表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲスなダンジョン  作者: 九重七六八
第1章 はじまりのダンジョン<DMサイド> 
12/45

冒険者が殺しにやって来る

「マジかよ、本当に殺されたのかよ!」

『堕天使』の呆然とした感じの言葉の文字。

「……」


 俺は一言も発せられない。気持ち悪さと恐怖で頭が混乱する。侵入者をダンジョンで殺すゲーム。それだったはずだ。まさか、自分たちも殺されるゲームだとは。


「ケケッ……。当然ぞよ。殺そうとすれば、殺されるのは当然ぞよ」

「ばある、お前……」


「お主たちはわちきに聞かなかったぞよ。冒険者どもがROOMに入ってきたら、どうなるかを。答えは今見たとおりぞよ。斬首、斬首ぞよ」


「こいつめ!」


 俺は『ばある』の首を片手で掴み持ち上げる。この悪魔幼女。俺たちに重要なことを隠していた。このゲームは冒険者を殺すだけではない。ダンジョンマスターが住む部屋に侵入を許したら、こちらも死ぬゲームなのだ。


「苦しいぞよ……いいぞよか……奴ら、次のROOMに向かうぞよ」

「くっ……」


 冒険者の一団は『炭酸』のエリアを引き返している。行き着く先は3方向の分かれ道。左に行けば『堕天使』。真っ直ぐに行けば俺のエリア。右に曲がれば帰還する。


(右に曲がれ……右に曲がれ……)


 一つのROOMを陥落させたのだから、今日はこれで帰る可能性もある。今は混乱と恐怖で冷静な判断ができない。今日はもう帰って欲しいと俺は祈った。


だが、それは虚しいものであった。


冒険者たちの目標は、ダンジョンマスターの討伐。ただそれだけなのである。


「お、俺の方へ来る!」


『堕天使』の悲鳴に近い言葉。文字だが俺には伝わる。先頭の戦士は左へ曲がる。そこには迷いがない。


(昨日と同じだ……)


 俺は躊躇なく左へ進んだ冒険者たちの動きに違和感を覚えた。まるで知っているみたいな動きだ。昨日の魔法使いが踏み込んだ細い廊下エリア。両側には『堕天使』が40KPを使って仕掛けた矢を放つ壁がある。


「畜生め! 全部、ぶっ殺したる!」


 先頭の戦士めがけて『堕天使』が矢の雨を降らす。しかし、先頭の戦士は二人並んで歩き、両側の壁を盾で塞ぐ。どうやら、トラップがあることを知っているようだ。床は昨晩、ここで殺した魔法使いの血で汚れている。死体は一晩で立つと消えるので、トラップの詳細は分からないと思われるが、床の血だけで察知されたのだろうか。


シュバシュバッ……。


 矢が連射されるが、全て戦士の掲げる盾に刺さる。4ブロックにも及ぶ『堕天使』自慢の『ウォール・アロー回廊』がいとも簡単に突破される。トラップは不意をついてこそ、効果がある。そこにあると分かれば対処されてしまう。


(昨日の冒険者ならともかく、こいつら、今日、このダンジョンに入ったばかりだよな。どうして知ってるのか?)


 俺が今日、この冒険者たちから感じた違和感。それが確かなものになる。こいつら、明らかに昨日の経験をものにしている。だが、『堕天使』は『炭酸』のようにダンジョンの強化を怠っていなかった。昨日に得たKPで新たなトラップを購入していたのだ。


 通路を突破した冒険者たちは道なりの左へ曲がったが、そこで振動に気づく。


「これでこの先にはいけない……ふふふ……ははは……」


 動く壁。通路の右から1エリア分の壁がズルズルと動き出して通路を塞いだ。これでは、この先に進むことができない。


「はははっ……お前たち、ここは行けないぞ。戻って、別のエリアへ行けよ!」

「堕天使さん、それじゃ、俺や佐藤さんのところに来るじゃないか」

「すまんな、TR、佐藤さん。俺は生き延びたい」


(自分さえ良ければいいのか!)


 俺は堕天使の自分本位な考えに怒りを覚えたが、もし、自分が同じ立場だったらどうするだろうと考えたら、これ以上、言葉を発することはできなかった。


たぶん、俺は堕天使と同じ行動をするだろう。それは卑怯でも何でもない。あの無残に斬首された炭酸のおっさんの生首を見れば、誰だってビビってしまうだろう。どんな手を使っても生き延びたいと思うだろう。


 冒険者たちはそれ以上、堕天使のダンジョンを進むことを諦めたようだ。今の体制では突破できないとの判断だ。もう一度、分かれ道へ戻って左へ曲がる。そこは俺の支配するエリアだ。


ついに俺のエリアに冒険者が侵入してくる。


(ついに来た……どうやって守る……)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ