最後まで
レスティ達は砦で待った。
横暴だったイシュカルの即位式になど、出てくれるだろうか。
しかし、窮地の時に戦力を出してくれた王だ。
どう考えているかはわからないが、待つしかなかった。
長いこと待ち、やがてローウィンが砦に帰ってきた。
「お待たせしました、皆さん」ローウィンが言った。
「とんでもない。歩かせてしまって申し訳ない。王はなんと?」レスティが尋ねる。
「残念ながら、即位式には参加できないようです。
ヘインセルの兵達も慌ただしくなっております。
今、国を空けるわけにはいかないようです。
しかし、王女の即位はめでたいことだと言っていました。
事情も理解してくれているようです。
祝いの言葉をかけることと、私が式に出ることを命じられました」
「そうでしたか。式に出ていただけないのは残念ですが、
事情を理解してくださっていることは本当にありがたい。
ローウィン様が来てくださるのですね」
「そのつもりです。詳しい日程が決まり次第ご連絡いただければ、駆けつけます」
王様は来られないが、ローウィンが来てくれるようだ。
「わかりました。決まり次第すぐにご連絡いたします」
「長いことお待たせしました。国で皆がお待ちでしょう。早く行かれるといい」
「ありがとうございます。では、我々は国に戻ります」
レスティ達はイシュカルへ引き返す事になった。
これから詳しい日程を決めなければならない。
民たちに、女王が変わることを説明するためにも、お触れも出さなければいけない。
復興でそれどころではない街や村は、後から連絡するしかないだろう。
「ヘインセルってのはいい国だな。攻めようとしていた最初の砦の、
ローウィン様にここまで世話になるとは思ってなかった。
お前が反旗を翻してくれて本当によかったぜ」エイルが言った。
「ああ、いい国だ。この国となら、平和を築いていけるはずだ」
レスティが力強く答える。
「いい国でしょう?この国に生まれ育った事を誇りに思います」セフィラが会話に加わる。
「お前も、よく戦うと決意してくれたよな。何がお前をそうさせたんだ?」
エイルが尋ねた。
「戦わなければ平和は勝ち取れないと、思ったのです。
守りたい存在もいました。私は、皆さんの力になれたでしょうか」
セフィラが遠い目をして語る。
「もちろんだ。セフィラがいなければ、俺達は強硬派に打ち勝つことは出来なかっただろう。
悪魔にも敗れていたかもしれない。セフィラの覚悟が、俺たちを救ったんだ」
レスティが真剣に言った。
「そうですか。それなら、よかったです。私の覚悟は無駄ではなかったのですね」
セフィラは涙が出そうになるのを堪えた。
『セフィラ様も最後まで頑張って』
アリスのことが頭をよぎる。
最後の戦いは終わった。
あの子の願いを叶えてあげられただろうか。
最後まで頑張ったあの子に、もう一度だけ会いたい。
叶わない願いを、セフィラは想っていた。




