平和を愛する心
「俺たちの勝ちだ」レスティが老人に告げた。
「何故そこまでして戦う。どうしようもない民ばかりではないか。
平和などまやかしだ!私がお前たちごときに負けるわけがない!
聖剣だ、聖剣さえなければ」老人が悔しそうに言う。
「聖剣だけの力じゃない。皆が力を合わせたから勝てたんだ。
お前にはわからない。ここに集まった者たちの平和を求める心が」
一部平和のためだけではない人間もいたが、
一同が老人を見る。
平和のために戦った勇敢な兵士達。
「私たちは平和を愛する心を持っています。
決して、あなたのような存在に負けたりしない。
あなた達がどれだけの事をしたのかわかっているのですか?
国を混乱に陥れ、襲撃までした。
あなた達は、悪です」セフィラが言った。
「聖剣は確かに強い。だが、聖剣は皆の力で完成したものだ。
そして聖剣を振るえたのも皆の力によるもの。
平和を愛する心にお前は負けたんだ。聖剣に負けたんじゃない。
聖剣が無ければなどと、言い訳にすぎない」レスティが続ける。
「偉そうな口を叩きおって。どうせ、お前たちはまた争う。
平和など一時のまやかしにすぎん。人間の心など脆い」老人が言った。
「確かに人間の心は脆い。平和も永遠には続かないだろう。
しかし、エリシア様を苦しめたお前たちを私は許さない。
お前たちは卑怯な手で人々を苦しめた。
その事実だけは変わらない。お前が何を言おうと」フランが老人に言う。
「消えなさい。あなたは負けたのです。我々はこれからこの国の復興をします。
平和のために。あなた達に受けた傷を癒すために」クレリアが言った。
「どうしてこんな連中に」老人が苦しそうにしている。
やがて、老人は震えだすと、さらさらと灰になっていった。
「終わったんだな」エイルが感慨深そうに言った。
「ああ、終わった。後は平和のためにこの国を復興するだけだ。
ヘインセルにも感謝しなければならない。
そして、ここまでついてきてくれた皆」レスティが皆の方を向いた。
「ありがとう。お前たちがいなければ勝てはしなかった」レスティが礼を言う。
「俺はお前のために戦うと誓ったからな。当然だ」エイルが笑顔で答える。
「私は必ず平和を取り戻すと誓いました。その誓いのため、戦ったまでです」
セフィラが微笑する。
「この国の王女として、出来ることをしただけです。
レスティには恩もありますしね」クレリアも笑顔だ。
「私は間違ったことをした。その償いとして、当然のことだ。
お前たちと戦えて誇りに思う」フランも微笑する。
「私がいなければ勝てはしなかっただろうな。
私の活躍、よく覚えておくのだぞ」グラリアが憎まれ口を叩く。
兵士たちも次々と、ここにいる人々と戦えてよかったと口にする。
温かい雰囲気が漂っていた。
「さあ、帰ろう。国の復興をしなければならない」
レスティが合図した。
国を救った英雄たちの帰還だ。




