黒い悪魔
老人が両手を広げる。
すると、老人を中心に黒い闇が襲ってきた。
闇が視界を覆う。何も見えない。
闇が取り払われた時、レスティ達は別の場所にいた。
円形の部屋。さっきまでいた部屋と違う。
レスティ達は部屋の中央にいる。
獣人達がレスティ達を囲うように部屋の隅で待機していた。
そして、大きな目玉を一つ持った、巨大な黒い悪魔が居座っている。
地面と繋がっているように見える。動くことは出来なそうだ。
「何が起きた?囲まれているぞ!」グラリアが叫ぶ。
「どこかに、転送されたようです。あの黒い悪魔がさっきの老人でしょう」
セフィラが焦り気味に話す。
「あの黒い悪魔は俺が倒す!皆は周りの魔物の相手をしてくれ!」
レスティが指示を出した。
獣人達が襲い掛かってくる。
レスティ達は円のような布陣を引き、それに対応した。
少数の部隊で無ければ、安心して対応出来たが何しろこちらの数が少ない。
仲間たちがやられてしまう前に、あの黒い悪魔を片づけるしかない。
レスティが黒い悪魔に向かって突撃する。
だが、レスティが黒い悪魔に接近すると、レスティの足元に黒い円が現れた。
黒い悪魔と黒い円が、黒い線で繋がっている。
レスティは、動けなかった。円の影響か、動きを封じられてしまった。
「この術を使っている間は私も動けないが、お前も動けない。
まずはお前の仲間から殺してやる。そこで見ているがいい」
黒い悪魔から声がする。
仲間たちは獣人と戦っている。
捌き切れているが、問題があった。
倒しても新しい悪魔が壁際から沸いてくるのだ。
このままでは数で押されて、やがて全滅してしまう。
エイルは考えた。レスティの動きが止まっている。
聖剣以外の攻撃が効くかわからないが、とにかくあの黒い悪魔を倒すしかない。
「フラン将軍!レスティが動けない!あの黒い悪魔の相手をしてくれ!
このままじゃ数で押されて全滅しちまう!」エイルが叫んだ。
「承知した!」獣人と戦っていたフランが狙いを黒い悪魔に向ける。
兵士たちは必死に獣人と戦っていた。
クレリアはレスティが動けないことに焦っていた。
セフィラは魔法を獣人達に向けて放っていた。
グラリアは戦いながら慎重に辺りを見回していた。
フランが黒い悪魔目がけて突撃する。
斬りかかった。しかし、傷はつけたがその傷がすぐに修復してしまう。
連続で攻撃しても同じだった。
やはり、普通の攻撃は通用しないのか。
フランが一旦元の位置に戻り、獣人の相手に戻る。
「攻撃が効いていない!このままでは」フランが焦っている。
レスティが動けない限り勝負にならない。
壁際からは悪魔がどんどん沸いてくる。
このままでは数で押されて全滅してしまう。
「おい!あの石をよこせ!」グラリアが突然エイルに言った。
「なんだ突然!今は余裕がないんだぞ!」エイルが戦いながら答える。
「いいから早くしろ!」
凄い剣幕だった。エイルは意図が読めなかったが、聖石をグラリアに手渡した。
それを受け取ったグラリアが走ってレスティに接近した。
悪魔と円を結んでいる線を聖石で遮った。
レスティの足元の円が消えた。
動ける。
レスティがすかさず悪魔に突撃する。
「小癪な真似を。私自ら葬ってやろう」
黒い悪魔の目玉がぎょろりと動く。
「お前には負けない!平和のため!」
レスティが剣を握る。
仲間たちが持ちこたえている間に必ず倒す。同じ手を喰らってはならない。
聖剣エスティリス。希望の剣を持ったレスティと黒い悪魔の一騎打ちが始まった。




