表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲスなダンジョン  作者: 九重七六八
第5章 ラストダンジョン<DMサイド>
37/45

666の文字

女性と初めてラブホテルというところに入った。

 

佐藤さんは俺を車に乗せると、国道沿いの派手な装飾の建物に高級車を滑り込ませた。俺は彼女に誘われるまま、ホテルへチェックインし、そしてベッドで2時間彼女と過ごした。

 

今はベッドで寝そべり、ぼーっとこの2時間の出来事を頭の中で再生している。佐藤さんはシャワーを浴びている。シャワーから出る水の音がなまめかしく聞こえる。

 やがて、シャワールームから出てきた佐藤さん。先ほど、俺の前に晒したゴージャスな肢体は白いタオルに覆われている。それでも、胸とお尻の曲線美は分厚いタオル越しにも分かる。胸の谷間も露わでエロいとしか言いようがない。


「TRくんもシャワー浴びてきたら……」


 そういわれたので、俺ものそのそと起きだし、シャワーを浴びに行く。適当に浴びて外に出ると、佐藤さんがバスタオルを広げて待っていた。それで俺の体をいとおしそうに拭く。そして、ベッドへ再び誘う。抱き合っての添い寝である。時間は7時を回ったところ。ダンジョンが開かれるまで、まだ十分に時間がある。


「ねえ……」

 俺は自分の右手に頭を乗せて目を閉じている佐藤さんに声をかけた。

「なあに……」

 甘ったれたような声で佐藤さんはそう答える。俺は疑問をぶつける。


「どうして俺をここに……それにこんなことを……」

「TRくんは不満なの。私の体、よくなかったの?」


 少し困ったような顔で佐藤さんはそう答えた。俺はその態度に思わずドキッとしてしまい、声がうわずってしまう。


「よ……よかった……というか……俺……初めてで……」


 佐藤さんはそっと人差し指で俺の唇に触れた。


「言わなくていいわ。これはお礼というか……思い出作り。私のようなお姉さんでごめんだけど。これまで私を守ってくれたお礼。そして、今晩、もしかしたら死んでしまうかもしれないから……。その不安をなくすため……」


 佐藤さんはそう説明した。正直、誰が見てもいい女である佐藤さん……本名は西村亜弓さんである。そんな人とHな経験ができるなんて男子高校生としては、超ラッキーというべきなのかもしれない。


(それも今日、死ぬかかもしれないという状況で、最高のご褒美かもしれない)


 死ぬ前に童貞を捨てたいと思うのは、健全な男なら誰でも思うだろう。俺の場合、こういうのに縁がなくて、30過ぎて魔法使いに転職するコースであったから、なおさらラッキーである。


「それにしても、TRくん、本当に初めてなの?」


 佐藤さんは変なことを聞く。俺は一瞬考えてしまったが、女性経験は思い出せない。だが、先ほどの行為自体は、ゴージャスな佐藤さんのボディに圧倒されるまでもなく、なんだか余裕で乗りこなしたことは事実だ。


「始めてだと思うけど……」

「ふふふ……おませさんねえ」


 佐藤さんはそう言って、この疑問はスルーしてくれたようだ。実際のところ、俺の記憶は曖昧でもしかしたらすっぽり抜け落ちた記憶の中にそんな甘酸っぱい歴史があるのかもしれない。


「ねえ、今日、何としてでも生き残ろうよ。私も頑張るから……」


 佐藤さんはそう言って俺の頭をグイっと豊かなバストへ押し付けた。思わず窒息しそうになる俺。冒険者に殺されるよりも、ここで窒息死したほうがどんなに幸せだろうか。


(あれ……)


 俺はうっすらと目を開けて飛び込んできたものに違和感を覚えた。佐藤さんの豊かな双丘のふもと。つまり、胸の谷間に小さな黒いシミを見たのだ。白い美しい肌にシミ。それは数字のように見えた。


『666』


 そう見えた。


(なんだ……この数字……うっ……)


 昼間に俺を悩ませた頭痛が再び襲う。俺は目を閉じて耐えた。


「時間は7時を回ったわ。そろそろ、準備をしないとね」


 佐藤さんは起き上がって下着を付け始めた。9時になるとダンジョンへと飛ばされる。それまでに準備を整えなければならないのだ。


 俺も起き上がった。そしてパンツをはく。その時に俺は自分の体に信じられないものを見た。右の脇腹にシミがある。


(こんなのいつからあった!?)


 そのシミは佐藤さんと同じであった。


『666』


 俺の頭痛が収まった。何かが急に開かれていくような感覚に自分の体が覆われる。



 佐藤さんに自宅まで送ってもらった俺は自分の部屋へと向かう。相変わらず、母親は不在。今朝出た時から家の様は変わっていないようであった。


「ケケケッツ……大人になったようだな……TRよ。というか、お前はとうの昔に大人だったの。それも最高のゲス男。どうだった、久しぶりの女の味は?」

「……うるさい、お子様のセリフじゃないぞ」


 部屋には幼女悪魔ばあるが、いつもの意地の悪そうな笑顔で俺を出迎えていた。この幼女悪魔の両頬と額には『666』の文字がある。


 俺の記憶は戻りつつある。だから、あえて確認のためにばあるに俺は聞いた。


「ばある、この666の数字。どんな意味があるのだ?」


 俺はシャツをめくって俺自身の脇腹を晒した。そこには『666』の文字がある。


「ククク……どうやら記憶が戻ったようだな。それも重畳じゃの」

「いいから答えろ」

「ダンジョンマスターとして最初の7日間を生き残った奴に刻まれる数字ぞな」

「やっぱりね」


 俺の想像通りである。

 そして俺はモニター画面にある1つのフォルダをクリックした。これはゲームが始まった時から気になっていたもの。これまではクリックしても反応することはなかった。


『パスワードを入れてください』


 そう表示される。俺は10文字の数字とアルファベットの組み合わせを打ち込んだ。昨日までそんなパスワードは知らなかった。今、思い出したことで入力できたパスワードである。


『解放されました』

 

そうモニターに表示された。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ