即位式へ
城下に人だかりが出来ていた。
女王即位のお触れを見た者たちがやってきたのだ。
ローウィンもいた。
セフィラと楽しそうに話し合っている。
クレリアは城の入り口で緊張していた。
今日からこの国の女王。
いきなり状況が急変するわけではないのだが、やはり緊張する。
母上からはこの国を頼みますよ、と頼まれた。
辛い立場にある母上のためにも頑張らなければならない。
クレリアは気合を入れ直した。
皆の前ではしっかりと振る舞わなければならない。
民たちを不安にさせてはいけないのだ。
気合を入れていると、レスティとフランがやってきた。
「緊張なさっているのですか?」フランが尋ねる。
「ええ。やはり、緊張します」クレリアが答えた。
「大丈夫ですよ、姫なら。いや、女王」
「フラン、私はまだ女王ではありません」
「そうですが。直にそうなります。先取りというやつです」フランが笑った。
笑顔につられてクレリアも苦笑いする。
「二人は仲が良いな」レスティも笑っている。
「昔からお世話になっていましたから。フランには、良くしてもらいました」
クレリアがフランの方を見た。
「これからも私を支えてくれますか?」
「もちろんです。あなたの剣となりましょう」フランが一礼した。
クレリアの緊張は少し解けていた。
この人たちとなら、大丈夫。
この国を正しい方向に導いていけるはずだ。
話し合っていると、最後の将軍グラリアが現れた。
「お待たせしたようですね。申し訳ない」グラリアが謝る。
「遅い。30分は待ったぞ。遅すぎる」フランがグラリアを責める。
今来たばかりなのだが。レスティは黙っていた。
「暇なフラン将軍とは違って忙しいものでね」グラリアが言い返す。
「ほう。では姫も暇だと言うつもりかな?」フランは笑顔だ。
「とんでもない。姫は心の準備というものがあるものだ」
「二人とも、仲良くしてください」クレリアが苦笑した。
「姫の命令でも無理ですね。こればかりは」フランがそっぽを向いてしまう。
「命令とあらば従いますが。出来れば配慮していただきたい」グラリアが淡々と言う。
喧嘩するほど仲が良い。
あの格言は嘘だ。レスティはそう思った。
話し合っていると、エイルがやってきた。
「大分人が集まってるぜ。まだかまだかって賑やかだ。
もうそろそろ出て行ってやった方がいいんじゃないか」エイルが状況を告げる。
「そうですね。心の準備も整いました。そろそろ、行きましょうか」
クレリアはいつでも行けるようだ。
「じゃあ、俺は民たちと共に下の方で見てることにするか。立派にやれよ」
エイルは颯爽と去っていった。
「では、参りましょう。この国の女王として立派に振る舞ってみせます」
クレリアが歩みだした。
レスティとフランとグラリアが後をついていく。
外は眩しい光が輝いていた。




