オリヴァーと転移乙女たち。中編
こもっちです。題名がうまく決められずに何度か題名を変えていましたが、今ので大体定まりました。
良ければ読んでいってください。
俺たちは王都から東にある平原で多種のモンスターと遭遇している。今は、硬さだけ言えばランクAにも劣らない甲羅を持ったカメ型の巨体のモンスター、メタートルとカンナと共に戦っている。俺は一撃でメタートルの甲羅を砕き急所を露にし、メタートルの体勢を崩す。
「カンナ!」
「はぁっ!」
その瞬間俺の後ろにいたカンナに向けて合図を送り、俺のスキル≪魔力武装≫とさっき習得した≪魔力具現化≫で作った剣を持ったカンナがメタートルの下に潜り込み、メタートルの心臓に剣を突き立てる。俺はすぐにメタートルの下敷きにならないようにカンナを抱きかかえてその場を離れる。メタートルはその場に倒れ動かなくなった。
「今のはいい感じだったぞ」
「ありがと。あ、レベル10になった」
「三体目でレベル10か。まぁまぁだな」
王都に帰る道中、少しだけ寄り道をして、レベルを上げるべくランクBの敵を狩っていた。今のメタートルもランクBのモンスターだ。ランクFでレベル1の彼女たちと俺が倒せば、一気にレベルが上がるのは確かだ。それに戦い方を学ばせないといけない。まぁ、それは自分で模索するとかスキルが発現するとかあるかもしれないからこうしろとか言えない。
今日、初めてモンスターと遭遇した時は恐怖や驚き、それに単純に剣などの技術不足で戦い方が危うかったが、今は何とかモンスターを殺せる程度には成長している。
「さて、次はミユキだな」
「はい! 頑張ります!」
腕を丸々隠せるほどの盾を装備している、三人の中で唯一まともな装備をしていたミユキ。ミユキに盾と合わせるように少し長い剣を渡している。盾と腕の間に剣を納めれるように盾を新調してやり、それも渡している。ミユキは他の二人と違い、魔法などを気にしなくても良いステータス的にも性格的にも前衛向きだ。それを彼女自身も最初から理解しているからありがたい。
「あ、何か鳥が飛んでますよ?」
「・・・あれは、確か『プテランド』」
上空から大きな羽に大きなくちばしが特徴的な紫色の鳥がこちらの様子を伺っている。
「プテランドはそれなりに早く飛ぶ生物だが、風魔法と大地魔法を使う鳥だ。ランクはBBだったか」
「BB・・・私にできますか?」
「できるだろ、俺がいるからな。合図したらしっかりとトドメをさしに行け。俺はトドメをさせる時しか合図をしないから、安心しろ」
「・・・はい、分かりました」
少し落ち着いた感じでミユキは戦いに臨む。俺は≪魔力武装≫で槍を作り出し、まずプテランドの体をすれすれに通るような軌道で槍を飛ばす。当然プテランドには当たらなかったが、プテランドは挑発と見てすぐにスピードをつけてこちらに突撃してくる。距離が良い程度になった瞬間を狙い、俺は槍を両手に持ち、二本の槍を同時に投げる。二槍はプテランドの両羽に当たり、勢いが殺されたプテランドはちょうど俺たちの前に来るような場所に落ちようとしている。
「ミユキ!」
「はいっ!」
プテランドは地面には落ちているが、威力をまだ殺し切れていないため地面を滑っている。そのタイミングで俺は合図を出した。ミユキは俺の意図に気が付いたのか、威力を殺し切れていないプテランドを盾で受け止めて、その首を長剣で切り落とした。
「ふぅ・・・あ、レベルが11になった!」
「今ので11か。それなりに上がるな。さっきの盾で受けたのは、よく逃げなかった。良かったぞ」
「本当ですか!? ありがとうございます」
最初はレベルが上がりやすいから、達成感が出ているだろう。
「次はモモネだな」
「分ってるし」
カンナ・ミユキ・モモネの順にレベルを上げている。一人一体ずつモンスターを倒して行っており、今は三週目だ。それぞれのレベルはカンナが10、ミユキが11、そしてモモネが7となっている。
「二個目の魔法詠唱は大丈夫だな?」
「当たり前!」
カンナとミユキは接近戦を主体としているが、モモネはその魔力の高いステータス上、接近戦ではなく魔法を主体とした戦闘方針を取っている。モモネには魔法の才能もあったことから、一週目と二週目は魔法でモンスターを倒した。
「さて、次は・・・ん?」
どのモンスターにしようか探していると、少し遠くからこちらに集団で来ているモンスターたちを発見した。視力を強化してそっちを見ると、手足が短いが全長が長いトカゲのような表面と目を持っている『アイグアナ』だった。
「ちょうどこっちに来ている『アイグアナ』しよう」
「あ、アイグアナ? 何それ?」
「集団で行動しているトカゲを大きくした姿をしているモンスターだ。その視力の良さからそう呼ばれている」
「へぇ・・・この距離からでも見えるわけ?」
「あぁ、こっちに狙いを定めて約100体の集団がこちらに来ているぞ」
「・・・そのモンスターのランクって、どんくらいなん?」
「『アイグアナ』は個体だとBランクだったが、集団で行動する習性からAランクに該当するな」
「・・・それって、かなりまずくない? あたしの魔法で倒せるの?」
「今の魔力はいくつだ?」
「413」
413か。Aランクを魔法で倒すのなら、魔力は少なくとも1000は欲しいところだ。
俺はステータス画面からスキル一覧を開き、その中から魔力を受け渡しできるスキルがないか探す。このスキル一覧は欲しいスキルがどういうものかと思い浮かべるだけで、そのスキルだけが表示される。そして表示されたスキルは≪魔力付与≫というものであった。
『≪魔力付与≫・・・自身の魔力を人や物に付与することができる。魔力量は自由に操作できる。ただ、その器に見合った魔力量でなければ器は壊れてしまう。消費スキルスロット1』
この説明を見れば、俺が魔力量を調整しないといけないということになる。微調整をしていては、アイグアナの集団が来てしまう。これをすぐに操作できるスキルは何かないか?
『≪潜在力感知≫・・・半径100mの範囲にいる人や物の潜在力を測る。消費スキルスロット1』
『≪神眼≫・・・見たいものをすべて見ることができる。消費スキルスロット30』
・・・≪神眼≫はやめた方が良いな。今は必要ないし、30も消費するのなら消費スキルスロット1の≪潜在力感知≫の方がまだ良いか。
「アイグアナが来てるよ!」
カンナの言葉に、すぐに≪魔力付与≫と≪潜在力感知≫を習得し、モモネの肩に手を乗せる。乗せた拍子にモモネの潜在力を確認すると、魔力を10000も送れることが分かった。これなら十分にアイグアナを倒せなおかつ、これほどの潜在力があるとは驚きだ。
「今からモモネに魔力を送る。俺の魔力分を上乗せと上級魔法を放てば倒せる。良いな?」
「上級魔法? ・・・うん、分かった」
視力強化をしなくても見える範囲にいるアイグアナを前に、モモネは目を閉じ、魔法詠唱を唱える態勢に入る。それに乗じて俺はモモネに魔力をジワジワと送る。最初は何ともなかったモモネが少しすると顔を赤くして吐息を荒くしていた。
「っ! なに、これ。身体が、熱い」
「俺が潜在力ギリギリの魔力を送っているからな。それよりも今から魔法を唱えないと間に合わなくなるぞ」
「分ってるし! 後で覚えときな!」
俺の方を赤くしている顔で睨めつけてきても、何も怖くない。むしろ強気な女が恥辱にまみれた顔をしているともっとイジメたくなる。
「『正義の炎よ、我が呼び声に応えよ! 罪人の業を煮やす炎をその手に受けることを許したまえ。されば罪人は渦巻く炎の牢獄に囚われ、極熱の炎により一切を天上へと帰す』。『フレイム・クライシス!』」
アイグアナの群れを覆う渦巻く炎が現れ、中にいるアイグアナを逃げられないようにして外から焼き尽くしている。これは上級魔法の『フレイム・クライシス』。俺が念のためにと教えていた上級魔法だ。炎は離れていてもその熱さを感じさせるほどの火力であり、アイグアナの群れを一瞬にして燃やし尽くしてすべてを灰にしていた。上級魔法ということもあるだろうし、俺の魔力も相まっているのもあるだろうが、そもそもこの魔法は本来こんな威力を発揮しないはずだ。変な方法で魔法が発動してしまったようだ。
「す、すご――」
モモネは炎の威力の感想を言い終える前に、後ろに倒れそうになった。しかし、俺はそれをしっかりと受け止めて倒れることを防いだ。
「「モモネ!?」」
二人が意識がないモモネの元へと駆け寄ってきた。
「大丈夫だ。魔力を使いすぎて意識を失っただけだ。モモネには申し訳ないが、時間がもったいない。このままここで寝かせて、次に行くぞ」
俺は容量拡張袋から枕を出し、モモネを地面に寝かせる。ミユキはモモネのことが心配なのか、それに異を唱えようとしてきた。
「で、でも・・・」
「お前らが心配したところで、モモネは魔力を回復するまでしばらく起きない。それよりもレベルを上げて今後何があっても対処できる力を身に着けるほうが先だろう。良いな?」
「分かった、続きを始める。次は私から」
「はい・・・分かりました」
カンナは俺の意見に何も文句はないようだが、ミユキはモモネのことが余程心配なようだったが、文句はなさそうだった。
「よし、次を始めるぞ」
ぶっ通しで戦い続けること数十時間後、すでに日は落ち俺たちはまた夜営をしていた。俺とカンナとミユキで今後のことについて少し会話していたが、その最中、モモネが目を覚ます声が聞こえた。
「う・・・ん」
「起きたか?」
「・・・ここ、どこ? なんであたし・・・」
「ここはまだ平原で、魔力切れで眠っていたんだ」
あれから結局モモネは起きることはなく、今起きた。ようやく魔力が全開になったんだろう。
「大丈夫、モモネ?」
「どこも何ともない?」
「うん・・・大丈夫。少し怠いくらい」
ミユキがモモネに『アマスギルン』を煮だしたハーブティを渡して一息つかせる。
「ふぅ、美味しい・・・・・・それよりも、あの魔法かなり疲れる。て言うか、上級魔法ってどれもあんなに消費するものなの?」
「いや、それはない。そもそもあの魔法はあんな威力じゃないしな」
「どういうこと?」
「あれは魔法を放つ時に無意識に俺が付与した魔力を無理に吐き出そうとしたから、自身の魔力も根こそぎ吐き切ってしまったんだ。その結果、あんな炎の威力となり、気絶することになったんだろうな」
「そういうこと・・・気絶なんて初めてした」
「魔力保有量を超える魔力消費魔法を使おうとすれば、さっきみたいに気絶するか発動しないかのどちらかだ。覚えておくといい」
「ん、分かった。・・・あ、二人はどれくらいレベルが上がったん?」
やはりそこが気になるのか、モモネは二人のレベルを聞いている。
「私はレベル32。頑張った」
「私はレベル28だよ」
カンナとミユキのレベルは駆け出し冒険者が一日で到底上げれないレベルへとなっていた。目標のレベルは特になく戦い続け、できる限りレベルを上げることを念頭に置いていた。最低限Bランク以上のステータス値へとなればいいと思っていた。
「そんなに上がったんだ」
「お前はどうなんだ、モモネ」
俺の言葉にモモネは自身のステータスを見るが、ステータスを見て驚いている。
「えっ!? どういうこと?」
「どうした? 頭がおかしくなってステータスが出せなくなったか?」
「そんなわけないじゃん! 馬鹿にしすぎだし! ・・・それよりこれ見て!」
「見れないぞ。やっぱりおかしくなったか?」
「あぁっ! 人を逆なでするようなことを言うなし!」
「悪かった。どうしたんだ?」
「ゴホン、それより、あたしのレベルが34になってるの!」
驚いていたのはそのことか。別に大したことではなかった。
「今ので34か。だいぶ上がっているとは思ったが、それくらいか」
「え・・・何でそんな知っている風な感じなん?」
「知ってて当たり前だろ。お前は俺の魔力を借りたとは言え、100体ものBランクモンスターを倒したんだぞ? それくらい上がっていても不思議ではない。今日はあれだけ倒しておけば十分だろう」
「そっか、そうだよね。集団でAランクって言ってたんだから、それくらい上がるか」
彼女は納得しているようだが、そんなことで1日で30付近まで上がることなんてない。俺とパーティを組んでいるということもあるかもしれない。通常、手助けした人にも経験値は行くし、レベルが高い奴の方に経験値が多く行く。だから俺たちのやり方を他のパーティがやってもレベルアップの効率は悪い。俺の場合は、≪闇ノ神の情愛≫のおかげで経験値が一切俺に入らないことで、彼女たちにすべて経験値が行く。だから俺と組んでいけば経験値がごっそり得られるわけだ。だがそれを鑑みてもこれは異常だ。彼女たちの初期ステータスもそうだが、レベルの上がり方も普通じゃない。これは相当やばい奴等を異世界転移させて来たんじゃないかと思っている。
「さっき二人に聞こうとしたが、全員のステータスを聞いても良いか?」
彼女たちは俺の言葉を素直に聞いて各々のステータスを言ってくれた。
『モモネ Lv.34
筋力:533
物理耐久力:1108
速力:989
技術力:6750
魔法耐久力:3789
魔力:9500』
『カンナ Lv.32
筋力:3700
物理耐久力:3575
速力:3998
技術力:4095
魔法耐久力:3305
魔力:3880』
『ミユキ Lv.28
筋力:6370
物理耐久力:7500
速力:2357
技術力:4077
魔法耐久力:6989
魔力:309』
3人のステータスを聞いて、飛びぬけていた俺でも少し驚いてしまったと同時に俺と同じやつがいると親近感がわいた。俺がレベル30の時は全部10000は越えていたか。レベル30の時、称号が≪闇の王≫だっけか。≪闇の王≫はステータス値+50000だったから、総合で60000か。
「これってすごいの?」
モモネがふとした疑問をぶつけてくる。
「あぁ、一般的に言えばすごいことだ。お前らのレベルでそのステータス値は基本的にありえないからな」
「ふぅん。あたしたちのステータス値でのランクはどの辺なん?」
「1000からBランクだから、Bは行っている。だが、大体7000付近からAと認定されることが多いことから、モモネとミユキのステータスの一部だけを見れば、Aに行っているだろう」
「こんなに上がるものなの?」
「上がらない。ステータスの上り幅は人それぞれだが、通常、30までで1000を越えていれば良い方だ。自覚した方が良い、お前らは異常だ。これから着実にレベルが上がっていき、数十人しかいないSランクの域にも必ず行く。果たして、その力が世界を救う力となるか、世界を下す力となるか。そしてその身体で元の世界に戻れるのか。・・・別に怖がらせているわけではないからそんな顔をするな」
俺の話に、3人がこわばった顔をしてしまっていた。俺という先輩の立場から助言しただけなのだから。
「この話は別に適当に受け流していて構わない。ただ、力を持たないものから見れば、異常というのは自分たちが理解しがたい存在なんだろう。理解できないものは、近づくのではなく離れて恐れる。そのことを理解した上で、普遍の者たちとどう接するかを考えておけばいい」
「・・・それは、実体験?」
カンナが恐る恐るそう聞いてくるが、別にそう身構える案件ではない。
「あぁ、そうだ。俺も俺以外の人間を理解できなくて失敗した。まぁ、理解していたとしても俺の運命は定められていたから別に良いんだが。・・・さ、この話は終わりだ。さっきまでカンナとミユキとで話していた話の続きをしようか」
「話?」
「いつ王都に戻るかという話をしていたんだが、そのステータス値なら問題ないだろう。俺はここでのレベル上げを1週間くらい想定していたが、1日で終わるとは想定外だったが、問題ない。冒険者登録をしていないと言っていたな?」
「うん、していないよ」
カンナがそう答えるが、冒険者登録していないものがどうやってゴブリン討伐のクエストを受けたのだろうかと疑問に思った。
「待て。今更だが、冒険者登録していないお前らが何故あんな所にいたんだ?」
「なぜって、それはゴブリン討伐のクエストをしに行っていたからだけど・・・」
「クエストは冒険者登録していないと受けられないはずだが?」
「あのクソ野郎・・・大橋大輝だけ冒険者登録していたから受けれたよ」
いや、それはない。ゴブリンだろうと一人で行くには最低B以上じゃないと行けないはずだ。駆け出しならパーティで行くことを絶対順守しているはず。
「そいつのランクは?」
「・・・さぁ? 最低ランクじゃない? 登録したばかりだったから」
なおさら可笑しい。Fなら行けるはずがない。それにあんな遠くの森のクエストを駆け出しに受けさせるか? 考えられる可能性があるとすれば、そのオオハシダイキが偽装スキルを持っている、もしくは受付嬢に催眠スキルを使った。あるいは、ギルドにバカがいたのか、異世界転移者と知ってランクを無視して許可したのか。俺の知ったところではないが、気になるところではある。
「まあ良い。王都・ザイカに帰り、冒険者登録することは構わないな」
俺の質問に3人は頷いて答える。
「レベルが早くに上がり、ステータス値も申し分ないのは構わない。だが、早くレベルが上がりすぎたことによりお前らは目に見えない経験値、すなわちレベルに見合った場数を踏んでいないことになる。それにスキルの方も覚えないといけない。この世界で生き残りたいなら、ステータス値以外にも、知識・スキル・経験からの技術を身に着け、場数を踏まなければならない。死にたくはないだろう?」
「当たり前じゃん、死にたいなんて思う奴なんているの?」
「なら、ザイカに帰った後でもやることはあるぞ。良いな?」
「当たり前! 死に物狂いでやってやるし!」
「上等」
「はい、分かりました!」
3人の元気な声を受け、俺もこの元気に応えないといけないと思った。こんなにも人の心に触れたのは久しぶりだ。師匠以来か。昨日のバオル町でもそうだが、最近、人に関して俺にしてはいいことばかりだと思うんだが。何かの前触れかもしれない。
明日王都に行くということで体力を万全にすべく、早めに寝た3人を確認したのち、俺は自身のステータス画面を表示させる。
『名前:オリヴァー・バトラー
種族:人間
年齢:二十二
職業:闇の帝王
称号:闇夜深める帝王
≪スキル≫
≪闇ノ神の情愛≫・≪闇落ち≫・≪帝王従属≫・≪重力操作≫・≪言語共有≫・≪明鏡止水≫・≪六感強化Lv.10≫・≪身体能力上昇Lv.10≫・≪潜在力感知≫・≪超速再生Lv.10≫・≪魔力察知≫・≪気配察知≫・≪気配遮断≫・≪気配追尾≫・≪気迫Lv.10≫・≪騎乗Lv.10≫・≪体術Lv.10≫・≪武装術Lv.10≫・≪魔力武装≫・≪魔力具現化≫・≪魔力纏身≫・≪魔力回収≫・≪魔力付与≫・≪全物理耐性Lv.10≫・≪全属性耐性Lv.10≫・≪全物理反射Lv.10≫・≪全魔力反射Lv.10≫・≪背水の陣≫・≪採取Lv.10≫・≪調合Lv.10≫・≪錬成LV.10≫』
『オリヴァー・バトラー Lv.206
筋力:267000(+100000)
物理耐久力:265578(+100000)
速力:277086(+100000)
技術力:272950(+100000)
魔法耐久力:264868(+100000)
魔力:285506(+100000)』
『スキルスロット残数52』
今日でレベルが13も上がった。彼女たちと出会っていることは闇ノ神にとっても良いことなのだろうか。事実がどうかは分からないが、もしかしたら≪闇ノ神の情愛≫のスキルの真髄を使わせようとしているのかもしれない。彼女たちを助けて縁ができてしまった以上、彼女たちがこの世界で3人で自立できるほどまでは面倒を見るつもりはある。だが、それ以上の関係になるつもりはない。
それよりも、いい感じにスキルスロットが溜まってきたころだから、そろそろで何かスキルを習得するか、スキルを進化させた方が良いだろう。とりあえず、魔力の消費を抑える、もしくは魔力を増やしたいところだが・・・。
思い浮かべると色々なスキルが出てくる。≪魔力変換≫・≪魔力回復強化≫・≪魔力オーラ≫など。何か直感的に来るものは中々ない。・・・ん? ≪魔力吸収≫か。≪魔力回収≫と同じ部類のものか。これは≪魔力付与≫と同系統のものということなら、スキルが進化するな。
『≪魔力吸収≫・・・触れた相手の魔力を奪うことができる。消費スキルスロット1。なお、≪魔力回収≫と≪魔力付与≫を統合することにより、≪魔力往来・弐≫に進化可能』
思った通りスキルが進化する。≪魔力吸収≫を習得し、≪魔力往来・弐≫へと進化させる。だが、この“触れた相手”というのがあまり戦闘向きではない。俺の想像では囲んできた相手の魔力をごっそり奪えれば良いと思っていたが、そう上手くはいかないか。
『≪空間把握≫・・・一定の空間を自身の能力の範囲に適応させる。消費スキルスロット5』
『≪魔力流動強化≫・・・魔力の速さを早めることができる。消費スキルスロット1』
突然表示されたスキル内容を見ると、≪魔力往来・弐≫と組み合わせることで周りにいる敵の魔力を一気に吸い取れることができるみたいだった。俺が何気に思っていたことをシステムが理解してくれたのか、それに見合ったスキルを表示させてくれた。本当に不思議なシステムだ。
俺はスキルスロットが余っていることから、迷わずその二つを習得した。習得しているときに思い出したが、彼女たちの世界に行けるようなスキルがないのかと思い、想像してみた。すると一つのスキルが目の前に表示された。
『≪次元支配≫・・・次元の支配を可能とし、この世界と交わるはずのない別次元への空間へと移動することも可能となる。消費スキルスロット50』
消費スキルスロットは50か。空間ではなく、次元を支配するんだからそれくらいは行くのは当たり前か。今のスキルスロットの残数は45だから、習得できないから後回しだ。それに俺が彼女たちにそこまでする意味があるのかと思ってしまう。彼女たちを自立するまで面倒を見ようとは思うが、それはただの義務であって、やりたいと思ってやっていることではない。意味があると判断すれば、50溜まり習得するかもしれない。だが今はそこまで思わない。
一通りスキルの整理はできたが、まだ夜明けまで時間がある。夜明けまで俺は習得可能スキル一覧を眺めていた。習得可能スキルと言っても俺の場合はどんなスキルだろうとスキルスロットがあれば習得でき、今現在、存在するすべてのスキルを習得可能となっている。
ボーっと何か良いスキルがないかとスキル一覧のページをめくりながら思っていると、偶然にも気になる一つのスキルを発見した。
「≪魔力性質不変≫・・・何だこのスキルは?」
文字通り見れば、魔力の性質を変えない、ということだよな。魔力の性質はあまり詳しく知らないが、人にはそれぞれ内に宿る魔力の性質は性格と同様に違う。分かりやすい例で言えば、俺の魔力は闇ノ神と同様の魔力の性質を秘めている。侵蝕・暗転・崩壊など。
魔法ではなく、魔力の性質そのものを使い攻撃する魔法使いもいると聞く。俺もこれを調べた時、使おうと思ったが、どうやら俺の性質は多種多様の性質が複雑に入り組んでおり、“侵蝕”を使おうとすれば他のものも絡み合い上手く発動しなくなる。こうなった瞬間、俺はすぐさま自分の魔力を使うことを諦めた。
だが、このスキルは、おそらく他から奪った魔力を性質を変えずに自分の中に取り込めるのではないかと推測する。本来、己と違った魔力を体内に入れるときは性質を自身の性質に上書きして取り込む。今日のモモネがいい例だ。俺の魔力の性質をそのまま使った炎なら、黒炎で魔法が発動されるはずだ。
とりあえずスキルの詳細を確認してみる。
『≪魔力性質不変≫・・・自身が他者から取り込む魔力を、魔力性質を変えずに蓄えておくことができる。蓄えた魔力を自由に使用できるが、貯蓄期間は3時間のみ。消費スキルスロット1』
おおむね思っていたものと一緒だが、貯蓄期間があるのか。それも3時間だけと来た。その場ですぐに使うのであればこの貯蓄時間は問題ない。だが、王都でも王の魔力の性質がなければ開かないところがあると聞く。泥棒をするつもりはないが、使える魔力性質を有効に使うためには貯蓄時間が肝になってくる。
『≪魔力性質模倣≫・・・他者の魔力性質を自身の魔力性質として変化させ模倣することができる。ただし、触れているか一度でも変化させずに取り込んでなければならない。一度でも取り込めていれば、いつでも模倣することができるが、取り込んだ魔力性質の数は限られている。しかし、魔力性質の数はスキルを使えば使うほど多くなっていく。消費スキルスロット1』
どうしようかと悩んでいると、良いところに良い感じのスキルが出現してきた。≪魔力性質模倣≫と≪魔力性質不変≫を併せ持てば、有効な場面に有効な魔力性質を使えることができる。それにその魔力で≪魔力武装≫を使えば、魔力性質がついている武器を作れるんじゃないのか。
しかし、この≪魔力性質模倣≫は≪魔力性質不変≫がないと上手く扱えないんじゃないのだろうか。≪魔力性質模倣≫だけだと、“一度でも変化させずに”と示されている部分は満たされない。≪魔力性質模倣≫だけなら触れていなければ他の人の性質を扱えないということになる。単体ではあまり良いスキルではない。
そんなことより、≪魔力性質模倣≫と≪魔力性質不変≫を習得してしまう。
『≪魔力性質模倣≫と≪魔力性質不変≫を習得したことにより、≪魔力性質不変≫を≪魔力性質模倣≫に組み込み、≪魔力性質模倣≫が≪魔力性質模倣・改≫に進化可能』
これも俺は迷わず≪魔力性質模倣・改≫に進化させる。進化というのは、スキル効率が上がるから進化させないという選択肢はない。
『名前:オリヴァー・バトラー
種族:人間
年齢:二十二
職業:闇の帝王
称号:闇夜深める帝王
≪スキル≫
≪闇ノ神の情愛≫・≪闇落ち≫・≪帝王従属≫・≪重力操作≫・≪言語共有≫・≪明鏡止水≫・≪六感強化Lv.10≫・≪身体能力上昇Lv.10≫・≪潜在力感知≫・≪超速再生Lv.10≫・≪魔力察知≫・≪気配察知≫・≪気配遮断≫・≪気配追尾≫・≪気迫Lv.10≫・≪騎乗Lv.10≫・≪体術Lv.10≫・≪武装術Lv.10≫・≪魔力武装≫・≪魔力具現化≫・≪魔力纏身≫・≪魔力往来・弐≫・≪空間把握≫・≪魔力流動強化≫・≪魔力性質模倣・改≫・≪全物理耐性Lv.10≫・≪全属性耐性Lv.10≫・≪全物理反射Lv.10≫・≪全魔力反射Lv.10≫・≪背水の陣≫・≪採取Lv.10≫・≪調合Lv.10≫・≪錬成LV.10≫』
『オリヴァー・バトラー Lv.206
筋力:267000(+100000)
物理耐久力:265578(+100000)
速力:277086(+100000)
技術力:272950(+100000)
魔法耐久力:264868(+100000)
魔力:285506(+100000)』
『スキルスロット残数43』
こう眺めているとスキルの多さを自覚させられる。一部は俺が低レベルの時に使っていたスキルだが、それでもどれも使えるスキルだ。これだけのスキルがあれば戦い方は無数に存在する。今はさっき習得した数多の敵に囲まれた時に使う攻撃をしたい。
夜が明け、俺たちはようやく王都へと向かっていた。道中でのモンスターは少し強引だが俺が遠くから少し手助けするだけで、3人での本格的な戦いへと移していた。ステータス値が十分なら、俺を抜きにして彼女たちがどこまで戦えるか彼女たち自身が感じないといけない。
「どこにいんの!?」
「分からないから、とりあえず出てきたところを打つ」
「そんな早く移動できないよ~」
今相手にしているのは、土の中をその凶暴な爪で掘り進めて移動する巨大な土竜、『モグーリ』。あいつは地中を移動して相手の不意を突くような形で地中から出てくる。3人はこのどこから出てくるか分からないから手こずっているようだった。
今のところ自衛行動を取れないモモネをミユキが守り、カンナがモグーリを討とうとしているようだが、するりと避けられて攻撃できていない。攻撃を受けてもいないがな。さすがに早い段階でAランクモンスターはきつかったか? 気配感知を持っていないとモグーリはきついか。ここは手伝った方が良さそうだ。
俺は≪魔力武装≫で弓と矢を作り出し、地中を移動しているモグーリを気配感知で狙いを定めようとした。しかし、目を閉じて集中している様子のカンナを見てやめた。まだ彼女たちが危険になっているわけではないし、助けを求めてきていない。実力を計るためなのだから、簡単に手を貸してはいけない。
弓矢を手に持ちながら、少し待っていると彼女たちから少し離れたところにモグーリが地上に上がろうとしていた。カンナはそれを察知したかのようにすぐさま上がってこようとしているところへと行き、頭が見えた瞬間に剣を振るった。剣はモグーリの頭に縦に刺さり血を噴き出している。
カンナは小さく握りこぶしを作り喜んでおり、完全に油断している。
「油断するな」
俺はカンナに警告するとともに矢をモグーリに向けて放つ。俺の攻撃に気が付いたモグーリは脳天直撃しているはずの身体で地中に潜っていった。
「何で生きているの? 攻撃は当てたはず」
カンナは動揺しながらも二人の元へと戻っていった。
「あいつがAランクと呼ばれる理由は、硬さと生命力にある」
「Aランク!? 聞いてないんだけど!」
カンナではなく、モモネが反応した。硬さだけなら俺の渡した剣で十分すぎるが、生命力だけはどうにもならない。とどめを確実にさすしかない。
「あぁ、言っていないからな。それよりもモグーリが逃げるぞ。地中にいるやつを焼き尽くせ」
「焼き尽くす? ・・・分かった!」
モモネには道中で色んな魔法を教えている。幸い、モモネは頭が良く物覚えが良い。だから俺の教えた魔法の中で地中にいるやつにでも有効な魔法に気が付くだろう。モモネは魔法詠唱を口にし始める。
「『我が執念に応え、執念宿る炎に至れ。正義反する罪深き竜の炎よ、地の果てまで追い詰め、喰らい尽くせ』。『ハント・ドラゴン!』」
モモネの周りから炎が出現し、炎は竜の形へと変わっていった。上級追尾炎魔法『ハント・ドラゴン』。竜の姿をした炎が敵を延々と追っていく魔法だ。
「行け!」
モモネの合図で、その炎の竜はモグーリが潜って行った穴の中へと入っていった。しばらくすると地面が揺れだし、モモネから少し離れた地面からモグーリの胴体をくわえてハント・ドラゴンが出てきた。モグーリの身体はすでに焼き焦げているが、まだハント・ドラゴンから逃れようと元気に動いていた。
「カンナ!」
「分かっている」
カンナは自由に身動きが取れないモグーリに向けて走り出し、モグーリの首を狙って剣を振るった。剣は通り、モグーリの首は刎ねられた。カンナはさっきのことがあってか、斬った後でも距離を取って様子を見ている。モグーリは胴体だけまだジタバタと動いていたが、次第に動かなくなり、気配からも死を確認できた。
「さすがに、もう大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だ」
俺は弓矢を魔力に戻して回収し、三人の元へと行く。
「どうだ? 3人でAランクと戦ってみて」
「・・・あまり強いって感じがしなかった。でも、この一体だけなら何とか行けるけど、二体とかになれば分からない」
「あぁ、分かる。あたしなんて守ってもらうばかりだから、不意を突いて二体目が来たりしたら絶対に攻撃を受けてる」
「私は今回、何も役に立てなかったな~。ずっと立ってただけだったし」
「そんなことないし。ミユキがいなかったらあたしはあいつに攻撃されていたから」
三人のステータスだけで考えれば、Aランクと渡り合えても何も疑問はない。ただ、やはり動きはぎこちない。彼女たちはステータス値と場数が比例していないからそこが厄介だ。これはどうしようもない。場数は時間をかけて踏んでいかなければならないから、悩んだところでどうにもならない。
「そう言えばさ、カンナはさっきあいつが出てくるところが分かっている感じだったけど、あれは何なん?」
「分からない。何となく感覚を研ぎ澄ませてやれば見つかるかなって、思っていたら何となく分かった」
「何となくを言い過ぎだし」
「それは≪気配察知≫のスキルだろう」
モモネとカンナが話しているところに入り込み、俺は彼女たちの疑問に答える。
「≪気配察知≫? ・・・確かオリヴァーも持っているスキルだったっけ? そんな簡単にスキルを習得できるものなん?」
「そうだったな、モモネは俺のステータスを見たことがあるんだったな。スキルは、一般的に自分の性格や身体的特徴とそのスキルが合えば習得することは容易だ。性格以外にも、自分が必要だと思いセンスがあっても習得することができる」
「へぇ、と言うことは、たくさんスキルを持っているオリヴァーはすごくセンスがあるってこと?」
「いや、俺のはそうではない。・・・それは追々ということにしよう。それよりも、カンナは≪気配察知≫があるかどうか、自分のステータスを見てみろ」
「分かった」
カンナは指でステータスを出して操作しているようだが、当然のことながら≪透視≫スキルも何も持っていない俺から見れば何をどう操作しているかはわからない。≪透視≫スキルを覚えようと思えば覚えれるが、特に必要とは思わなかったから覚えない。
「あ、本当にあった。・・・けど、≪気配察知・未完成≫って書かれている。どういうこと?」
「あぁ、それか。それはスキルを習得している状態にあるが、スキルの恩恵をまともに受けれていない状態を指している。≪気配察知≫を使っていれば、早い段階で未完成はとれる」
「なるほど。ああいう時には≪気配察知≫が重要だから積極的に使っていく。・・・あ、そうだ。スキルの話を忘れてた。≪気配察知・未完成≫の他に、≪剣術Lv.1≫が習得できてた」
「あたしも新しく習得してる。≪詠唱破棄Lv.1≫が出てる」
「私も~。≪盾剣術Lv.1≫というスキルが出てます」
俺は彼女たちがこんなにも早くスキルが出現していることに驚いた。初期スキルを除き、≪採取≫や≪採掘≫などの身体に関係しないスキルは比較的に簡単に習得できるが、≪剣術≫などの身体に影響を与えるスキルは一日やそこらで習得できるものではない。それに職業を持っていない無職が、≪剣術≫スキルなど普通はあり得ない。これで職業を得た時に、何も変化がないか、はたまたこれ以上のものに化けるか。
「それは良かった。戦い方がなっていなくても、そのスキルを使えばこれまで以上に戦いやすくなるだろう」
「この≪詠唱破棄Lv.1≫のレベル1は、レベル2とか上がっていくん? それに詠唱破棄って何?」
「レベルの最高は10。詠唱破棄については簡単な魔法なら詠唱なく魔法が唱えられるスキルだ。そもそもスキルについては説明が見れるだろう」
「説明? どこで?」
「ステータス画面にあるスキルを押せばそのスキルの詳細が出てくる。今まで知らなかったのか?」
「だ、だって、仕方がないじゃん。この世界に来てから、あのクソ王さまはあたしたちのスキルが使えないと知ると、何も教えてくれなくなったんだから」
だからスキルのこととか知らずに、スキルの詳細を俺に聞くような事態になっていたのか。この世界の者ではなく、なおかつモンスターもステータスも何も存在していない世界なら知らなくて当然か。
「それもそうか。だがまぁ、ステータスからスキルの大まかな情報を知れるとは言え、ステータスからのスキル情報はそれほど多くないから、書物庫などでスキルについて調べるといい」
話を終え、俺たちは再びモンスター狩りへと戻った。