救出作戦
レスティは騒動に紛れて城に向かっていた。
単独行動なら、気づかれずに城に接近することは楽だった。
一番隠れた入り口から、中に侵入する。
まさかこんな風に城の中に入る時が来るとは思っていなかった。
城の内部には兵士の気配がない。ほぼ出払っているようだ。
目指すは牢。
通路では走り、曲がり角では慎重に様子を観察する。
今の所兵士には遭遇していない。
牢への地下階段まで来た。
流石に牢の見張りはいるだろう。
階段を下りれば足音が立つ。
しかし、足音だけでは敵だとは見破られないだろう。
階段を下りていく。
階段を下りると、見張りの兵士の姿が見えた。
迷わず突撃する。
兵士は何が起こったかわからないまま、切り倒された。
倒れた兵士の腰から、牢の鍵を奪い取った。
牢を見ると、クラトスの部隊の者たちが捕らわれている。牢に入れられたのか。
だが、今は王女。クレリアの姿を探す。
通路を進んでいくと、クレリアの姿を発見した。
クレリアがレスティに気がついた。
「レスティ!何をしているのです」クレリアは驚いている。
「強硬派に反旗を翻しました。今、平和派と共に戦っています。
あなたを救出しにきました。さあ、脱出しましょう。詳しい話は後です」
レスティが牢の鍵を開ける。
クレリアは突然の状況に戸惑っていた。だが、レスティが味方になってくれた。
味方になってくれたのだ。
胸に込み上げてくるものがあった。
二人で脱出を試みる。
だが、目の前に本来存在しないはずの人物がいた。
レスティが即座に剣を抜いた。
「フラン将軍」レスティが驚いた声を出した。
馬鹿な、何故ここにいる。外で戦っているはずだ。
読まれたのか。陽動作戦だという事を。
しかし、読まれた割にはフラン一人しかいない。
一対一なら、突破は可能かもしれない。
「久しぶりだな、レスティ。やはり陽動だったか。姫を救出して、後は撤退するつもりだろう?」
フランも剣を構えている。
「フラン将軍。あなたとは戦いたくない。それに、何故あなた一人なのだ。
部下はどうした。何が狙いだ」レスティが問いかけた。
「お前と姫に私の覚悟を告げにきた」フランが答える。
「私はエリシア様の忠実な部下。絶対に最後まであの人の傍にいる。
いや、忠実な部下などとは言えないかもしれないな。今からやろうとしていることを思えば。
私はお前と姫を見逃すつもりだ。だが、もしもエリシア様に近づこうとし、
突破しようとしてくるならば。私はお前と戦うぞ、レスティ。姫も例外ではない。
エリシア様に近づかないでくれ。あの人に近づこうとするならば、
私はあの人のために剣を振るう。それだけだ。さあ、早く行くがいい」
フランが剣を収めた。
「感謝する。だがあなたとは、また会うことになるだろう。クレリア、行こう」
レスティがクレリアの手を取る。
「フラン、私たちの歩む道が同じではなかったこと、私は、私は」
クレリアが戸惑っている。
「私は間違った道を歩んでいるのでしょう。だが、それでも。
あなた達は正しき道を歩めば良い。さあ、これまでです。早く行きなさい」
フランが諦めのような表情を見せた。
レスティとクレリアはフランの隣を通り、階段を上っていった。