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始まりの鐘。前編

 少し遅くなりました。

 俺とモモネたちは服などを買うために少し別れることになった。俺といると足元を見られて売値を高くされる恐れがある。それなら三人で行った方がまだ何も起こらなさそうだから、夕刻を知らせる鐘が鳴る頃に冒険者ギルドの前で待ち合わせということにした。


 とは言え、俺の方で何かすることがあるのかと聞かれれば何もなく、何か手ごろなクエストを受けようかと思っているくらいだ。何かないかと歩き回っていると、街の色々な情報が書き出されている掲示板のとある情報が目に入った。


『王都・ザイカの西にあるコスルキの街にて、アンスロポスとアンチ・ヒューマンが衝突。両者負傷者多数。関係のない人々も負傷している模様』


 アンスロポスとアンチ・ヒューマンか。アンスロポスは人至上主義を掲げ魔人や亜人を蔑み、アンチ・ヒューマンはその逆である魔人や亜人を優遇し、人間を蔑んでいる相容れない存在同士だ。だから衝突はよくあることだが、これだけの規模でやっているのは初めてだな。何か引き金になったことがあるのかもしれない。


「・・・フン」


 掲示板を見ていると、誰だか分からないが俺を殺意を持って見ている奴がいる。そしてその視線の主と俺をまとめて監視している視線も。この国では俺に対して俺のことを悪意をはらませている視線を送ってくる奴はいるが、明確な殺意を送ってくる奴はいない。俺の実力を悪意を持ちながらもそれだけは知っているからな。と、言うことはこの国の人間ではない。少なくとも表の人間で俺を知らないものはいないと自負している。


 ここでそいつらに何故こちらを殺意を持って見ているのかと聞くことは、下手すればあらぬ疑いをかけられる恐れがあるから、人気のない場所に移動する。幸い、そいつは俺を執拗に追ってくれているから、どういうことか聞けそうだ。


 表の通りから裏の通りへと移動し、尾行している奴が俺の防音と視界遮断の壁を張れる範囲へと来たことと他に誰もいないことを確認すると、その場に止まり二つの壁を俺と尾行している輩を覆うように張る。


 そいつはようやく自身がばれていると気が付いたのか、すぐにそこから離れようとする。それを許す俺ではなく、屋根の上に立っていたローブで顔まで隠しているそいつの背後に立ち、問いかける。


「さっきから俺のことを追っていたようだが、俺のことがそんなに気になっていたのか?」

「ッ!?」


 ローブのそいつは俺がいきなり背後に現れたことに驚いたが、すぐにローブの下から剣を取り出して俺に斬りかかってくる。俺は魔力で作った剣で目の前の相手の剣を綺麗に切った。相手は折れた剣を捨ててローブの下から杖を取り出そうとしたが、俺が魔剣の峰で杖を弾き飛ばし態勢を崩し、相手の背後を再び取り相手が動けないように締め上げる。ローブで外見では分からなかったが身体を触れて気が付いた、こいつ女なのか。


 防音と視界遮断の壁はあまり広く使うと見え見えとなってしまうから、俺とこの女を最小限に覆えるくらいにとどめる。さらに≪気配遮断≫を共に使う。そうすればここがばれることはそうそうないだろう。ばれる可能性があるならば、こちらをずっと見ている輩だ。しかし、もう一方の視線の方を確認すると、虫型の使い魔であった。俺がここまでして仕掛けてこないということは放っておいて良いな。


「離せ! 悪魔に触れられると妊娠してしまう!」

「そうか、妊娠してしまうのか。それなら存分に孕むと良い。悪魔の子を孕む気分はどうだ?」


 俺はより一層拘束する力を強めて身体を密着させる。それに対して身動きが取れない女はプルプルと震えて十分に恥辱を受けているようだ。


「こんな辱めを受けるなどあってたまるか。やはり貴様は悪魔だな!」

「冗談はともかく、その口ぶりから言えば俺のことを知っているようだな。俺に何の用だ?」

「悪魔に話す口などない! 早く離せ!」

「この状況で威勢がいいのは良いことだが、もう一度聞くぞ、俺に何の用だ?」

「何度も言わせるな、悪魔に話すことなどない」


 女は自分の立場を分かっていないような態度で答える。それなら俺としてもやりたくはないが、やらざるを得ない。彼女が簡単に口を割ってくれれば、俺は何もせずに彼女を解放していたのだが・・・仕方がない。


「ひゃっ!? な、何をする!?」

「お前が素直に話していればこんなことをしなくて済んだんだが・・・仕方がないことだったんだ」

「仕方がないで胸を揉むなっ!!」


 俺はこれで話してくれると思い、女の手のひらサイズで収まる胸をまさぐる。これはエロい気分でやっているわけではない、拷問だ。こいつが話してくれればすぐにやめるつもりだし、これ以上の辱めを受けさせるつもりはない。少し欲求不満で触りたかったという理由は・・・半分くらいはあるがそれは良い。とにかく彼女が話してくれれば万事解決する話だ。


「どうだ? 話す気になったか?」

「ッ! ・・・だ、だれが・・・あくま、何かに、あっ・・・話すかっぁああっん!」

「そうか、それは残念だ。不本意だが、これから話してくれるまで揉みしだすか」

「卑怯だっっあ・・・あぁぁっん!?」

「卑怯はどちらだ。俺に用があるなら俺と面と向かって話せばよかったものを」

「はぁ・・・はぁ・・・悪魔に対して卑怯に行く必要などっんんっ!」


 胸を揉みしだしても、この女が喋ることはない。もうやるところまでやっても良いが、それだとあまりこいつとやっていることが変わらないな。いや、この時点でやっていることは完全に犯罪だ。


 それよりも、こいつのこの付与効果が目に見えて付いていると分かる特殊な紫色の布のローブをどこかで見たことがある。・・・どこだったか。街中で見たとかそういうレベルの見覚えのあるではなく、俺と直接面識があるやつが着ていた。・・・もう少しで思い出せそうだ。こいつをイジメていれば思い出せそうな気がする。


「ハァ、話してくれないのなら最終手段だ」

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・なにを・・・する気だ・・・」

「お前には凌辱に凌辱を重ねてもらおう。お前が崇拝する神に顔向けできないくらいのレベルでな」


 俺は過去最大級に下衆な顔をしているだろう。そして、拘束している女は俺の言葉に少しだけ身体を振るわせ始めた。お、効いているのか? もう少し脅してみようか。これは本当にやるつもりで言わないと相手の恐怖感を煽ることはできないだろう。


「まずは、お前を全裸にした後、身動きを取れなくしたお前の身体をくまなく嘗め回し、羞恥に悶えさせる。これはもれなくお前の恥部も含まれているぞ。そして十分にほぐれてきたらお前の恥部に俺の一物を無理やりねじ込む。嫌がっていようと関係ない。俺はここ最近欲求不満だったからたっぷりと出るだろう。それこそ、お前の腹がタプタプになり妊娠するまでずっとだ。悪魔の子を孕むなど死にたくなるほどだろう? しかし心配するな、俺の欲求が満たされれば解放してやろう、全裸で身動きが取れないままで。この国には男が女に飢えている場所があるからそこに放置していれば、お前の将来は子供生産機と化すだろう。もしも心優しいやつがいればすぐに解放されるが、解放されなければ・・・分かっているよな?」


 俺が思いついた凌辱を彼女の耳元で囁き続けていると、すごく身体を振るわせ始め、さっきまで揉まれていても抗っていたのに恐怖で抵抗しなくなり、足が何故か濡れていると思ったら彼女が失禁していた。俺は本気で実行するつもりで言ったのと≪気迫Lv.10≫と闇の力を使ったことにより効果が絶大だったようだ。


「あ・・・思い出した」


 イジメていたら本当に思い出してしまった。このローブは『聖光教団』のやつらが着ているものだ。『聖光教団』とは、東の王都・クシルで大きな権力を持っている教団。その思想は聖と光の神以外の神を信じず、二柱の神だけを信仰しているものたちだ。特に聖ノ神と光ノ神に相反している闇ノ神は毛嫌いしている。


 前に一度だけ『聖光教団』と自ら名乗り、同じローブを着ている奴が俺を殺そうとしてきた。その時は神の加護が何もない無法地帯のモンスターが出現する場所であったから、四肢を折って魔物のエサにしてやった。


 またこの俺、闇の帝王の命を狙いに来たのか? それにしてもこいつは尾行が下手過ぎるし実力も伴っていない、完全に下っ端的な位置にいると思うんだが、捨て駒か何かなのか? それか何かをしでかして監視下にいる厄介者か。


「さて、『聖光教団』の女。どうするか決めさせてやる。性奴隷となるか、素直に話すか、どちらにする? 言っておくが俺はやるぞ、それがどんなに倫理から外れていようが、お前が言うところの悪魔なんだからな」


 もう一度俺が耳元で静かに問いかけると、しばらく沈黙が流れた後、女は震える小さな声で話し始めた。


「わ、私は・・・お、お前の・・・監視を、していろと・・・言われた」

「監視? 誰に?」


 俺は話すことを選択してくれた彼女に、優しく聞き返す。ここできつく言っても怯えさせてしまうだけで欲しい情報が手に入らない。こういうのは交互に使い分けることで力を発揮する。


「わ、分からない・・・見知らぬ人だったが、偉い人だということは、分かった。・・・私が知らないだけかもしれない。・・・私は、最近『聖光教団』に、入ったばかりだから・・・」

「ほぉ、最近入ったのか。何故入ったんだ?」

「私は、クシルで生まれ育った。・・・入ることは当たり前だと、思っていたから」

「それなら幼い頃から入るものではないのか? 何故今の段階で?」

「・・・小さい頃では、ダメだったんだ。私の得意魔法が・・・・・・」


 彼女は得意魔法を言うところで言い淀んでいる。ローブを深くかぶっているが、チラリと見える目から俺への畏怖が感じ取れた。これは言わなくても分かる。


「あぁ、そこは飛ばしていいから続けてくれ」

「は、はい・・・その、得意魔法を封じるために、最近まで掛かっていた」


 確かに闇の魔法が得意魔法で、あの国に住んでいたら迫害されるのは目に見えている。だから彼女の両親は彼女がどうやって生きていけるのか考えた末、封印することで決着したのだろう。そして、そんな『聖光教団』歴が浅い彼女が、何故俺のことをそうまでして悪魔と憎しみを込めて言っているのかもわかった。俺と言うよりかは闇ノ神に憎んでいるんだろうな。


 これ以上彼女から話を聞き出すことは不可能だろう。そもそも彼女は本当に何も知らない下っ端だったんだ。彼女をこれ以上拘束していても時間の無駄と言うものだ。狙うとすれば、彼女と共にこの国に来ているかもしれない彼女に監視を命じた張本人もしくはその部下。


 俺は拘束を解き、彼女から数歩身を引く。


「ほら、もう行って良いぞ」

「え・・・い、良いの?」

「当たり前だろ、素直に話してくれたのだから」

「あ・・・良かった・・・てっきり話しても凌辱されるのかと思った」

「よし、お前が俺をどう思っているのかよく分かった」

「ち、違う! 敵に捕まった時はまず生きて帰れると思うなと最近教えられたんだ! だからこのまま人でなしになるのかと思った・・・」

「そうだな、ほとんどがそうだからそう覚えておいて間違いはないだろう。俺みたいに無事に返す奴なんてそうそういない。お前はスタイルが良かったから――」


 俺は彼女が男心をくすぐる身体つきをしていることを教えようと思ったら、急に強い風が吹き、彼女のローブがなびき隠していた顔があらわになった。


 長い黒髪を編み込んでおり、真っ黒な瞳がこちらをしっかりと捉えている。言葉遣いから男勝りなのかと思いきや可愛い系で、しかも捨て駒にするにはもったいないくらいの人材だと思ってしまった。


「・・・お前、何でローブで顔を隠していたんだ?」

「え・・・何で? ・・・私は整っていると思っているけど、他の人にあまりそういうことを言われなくて逆に可愛くないとか言われて自信がないというか、何と言うか・・・」

「それは間違っているぞ、お前は可愛いぞ。それもとびきりな」

「か、可愛い!? 本当に!?」

「あぁ、たぶん他の可愛くないとか言ったやつはお前の可愛さに嫉妬していたんだろう」

「そ、そう。・・・それなら、良かった」


 良くはない。監視対象にばれた挙句に褒められて嬉しそうにしているのは駄目だろう。それよりもこいつ、絶対に帰ったら素直に報告して罰を受けそうな感じだな。そもそも二重監視されている状況で嘘の報告などできない。それも『聖光教団』の罰ならなおさら危ない、死だけでは足らない。・・・ここまで関わってしまって痛い目にあうのは後味は悪い気がする。打開策があるとすれば、この空間が防音だということだ。しかも視界遮断が効いているから中で何が起こっているのか分からない。どんなにすごい諜報員だとしても使い魔の目なら見えないだろう。


「お前はこれからどうするんだ?」

「え、どうするって?」

「いや、監視を続けるのか、監視がばれたことを報告するか、だ」

「・・・・・・どうしよう。これ、私の監視が失敗したとしれれば、じょ、除名になるのかな?」


 今更青い顔をしている彼女。そして口調も男勝りの口調からおそらく普段の口調に戻っている。


「除名だけで済めばいいがな。お前が所属しているのは、あの『聖光教団』だからな」

「えッ!? 『聖光教団』が何かあるの!?」

「・・・お前、一応クシルで生まれ育ったんだよな? なら少しなら知っていても良いはずなんだがな、『聖光教団』の黒い噂を」

「いやぁ・・・私はクシルで生まれ育ったけど、その実は噂も来ない町はずれに住んでいたんだよね。だからそういう噂は全然耳に入ってこなかったの」

「そうか、なら脅しではないが俺が教えよう。曰く、神への信仰心に一片の疑問でも生じれば地下深くの牢獄へと投獄され疑問が生じないくらいに精神的に追い詰められる。曰く、裏切れば十字架に張り付けられ火あぶりに処された後その遺体を戒めにさらされる。曰く、仕事に失敗すれば四肢を折り、治し、折り、治しを繰り返し命が惜しくないような暗示をかけられる。曰く、親族までにも罪を背負わされる。などと色々な噂がある。どこからどこまでが本当のことかは分からないが、これらに近しいことが起こっていることは確かだ」


 俺の話を聞いていた彼女は、段々と顔面を青ざめさせて震え始め、座り込んだ。


「う、うそ・・・そ、そんなこと街にいた頃には全然聞いたことがない。それは本当なの!? 私をだまそうとしているだけなんじゃないの!?」

「仮にも組織として成り立ち信頼もある『聖光教団』の噂が、表で大っぴらにこんな噂が立っているわけがない。街中で噂されているとしても、これのほんの一部分だけだろう。俺の聞いた話は噂と言えるほどの抽象的なものではない、ほぼ確実だ。それと、お前を篭絡したところで『聖光教団』に影響があるとは思えないぞ、下っ端のお前を」

「な、なら、何であなたがそれを知っているの? クシル出身ではないあなたが」

「俺のお抱えの情報屋が色々なところから仕入れてくれているから、色々な伝手で色々な国の信憑性の高い情報を入手できている。この情報もその情報屋から手に入れた」


 この情報はお抱えの情報屋だけではなく、アルヌーからも手に入れた情報だ。アルヌーの方は王都・クシルでは商売がしにくいと、愚痴がてらに聞かされたものであるが。『聖光教団』のことは、裏の人間には知れ渡っていることなんだろう。


「ど、どうしよう・・・このまま帰ったら私死んじゃう。もしかしたらお父さんとお母さんにも危害が加えられるかもしれない・・・・・・私だけならまだいいけど、私の失敗で、お父さんとお母さんが・・・」

「両親が無事なら、お前は死んでもいいのか?」

「別に死にたくはない。でも・・・何の罪もない両親に私の業を背負わせるのはあまりにも親不孝だと思う。せめて私だけにしてほしい」

「実際に『聖光教団』に入っていないからわからないが、それはおそらく無理だろうな。俺という闇の帝王の案件であり、お前がそう望んでいる時点で罰は成立しない。・・・俺がこのままお前を気絶させて失敗しているところを見られでもすれば、最悪な場合親共々処刑されるか、それとも親を目の前で殺されるか。『聖光教団』という狂った集団が何をするかは分からない」


 俺が冷静に言い放つと、彼女の青ざめていた顔はもはや白くなっている。これから処刑台に向かう死刑囚みたいな顔だ。まぁ、実際今の状況はそうなんだけど。


「・・・・・・そう、なんだ。何とか私だけ罰を受けさせてもらえないかと頼み込んでみる。・・・今日は私の都合に付き合わせてごめんなさい。私は最初からあの三人と一緒にいるあなたを見て悪魔だと思ってなかったし、闇の力のことで恨んだりしていなかったから」


 この言葉は嘘ではない、だからおかしい。俺のことを殺意を持って見ていたのは紛れもない事実であった。それなのにこの憎んでいないという言葉は嘘ではないという矛盾。神をも騙すスキルの持ち主か、はたまた精神的に支配されて憎しみしか頭になかったか。前者ならこの感情も嘘かもしれない。・・・だが、これは後者の方だ。俺の感がそう言っている。


 とりあえず壁の外に出ようとしている彼女の手を引っ張って引き留める。このまま行かせて彼女をみすみす殺させる気はない。ここまで関わればとことん関わってやろう。


「・・・離して」

「お前、親御さんが死ななければ、どんな凌辱も受ける覚悟はあるか?」

「え? ・・・私だけで何とかなるなら、覚悟はあるけど・・・」

「俺の申し出を受けるなら両親は助けてやろう。だがな、お前にはお前が思っている以上の凌辱を受けてもらおう。さっきの俺が言っていた凌辱の比ではないぞ。お前が恥辱に耐えることができないほどにお前の自尊心をぐちゃぐちゃにしてやる。それを受ける覚悟はあるか?」

「え・・・そんなに?」

「受ける内容なんて受けてから確認すればいい。それよりも今は受けるか受けないかどちらかだ。お前が死ぬかご両親とお前が死ぬかどちらがいいかと聞いているんだ」


 戸惑っている彼女に、近づきながらせかすように少し声を大きくして早口で問いかける。俺の言葉にせかされた彼女は何度も大きく頷く。


「受ける、受けるから・・・キスしそうな距離に来ないで!」

「さっきそれよりもエロイことをしたじゃないか、今更何を。これからお前が受けることに比べれば造作もないぞ」

「したんじゃなくてされたの! 受けるんだから受ける内容を教えてよ!」

「その覚悟、しかと受け止めたぞ。俺の名はオリヴァー・バトラー。汝の名は?」

「え、私はリア、リア・ドカエ・・・じゃなくて、内容を教えてよ!」

「よし、リア。凌辱の果てにご両親が待っているぞ」

「凌辱の果てに親に合わせる顔なんてないよ!」

「さぁ、まずは生まれた姿を見せてもらおうか」

「ひっ、は、話を聞いて、というか、やっ、やめてぇぇぇっ! 服を脱がさないでっ!」




 濡れていた服を着替えローブを脱いだリアは自身の身体を俺の身体に密着させながらも、少し不機嫌な表情をして俺と街中を歩いていた。


「おい、見えていない位置とは言え、機嫌を直せ」

「フンだ。説明しない男の人なんて知りません・・・いきなり服を脱がすなんてナシでしょ」

「それは仕方がないだろ。長い時間あの中にいれば勘ぐられてしまう。勘ぐられたとしても、行為が長く続いたと言っていれば何も言われない。それにおもらしをして服を濡らしたのはどこの誰だ?」

「そ、それは言わないで! それにおもらししたのは怖かったんだから仕方がないよ・・・ねぇ、この方法で本当に上手くいくの?」


 俺の考えた方法はいたって簡単、リアがその身体を使って俺に取り入ったという設定だ。あの場では、音も光景も遮断されていたから、外からでは中で何が起こっていたか分からない。それに俺と仲睦まじく歩いていたら、こう説明しても納得するだろう。


「上手くいくだろう。あいつらは俺のことを闇ノ神の力を受けている悪魔と認識しているだけでそれ以外は何もわかっていない。俺がこういうことをしても何も疑問には思わない」

「あぁ・・・そうだね。私が『聖光教団』でバトラーさんの話を聞いたとき、何かをしたとかではなく、存在自体が悪とだけ言ってた」

「俺を本当にどうにかしたいのなら、俺を理解するところから始めないといけないだろ。武力では勝てないのだから」


 リアの身体を堪能しながら、俺たちは街中を歩き色々な出店を見て回っていた。まず最初におもらししたリアのために服を買い与えた。それからネックレスやブレスレットなどを見て回った。その道中で甘いものを食べたりと何やかんやでデートをしていた。


「凌辱されると思っていたけど・・・これって、で、デートだよね?」

「あぁ、そうだが? 悪魔とデートするなんて凌辱の極みだろ」

「確かに『聖光教団』の信者にとっては、屈辱だけど・・・」

「そういうことにしていないと、お前は上司に嘘をつけないぞ?」

「うーん、・・・確かにそうかも。て言うか、何だかんだ言って、バトラーさんは優しいよね。襲って来た私にここまでしてくれているんだから」

「人による。俺にずっと敵意むき出しなら、助ける気はないが、お前は操られていた節があるから助けたんだよ。俺の役に立つかもしれないからな」

「そうかな? 私なら敵意を見せられた相手に仲良くできないと思うけど・・・」

「俺の場合、幼い頃から敵意や憎悪を向けられていたから少しのことなら動じない」


 それに≪闇ノ神の情愛≫のおかげで敵味方の区別は的確にできている。それにしても、最近俺は人を疑うことを知らないやつによく会うな。ここいらで、一発極大の憎悪が来そうだ。


「俺のことより、お前自身のことで心配するべきだろう」

「私? 私のことならバトラーさんが考えてくれたおかげでどうにかなりそうだけど」

「そうじゃない、お前のその少し優しくされただけでコロッと言うことを聞いてしまうその性格についてだ。お前、少し人を信用しすぎだ」

「そうかな? ・・・信用する人は選別しているつもりだし、私の目は間違っていないと思う。バトラーさんが良い人というのは」

「顔合わせの時、悪魔と殺意を込めていた相手に言う言葉ではないと思うぞ」


 その時は洗脳されていたと思うから、あまりこいつの人柄について考察する情報にはなりえない。


「そ、その時は混乱していたからだよ! バトラーさん以外にされていたら死にたくなってた」

「そうか? それなら良いんだ」


 俺たちは当てはないが、見せつけるように街中を歩いていると、リアが不意に止まった。何かと思いリアの視線の先を見てみると、アクセサリーが売られている出店であった。


「あそこに行くか」


 リアは嬉しそうに頷き、アクセサリー店の前へと行くと、ここも他と変わらず、俺の顔を見るなり嫌な顔をむき出しにしている。それを気にせずに俺は色とりどりの宝石が付いているネックレスや指輪などのアクセサリーを見る。


「ほしいものがあるのか?」

「え、いや・・・私って、こういう綺麗な装飾品をつけることを『聖光教団』で禁止されていたから、憧れるなぁって思っただけ」


 そう言いながらもアクセサリーから目を離そうとしない。絶対にアクセサリーが欲しいんだろうな。しかし自分からは欲しいと言えない。面倒くさいことこの上ない。欲望を制限してまで、幸せを失ってまで神に仕える意味はどこにあるんだろうか。


「どれが良い? 俺が買おう」

「えッ!? いや良いよ! 『聖光教団』で禁止されているから!」

「分かっているのか? 今のお前は悪魔とデートして屈辱に耐えている『聖光教団』の一員なんだぞ? アクセサリーをつけることも『聖光教団』の教えに背く屈辱なんだ。良いから決めろ、これは命令だ」

「わ、分かった・・・く、くつじょくだぁー」


 俺の言うことに納得して、感情がこもっていない言葉を最後に付け足す。本当にこんなので彼女は上司に俺のことを言えるのだろうか。そもそも、彼女は『聖光教団』に入ること自体、合っていない。


「・・・うーん。どれが良いのかな?」

「自分が一目見て気に入ったもので良いだろう」

「何か、どれも綺麗で素敵だからどこもかしこも目移りしてしまう。・・・あ、バトラーさんが決めてよ」

「俺が? 別に構わないが、気に入らなかったからすぐに言えよ。俺のセンスはあまり良くないからな」

「うん、分かった」


 頼まれたが、正直俺に言われてもどうしようもない。しかし長くなりそうだから俺が決めた方が良いとその瞬間思ってしまった。しかしよく考えたら俺は戦い以外ほぼ何もしていないつまらない人間だ。これを決めるのは至難の業と言える。・・・これは適当、いや適切に選ぶか。


 アクセサリーを一つ一つじっくりと見ていき、どれがリアに合うかを感覚で精査していく。じっくりと見ていく中で、一つのアクセサリーが目に入った。銀色の丸い宝石に鳥の両翼が付いているネックレスであった。特に理由はないが、何となくこれが良いと思った。


「これはどうだ?」

「この鳥の翼が付いているネックレス? ・・・・・・うん、良いと思う」

「そうか。なら、これをくれ」


 じっくりと見た後、そう言ってくれて良かった。俺はネックレスの代金を払い、ネックレスを手に入れる。そのままリアに渡そうとしたが、何故だか照れており何かを言いたげな顔をしながら上目遣いでこちらを見てくる。


「どうした? このネックレスは不服だったか?」

「ううん! そうじゃなくて・・・えっと・・・その・・・バトラーさんがつけてくれない?」

「俺が?」


 リアは頷いて俺に背を向けて、うなじを見せるように髪をかきあげる。俺が断る理由もないからリアの後ろに立ってネックレスをつけてやる。


「できたぞ、これで良いのか?」

「うん! ・・・ありがとう」


 ネックレスを嬉しそうに触ったり見たりしているリアを見ると、こっちまでも嬉しくなる。モモネたちでもそうであったが、こうして人に何かをして喜ばれるということはこみあげてくるものがある。特に他人から悪くないのに憎悪を向けられ続けている俺は、こういう人との暖かい関係に慣れていない節があるから嬉しさは倍増する。・・・ただ、これは一時のことである。かみしめてはいけない、ただ光景として記憶するだけしか許されない。


「あれ? オリヴァー?」


 リアがさっきより強く俺の腕に抱き着いて歩き出そうとした時に、後ろから聞き覚えのある声がかけられた。振り向くと思った通り、モモネの姿があった。別れた時の姿ではなく、きちんと新たに買った付与効果があるローブを着ている。


「買い物はもう終わったのか? それにミユキとカンナは一緒じゃないのか?」

「ミユキとカンナの三人で服とか必需品を買ったけど、ミユキは一人で色々なものを食べに行って、カンナは何か用事があるようだったから別れた。あたしはすることもないし一人でぶらぶらしてた。・・・それよりも、誰?」


 モモネは俺に抱き着いているリアを鋭い眼光で見ながら問いただしてくる。しかし、リアは気にするそぶりもせずに答える。


「私はバトラーさんの愛人。そういうあなたもバトラーさんの愛人なの?」

「あ、愛人!? どういうことだし、オリヴァー!」

「どういうもこういうもない。そのままの意味だ」


 リアに抱き着かれている腕を解放させて、リアを抱き寄せる。俺と愛人であるということを周りに誤認させないといけないため、リアも俺の身体に目いっぱい寄せてくるが、慣れていないからかその顔は真っ赤になっている。そして、それを見たモモネは怒りの血相で身体を震えさせている。


「信じらんない・・・あたしたちがいるのに、愛人? どんだけ女を弄べば気が済むわけ・・・?」

「別に俺とお前らはそういう関係ではないだろう? それとも、男女の仲だと錯覚していたのか? 肉体関係もなく、ただレベル上げを手伝った人間に」

「仲良くなったという自覚はあるし。それこそ、男女の仲になるほどには」

「悪いな。俺はそんな簡単に攻略されない。あいにくと人間関係で嫌と言うほど人間の醜悪な部分を見ているから、そう簡単に人間と仲良くなれないし俺と男女の仲になれるわけがない」


 醜悪な部分を嫌と言うほど見た来たというのは本当だが、俺にはそれを看破するスキルがある。だから良い奴なら簡単に仲良くなれる。そう簡単にいないが、モモネたちはそれに当てはまるな。もちろん隣のリアもだ。


「一か月間、ずっと一緒にいたあたしたちでも信用できないん?」

「そうだな、一か月くらいで俺は信用できない。前提として俺が信用できる人間なんてこの世界にただ一人としていないが」

「じゃあ、あたしたちに親切にしてくれたのはどういうことなの? 信用できない人間にそんなことをしたわけ?」

「ただの気まぐれだ。悪い奴だと分かればすぐに魔物のエサにしていたところだ」


 ちょうど良い機会だ。俺との距離をここら辺で離しておくことも良いかもしれない。どの道、俺にはその道しか残っていないんだ。遅かれ早かれ俺はこれ以上仲良くすることを許されてない。


「そもそも、俺がお前らに仲良くすること自体、よく考えればおかしなことだったんだ。お金はお前らに全部渡して、これからのことをよく自分たちで考えて――」

「ああぁっ!!! うるさいしっ!!」


 俺がモモネたちと離れる理由を言い続けようとしたら、モモネが急に癇癪を起した。そしてリアとは反対側の腕に無理やり抱き着き、足も絡めてがっちりと俺に絡んできた。


「あんたがどんなことを言ってきても関係ないし! あたしはオリヴァーと一緒にいる、ただそれだけ! あんたがどんなに離れたくてもずっと一緒にいてやるんだから! あたしを助けたことを後悔させてやるくらいにつけまわしてやるから! それにそこの女と本当にどんな関係か知らないけど、あたしはそれくらいで引く女じゃないし、どうせオリヴァーと今日くらいに会った、男も知らない女なんじゃないの? 抱き着いたくらいで顔を赤くしているくらいなんだから。それくらいの女よりあたしの方が良いに決まってるし!」


 怒涛の勢いで喋るモモネに少し驚いてしまったが、何故か俺の思惑とは別の方向に行っている。距離を取ろうとしているはずが、逆に距離を詰められてしまった。それに俺とリアの関係を当ててしまうとは、女のカンというやつなのか、これが。


「それくらいの女って言うけど、男に触れても動じない男慣れしている穢れた女よりかは良いと思うけど? そんな男の垢まみれの身体でバトラーさんに触れないで」

「は? 何、喧嘩売ってんの?」

「売ってきたのはあなたでしょ?」


 そして、何故だか俺を間においてモモネとリアが険悪な雰囲気になっている。ついでに二人が俺の身体を自分の方へと引っ張っているから、俺を取り合っている図になっている。正直やめてほしい、物理的に痛いとかそういうことではなく、周りの目を考えてほしい。


「おい、闇落ちの勇者が二股していたことがばれたらしいぞ」

「それに闇の勇者を取り合っている」

「いや、あれは殺しにかかっているのかもしれない」

「あんな可愛い娘たちを二股かけるとかどんだけだよ・・・」

「きっと弱みを握られていたんだわ。闇落ちの勇者に自分から近づく女なんていないんだから・・・かわいそうに」


 ハァ、俺の噂がどんどんと酷くなっているような気がする。俺は別に気にしていないが、これを聞いたアルヌーとか情報屋からのいじりが面倒だ。根の葉もない噂なら適当にあしらえるが、根がある噂は質が悪い。もっとも葉の方は俺の知らぬものへとなっているが。とりあえず、二人を大人しくさせるか。




 日が傾き始め、待ち合わせ場所であるクエスト受付ギルドへと歩いていた、俺に密着して離れようとしない二人を連れて。正直歩きにくいが、二人の身体つきに免じて文句を言わずに歩いている。この二人は意地を張っているのだろう、女としての。リアは俺に密着して上司を勘違いさせないといけなく、モモネは俺という便利な道具を手放したくないのだろう。間違えても俺に好意を抱いているなんて言わない。


「あ、オリヴァーさ~ん!」


 道中で灰色を基調にしている新たな鎧を装備して、盾と剣を背負っているミユキが食べ物を腕いっぱいに抱えながらこちらに走ってきた。モモネから買い食いしているとは聞いたが、あれからずっと買い食いをしていたのか?


「ミユキ、あんたまだ食べてたの?」

「え・・・う、ううん。こ、これから食べるところだよ~」


 モモネが鋭い眼光でそう問いただすように言うと、ミユキはあからさまに様子をおかしくしながら答えた。それに対して鋭い眼光をより強めて無言の圧をミユキにかける。


「うっ・・・ず、ずっと食べてました」

「あんた、太るよ?」

「だ、だって~! 久しぶりにおいしいものを食べるから止まらなくて~!」


 そう言いながらミユキは腕の食べ物を器用に口に運んでいる。言われてもなお食べ続けるとは結構な重症だ。一か月間の過酷な生活に、元の平和な世界で生きていたミユキには厳しかったか。しかし、モモネとカンナはそうでもないから、ミユキだけ甘えているのかもしれない。いや、普通にモモネとカンナの適応速度が速いだけだ。


「モフモフ・・・ッグ。で、そちらの女性は誰ですか?」


 抱えられていた食べ物をすぐさま食べたミユキは、先ほどのモモネの対応とは違い普通の対応でリアのことを尋ねてきた。そもそもモモネの対応が異常過ぎたんだ。


「私? 私はバトラーさんの愛人のリアだよ」

「へぇー、そうなんですね。じゃあオリヴァーさんの愛人は二人目ってことですか。あ、私はミユキって言います」

「よく分からないけど、愛人! なの」

「やっぱりオリヴァーさんはモテるんですね~。でも一番目はカンナで、二番目がモモネですから気を付けてくださいね」

「う、うん? ・・・うん、私はバトラーさんの愛人なら何番目とかは気にしないから大丈夫」


 ・・・・・・ん? 何か普通に会話をしてそのまま進めようとしたが、何でリアの愛人発言にミユキは突っ込まずに話を進めているんだよ。


「おい、一番目がカンナで二番目がモモネとかどういうことだ? 俺はそんなもの了承した覚えはないんだが?」

「またまた~、そんなに隠すことじゃないじゃないですか」

「いや、大真面目なんだが・・・」

「・・・えぇ!? そ、そうなんですか!? 私はてっきりもうカンナとモモネとできているのかと思っていました・・・」

「どこからその話の根拠が出ているんだ?」

「え、前にオリヴァーさんが言っていたじゃないですか。私が恋人とかいるのかって聞いたら今はいないって言っていましたよ」

「・・・あぁ、確かにそんなことを言ったが、その話のどこから愛人の話になるんだ?」

「それこそ、またまた~ですよ。私は見ていたんですよ。カンナと夜に寄り添っていたり、モモネと抱き合っていたのも見たんですから~」


 ・・・そう言えばそんなことをしたが、それで愛人認定をされてはカンナとモモネに迷惑だろう。嫌ってはいないにしろ、好きという感情には決してならないはずだ。


「それは誤解だ。モモネとカンナが人肌寂しくしていただけだからそうしていただけで、愛人の事実は一切ない。俺と二人は信頼関係があっても恋愛感情はないと断言できる」

「えぇ? そうですか? 恋愛感情がない人に人肌寂しいからと寄り添ってくるとは思えませんけど」

「そこはどうでも良いだろう。それよりもそろそろで集合場所に行くぞ」


 俺は無理やり話を打ち切って歩き始める。あまりそういう正の感情についての話は得意ではないから早めに打ち切りたかった。俺に恋愛感情など天地がひっくり返った時にしかありえない。




 俺たちは冒険者ギルドの前へとたどり着き、揃っていないカンナを待っていた。あと少しで夕刻を知らせる鐘が鳴る頃。俺を除いた三人は自己紹介を普通にした後、何気に仲良くなっている。リアは自分が俺を狙っている敵の監視役ということを完全に忘れている。まぁ、そこは別に構わない。敵により近づいて警戒心を解いたとでも言っていれば何も言われないだろう。


 今後の俺の行動について暮れている空を見ながら適当に考えていると、こちらに少しだけ殺意を向けている奴がいるのに気が付き、すぐに戦闘態勢に入ってそちらを見る。


「あ」

「なんだ、カンナか。あまり殺気を向けてこちらに来るな。俺はそういう視線には敏感なんでな」

「あ、うん。ごめんなさい」


 速度重視ではあるが、大事なところを守っている防具を装備している暗い顔のカンナがそこにいた。カンナと分かったから戦闘態勢を解いた。カンナが何故俺に対して殺気を放っているのかは謎だが、さっきもモモネがリアの件で殺気を放っていた。それと同じだろうと思い、戦闘態勢を完全に解く。


「さて、時間は少し早いが、俺の家へと行くか」

「オリヴァー、家持ってたん?」

「あぁ、持ってる。この国で泊まろうと思えば、門前払いか値を跳ね上げられるからな。それなら気分を害さずに泊まれる家を買った方が良いと思ったんだ」

「へぇ、オリヴァーってここの国の人間じゃないんだ」

「まぁな。それよりも行くぞ」


 俺が先導して国の端にある俺の家へと行こうとした。しかし、俺への明確な殺気が俺のすぐ後ろから発せられ、すぐに戦闘態勢へと入ろうとしたが、間に合わず、俺の背中から体内へと異物が入ってくる感覚を鮮明に感じ、異物は俺の腹から突き抜けた。腹から突き出ているのは付与効果が付いてあるように見える剣であった。


 振り返ると、俺の背後で剣を俺に突き刺しているカンナの姿があった。カンナは刺したにも関わらずひどく動揺しているように見える。・・・しかし、まさかここで裏切られて後ろから刺されるとは。だが、どうやらカンナにも事情があるようだ。


「・・・ごめん、なさい」


 カンナのそのか弱い言葉をかき消すかのように、夕刻を知らせる鐘が鳴り響いた。

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