値段を上げられているかもしれない」

「うーん、じゃあ店の人にでも聞く?」

「俺が聞きに行ってやろうか?」


 俺がそう言うと、店主が肩をびくつかせて俺から少しずつ距離を離している。俺が店主の反応を横目で見ていると、リアが店主と俺の間に入ってきて俺をいさめてきた。


「ダメだよ、人に意地悪しちゃ。そんなことをしてたら、買い物できる場所がなくなるよ?」

「俺はただ聞こうとしていただけだ。それの何が悪い。客の真っ当な権利だ」

「うん、それは普通のお客さんならね。でも、バトラーさんの場合は悪意を持っているからダメなんだよ」

「俺にそんな気はない。相手が勝手にそう感じているだけだ」

「そうやって屁理屈を言わないの。お店の人には聞かずに私たちで決めよう?」

「あぁ、分かった。そっちの方がやりやすい」


 俺たちは二人で色々と店内を見て回った。その中で素材が良いものと、リアの父親が使っている工具と似ているものを見繕う。似ているものの方が使い勝手が良いだろう。素材については、俺が今までの冒険の中で培ってきた知識を動員してこの中で良いものを探し出した。ただ、素材が良いものと値段が高いものがイコールになっていない。分からないから、これは≪鑑定≫スキルを取った方が良いのだろうか。


『名前:オリヴァー・バトラー

 種族:人間

 年齢:二十二

 職業:闇の帝王

 称号:闇夜深める帝王

 ≪スキル≫

 ≪闇ノ神の情愛≫・≪降臨の印≫・≪闇落ち≫・≪帝王従属≫・≪重力操作≫・≪言語共有≫・≪明鏡止水≫・≪六感強化Lv.10≫・≪防音≫・≪視界遮断≫・≪身体能力上昇Lv.10≫・≪潜在力感知≫・≪超速再生Lv.10≫・≪魔力察知≫・≪気配察知≫・≪気配遮断≫・≪気配追尾≫・≪気迫Lv.10≫・≪騎乗Lv.10≫・≪体術Lv.10≫・≪武装術Lv.10≫・≪魔力武装≫・≪魔力具現化≫・≪魔力纏身≫・≪魔力往来・弐≫・≪空間把握≫・≪魔力流動強化≫・≪魔力性質模倣・改≫・≪全物理耐性Lv.10≫・≪全属性耐性Lv.10≫・≪全物理反射Lv.10≫・≪全魔力反射Lv.10≫・≪背水の陣≫・≪採取Lv.10≫・≪調合Lv.10≫・≪錬成LV.10≫』

『オリヴァー・バトラー Lv.253

 筋力:370560(+100000)

 物理耐久力:367078(+100000)

 速力:391689(+100000)

 技術力:379500(+100000)

 魔法耐久力:369057(+100000)

 魔力:408744(+100000)』

『スキルスロット残数30』


 スキルスロットにはまだ余裕がある。これを機に習得するのも一つの手か。だがな、あまりそれにスロットを費やすと欲しいスキルが取れなくなる可能性がる。レベルが上がらなくなる可能性があるからな。


「そう言えば、バトラーさん」

「なんだ?」


 俺が少しだけステータスと話し合いをしていた時に、リアが小道具を手で触りながらこちらを見ずに話しかけてきた。俺はステータス画面を閉じてリアの方を見たが、未だにリアは俺の方を見ずに小道具の方を見ているだけであった。


「『聖光教団』にいた時に古い文献を見たんだけど、その中に書かれていた『勇者の深層心理神格化』って本当なの?」

「ふっ、かなり珍しい言葉を出してくる。おそらくだいぶ古い文献だろうな」

「うん、古かった。その文献を半信半疑で読んでいたけど、歴代の勇者の言動を考えたらあながち間違っていないと思い始めたんだ」

「その文献は何と書いていたんだ?」

「あまり正確には覚えていないけど大まかにはこうだった。・・・『勇者が選ばれる理由は分かっていない。神に性質が似ているから選ばれるのか、選ばれてから神に性質が近づくのかは分からない。ただ、ここでは後者として定めておこう。そして、もう一つ定めておかなければならないことがある。それは神の存在の有無である。誰一人として出会ったことがないが誰一人として神の存在を否定しない、正直歪だと言わざるを得ないが、私は世界の法則を具現化したものを神だと名付けておこう。この二つの前提を踏まえた上で私は勇者の性質についてこう考える。勇者は神と呼ばれる存在に自身の存在を近づけていっているのではないのか、と。そう考えれば、光の勇者と聖の勇者が二人とも毎回お人好しになることに合点がいく。他にも炎の勇者ならば大衆の正義を貫き、水の勇者ならば感情が乏しく、大地の勇者ならば図太くなるなど。勇者は神に選ばれた祝福のものではない、神に選ばれた神がこの地に威厳を示すための道具に過ぎない。神に愛されているなど笑い飛ばしてしまいたい』だったかな」

「長い。そしてよく覚えていたな」

「何回も読んでたから。・・・で、この文章って本当なの?」

「・・・正解じゃないのか。ただ、勇者の性質については大雑把すぎるから合っているとは言えない。俺も実際知っているわけじゃないからな」


 リアが言った文献に驚かされた。古い文献なのに、そこまでの考察を行えるものがいるとは。俺は勇者だからこそ知れたが、この感じだと勇者ではないものが書いた文献なのだろう。神に愛されているなど笑い飛ばしたい、は恨みがあるように聞こえるな。そう考えていると、リアが意を決して何かを言いだそうとしていたが、店内に入ってくる三人組に息が止まりそうになる。


「それなら、闇の勇者は――」

「あれ? オリヴァー? こんなところで奇遇だね」


 リアの言葉を遮って、カティさんがこちらに話しかけてきた。カティさんの後ろには長い髪で表情を少し隠しているが、隙間から目を赤くしているのが見えるジュリ姉と俺の方を睨みつけているランズマンがいた。話を遮られたリアは少しだけカティさんを鋭い眼差しで見るが、カティさんは気にせずにこちらに来た。


「オリヴァーたちは何を買いに来たの? 私たちも小道具を買いに来たから一緒に回ろうよ」

「今は私と買い物をしているので遠慮してください」


 リアはカティさんに対抗して、俺の腕に抱き着いてきてあきらめるように言う。だが、そんなことであきらめるようなカティさんではなく、カティさんはリアの足元から頭上までじっくりと見た後に、リアに近づき見下ろしている。


「ごめんね、私はオリヴァーに用事があるからどこかに行っててくれないかな?」

「何でですか? あなたに指図される筋合いはありません。私は今バト、オリヴァーさんとデートしているのですから邪魔しないでください。見て分かりませんか?」


 カティさんの威圧にひるまずに立ち向かうリア。カティさんの威圧にひるまないとは、こいつこんなにやるのか。と言うか、何故ここまでして対抗しているんだ。邪魔されたからか? それともカティさんの態度が気に入らなかったからか? どちらにしろ、この三人から離れたいのは事実。今はリアに加勢する。


「そうだな、リア。俺たちは今デート中なんだから邪魔されたくないな」

「本当に邪魔されたくないね。早く買い物を済ましてここから出よう?」


 俺はリアを抱き寄せ、リアも分かってくれたのか俺に身体をすり寄せて恋人であるかのように演じる。これでカティさんがどこかへと行ってくれれば良いのだが、そうはいかないよな。この人は狙った獲物は地の果てまで追いかけるからな。


「でもどれを選べばいいのか分からないんでしょ? なら私が選んであげるよ?」

「いや、もう決まっているから大丈夫だ」

「うそをつかなくていいでしょ? 分からずにずっと店内を見て回っていたのを知っているよ?」


 俺はその発言にカティさんの方をすぐに見た。そこには満面の笑みでこちらを見ているカティさんがいた。この人だったのか、俺たちをずっと見ていたのは。そして俺たちの動向を監視して俺と接触する機会を伺っていたのか? 最初はアルヌーの監視役が変わったのかと思ったが、それにしては下手過ぎると思ったが案の定違っていたか。


「随分と陰湿なことをしているんだな」

「何のことかな~? 私は偶然オリヴァーたちと出会っただけだよ?」

「それなら何故俺が見て回っていたことを知っている?」

「お、当たっていたんだ! こんな手に引っかかるなんてオリヴァーもまだまだだね」

「・・・フン、勝手に言ってろ」


 久しぶりにカティさんの気持ち悪い部分を見てしまったが、それを無視して見繕っていたそこそこの素材でできたものと、リアのお父さんと似ているものを選ぶ。あと色々な工具を手入れする小道具などを手にして店主の元へと向かいそれらを買った。俺とリアはカティさんたちの横を素通りして外へと出るが、カティさんたちも当たり前のようについてきた。俺は買った道具を容量拡張袋の中に入れて身軽にする。


「オリヴァーたちはこれからどうするの? 私たちは適当にぶらついていただけから、暇なんだよね。だから付いて行っても良い?」

「俺たちは二人の買い物を楽しんでいるんだ。だからお断りさせてもらおう」

「そう言わずにさ。お姉さんが買ってあげるよ」

「お金には困っていないから結構だ」

「ならおススメのお店を紹介してあげる。私たち結構詳しいから」

「別に俺は昨日今日でここに来ているわけではない。案内してもらわなくても問題ない」


 早くカティさんたちと離れたいと言うのに、中々解放してくれない。闇の魔力があふれ出しそうになった時の対策として≪明鏡止水≫があるものの、これは最終手段だ。これを使う前に他の手を打ち使うのを回避しなければならない。≪明鏡止水≫は、邪念を打ち払い集中力を上げるスキルだが、使い方を間違えれば闇の魔力を解放する手助けをしてしまう恐れがある。だから極力使わない。


「早く行こう? こんな人たちに構ってなくて」

「あぁ、構っていられない。行こうか」


 少しノリノリなリアの調子に合わせて俺たちはカティさんたちを無視して歩き出すが、後ろから三人が付いてきているのが分かる。どうにかしないと永遠と付いてきそうな感じがする、いや付いてくる。どうするものかと考えていると、屋台に売られている『レインボーリンゴ』が目に入った。このリンゴは普通のリンゴの木から生えてくるリンゴだが、極稀にしか出現しない。それ故に価値は高く、この世の三大美味の一つに入るくらいのおいしさも備わっている。


 何故今そのリンゴに目を行ってしまったかと言えば、それがジュリ姉とカティさんとの思い出だからだ。俺が闇の勇者として悩んでた時に、あのリンゴを食べればその色ゆえに聖なる力を宿すという言い伝えを信じて三人で探し回っていた。その時は遭難したり転げたり雨風に打たれて散々だったが、レインボーリンゴを見つけられた。結果は今の俺がいるように何も効果がなかった。だが、それがきっかけで今まで嫌いだった姉を素直に見れることができるようになったのは事実だ。


「あ、レインボーリンゴ」

「レインボーリンゴだ!」


 俺が数秒だけ足を止めると、その先にあるレインボーリンゴを見つけたジュリ姉が声を漏らす。そしてほぼ同時にカティさんもそのリンゴを見つける。最初に動き出したのはジュリ姉であった。ジュリ姉はすぐにレインボーリンゴを買いに行き、俺の顔色を伺いながら俺の元へと来た。


「これ・・・前に取ったことがあったよね?」

「・・・あぁ、そうだな。三人で取りに行ったな」

「ちゃんと覚えているの!?」


 その言葉で表情が明るくなるジュリ姉。正直このまま冷たく当たっていたかったが、いつもの自信満々の姿がこんな暗くなるのは見ていられなかった。こうしてしまえば、ジュリ姉との心の距離が離れずらくなるが今はそんなことを考えられなかった。結局、俺は非情になり切れない。こんなので彼女たちと離れるなんてできるのだろうか・・・。だが、いつかはしないといけないときは来る。


「あの時のことは今でも忘れられないなぁ。三人で探しに行ったものは良いものの、見つからずに遭難してオリヴァーは涙目になっていたよね」

「それはジュリ姉」

「それはジュリ」

「あれ? そうだっけ?」


 喜々として話しているジュリ姉が間違ったことを言っていたから、俺とカティさんが同時に間違いを訂正した。言葉が被ったからカティさんがこちらににやにやとしてこちらを見てくるが、俺は無表情で他を向いた。これが俺が今精一杯できる距離の離し方だ。


「また、三人で冒険に行けたら良いね」

「調子に乗るな。お前と冒険に行く気はない」


 少し俺との距離を縮めようとしてきたジュリ姉の鼻っ柱をへし折った。言われた本人はまた暗い表情へと戻って行った。これ以上馴れ馴れしくされるのはあまり良くない。だから線引きをいち早くしておかないとどこで線引きをすればいいか分からなくなる。


「あんた、またジュリをイジメてどういうつもり!?」


 お次は猛獣が俺にかみついてきた。本当にこのパーティーは曲者しかいない。・・・よく考えれば、ここまで炎の勇者として炎ノ神に染まっていないのは珍しいな。勇者は神の力を使わずには戦闘は行えず、少しくらいは炎ノ神に似てきても良いはずだが、こいつは正義のせの字もない我儘ぶりだ。もしかして相当凄い奴なのか?


「やっぱりこいつは死刑にしないと!」


 あぁ、ただの我儘姫だ。随分と悪逆非道な炎の勇者だ。これくらいのことで死刑とは考えられない。それにこれは姉弟の問題なのだから他人に口出しされる筋合いはない。


「おい、この猛獣をどこかに幽閉しておけと言ったはずだ」

「なっ、猛獣!?」

「だから私も言ったでしょ、どうやっても抜け出してくるって」

「カティまで!?」

「せめて首輪をつけて鎖をつなげておけ。どこにも行かないようにな。しつけがなっていないんだから繋げておかないと」

「つ、つなぐ・・・」

「一応この国の姫だから体裁を考えないといけないから。・・・でも、透明な鎖はできそうだから少し待っててね」

「で、できそうなの・・・?」


 俺とカティさんにより、意気消沈となったランズマンであるが、少しすると頭を振り思考を戻して俺を問い詰める形を取ってしまった。俺といる間はそのままでいて欲しかったんだが、仕方がないか。


「それよりも! 何でジュリにあんなことを言ったの!?」

「本心のままを言っただけだ。それ以外に何がある」

「そうじゃなくて、何でジュリと冒険に行きたくないかって聞いているの!」

「行きたくないから行きたくないと言っている。それ以外の理由がいるのか?」

「私が納得する理由を言いなさい。そうすればこの件は不問とするわ」

「俺には関係ない話だ」

「本当にそれでいいの? 私はこの国の王女で、権力を持っているのよ。あんたをこの国から追い出そうとするのは容易なことよ」

「俺を脅すのか、それは良い度胸をしている」

「あんたが話せば済む話でしょ? 早く話しなさいよ」


 こいつもタチが悪い。こんな唯我独尊な性格の王女をよく作り出したものだ。第一王女と第三王女は性格にそれほど難がないからこいつだけがやばい奴として育て上げられたんだな。第三王女を産み落として亡くなった女王もいたたまれないだろう。理由についてはこいつが納得して、なおかつ俺の本心と近いものを述べようか。


「俺はジュリ姉を信頼していないから、組むということはできないだろう。お互いの信頼関係がない状態で冒険なんてできたものではない。冒険するにしても、お互いがお互いの事情を理解しておかないといけないことが前提だ。そこを理解していない内は、俺が組む気はない」

「・・・ふーん。ならその事情って何?」

「俺がジュリ姉を嫌っていることだ。つまり、俺はまずジュリ姉と組む気がないということだ」

「結局それか! ・・・て言うか、本当にジュリを嫌っているの? 聞いた話だけだと蟠りがないように感じたけど?」

「こっちの話だ。お前には関係ない」

「ジュリは私の仲間なの。関係ないなんてことはないから。その蟠りが解けるように、もう一度ジュリと話してみて」


 ランズマンは俺の前にジュリ姉を押し出してきた。最初からこいつらがしたかったことは、俺とジュリ姉を話し合わせることなのか。ふぅ、これは≪明鏡止水≫を使い持っての方が良いかもしれない。少しだけ近くにいただけなのに、もう我慢の限界が来ている。ここまで『闇の帝王』に影響を受けるのか。


「あ、あのね、オリヴァー。私なりに考えてみたの。どこで私が間違ったんだろうって」

「あんたは間違っていない。ただ俺が生まれる場所を間違えただけだ」

「そこは間違っていない! 私の弟として生まれてきたことだけは否定させない! ・・・それで、私が間違ったこと、それは私が弟を一人の男として愛していたことだと思う。ううん、愛していたことより、愛していたことを隠しながら生きてきことだと思う」


 俺はジュリ姉のとんでも発言を黙って聞くことしかできなかった。彼女からその言葉を聞いて、少しだけ闇の魔力があふれ出しそうになっている。


「家のため、両親のため、領土に住む人々のために、この気持ちを隠さなければならないと思ってしまった。だから、弟をあんな腐った環境に住むことを強いてしまった。そのことを言葉にはできないけれど、そう感じていて、ようやく言葉にすることができた。・・・それで、これまでのことの贖罪、に近いかもしれないけれど私を側に置いてくれない? これからはオリヴァーだけを見るから」

「・・・家はどうした? 次期当主だろうが」

「家? 家は捨ててきた。あんな家が繁栄したところで良いことはない。捨てたと言っても、妹がいるから家は存続しているけれど、繁栄はしないだろうけれど」


 ・・・くそっ、ジュリ姉の言葉を聞くたびに俺の心がどんどんと蝕まれていく。


「お願い、オリヴァー。今度はハッキリとオリヴァーを見るから」


 ジュリ姉が俺の手を両手で包み込み、俺との距離を詰めていく。・・・あぁ、もう駄目だ。こいつを殺してやりたい。こいつの息の根を止めれば、どれだけの悲しみがあふれ出てくるだろうか。それを考えただけでもゾクゾク――


「さわるな!」


 するはずがない! 俺は素早くジュリ姉の手を振りほどいて距離を開ける。危ない、もう少しでジュリ姉を殺しに行こうとするところであった。これほどの闇に思考が支配されるのは初めてだ。ここまで明確な殺意を覚え、それを実行するまでになることはなかった。


「オリヴァーさん、もう行こう。すみません、今は頭の整理がつかないようなので後日にしてください」


 リアが三人に断りを入れながら俺の身体を引っ張って人通りが少ない路地裏へと連れて行ってくれた。そこで壁に寄りかかり、より深く深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。


「大丈夫?」

「・・・あぁ、大丈夫だ。助かった」

「その目の黒いもやは何か発動しているわけじゃないんだよね?」


 リアにそう言われて目とその周辺に闇の魔力があふれ出していることに気が付いた。身体に何も変化がないと思っていたが、腕以外の目に来るとは思わなかった。手で押さえていると闇の魔力は引いて行った。さっきよりかはだいぶましになってきた。


「さっきの話の続きをしても良い?」


 さっき、というのは、おそらく闇の勇者の神格化についてだろう。さすがにここまで来れば隠し通せないが俺の口から言うつもりはない。俺は黙ってリアの言葉に頷いた。


「闇の魔王とおそらく同じなんでしょう? 闇の勇者は、愛しきものを殺す」


 その言葉に俺はもう一度頷いた。

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