青い悪魔
フラン達は急いでカンタール砦に戻ってきた。
クレリアの姿を発見し、報告をする。
「姫、言葉を話す悪魔と交戦しました。その悪魔を追いつめ話を聞いたところ、
悪魔の目的は、各地の侵略と、城を落とすことだったようです」
「城を落とす?」クレリアが驚いた。
陽動作戦か。
だとすると、城が危ない。
グラリアの少数の部隊と、セフィラの部隊しかいない。
セフィラの部隊も、各地に出兵しているかもしれない。
「急いで城に向かいましょう。しかし、カンタール砦も無視できない。
私はここを死守します。フラン、城をお願いできますか」クレリアが考えながら言った。
「承知しました。レスティ達は?」
「今休息を取っています。起きてもらわなければなりませんね」
「起こしてきます。レスティ達が目覚め次第、すぐに出発いたします」
フランが言った。城は持ってくれるだろうか。
城では執務室でグラリアとセフィラが待機していた。
各地からの救援要請が来ないので、セフィラの部隊は待機したままだった。
「レスティ達は無事でしょうか」セフィラが心配そうに言った。
「奴等なら大丈夫でしょう。悪魔などという存在に後れを取るとは思えない」
グラリアが答えた。
その時、兵士が執務室に慌てて入ってきた。
「何事だ」グラリアが警戒した表情を見せる。
「イシュカル城の近くに、接近してくる大部隊があります。悪魔ではないかと」
兵士が報告する。
大部隊だと?
まさか、各地を侵略していたのは城の戦力を減らすためか。
味方の増援は、期待出来ない。
我々だけで守りきらなければならない。
「セフィラ殿、守りを固めましょう。すぐにヘインセルの部隊を呼んでください」
グラリアが立ち上がる。
まったく、運が悪い。
こんな事なら自分がカンタール砦に行っておけばよかった。
グラリアは思っていた。
「わかりました。すぐに部隊を招集します」セフィラが答えた。
イシュカル城下に布陣を引くことになった。
グラリアの部隊が先頭。セフィラ達の部隊が後衛。
「部隊、接近してきます!やはり悪魔のようです!」兵士が叫ぶ。
「防戦するぞ!火力はヘインセルの部隊だ。我々は足止めに徹する」
グラリアが指示を出す。
やがて、敵の部隊が侵入してきた。
先頭に一匹だけ色の違う悪魔がいる。青い悪魔。
「お前たちに勝ち目はない。見逃してやる気もないがな」青い悪魔が話す。
こいつ、喋れるのか。知性を持った悪魔ということか。グラリアが考える。
衝突ギリギリの距離だが、まだ戦いは始まらない。
「お前は、グラリア将軍だな?」青い悪魔がグラリアに向けて言った。
「それがどうかしたのか」
「お前は相当な野心家だと聞いている。どうだ?我々の味方をすれば、
お前を悪魔の部隊のトップクラスの地位に置いてやろう。どうだ?悪い話ではあるまい」
「ほう」グラリアが話す悪魔に近づいて行く。
「お前は指揮官か。相当、偉い立場のようだな。確かに悪い話ではない」
グラリアがさらに接近していく。
「そうだろう。人間の味方など止め、我々に味方しろ」青い悪魔が笑みを浮かべる。
「グラリア将軍、まさか」セフィラが心配そうな顔で見つめている。
「すぐに答えを出そう」グラリアが青い悪魔の前まで来た。
そして、剣で青い悪魔の体を貫いた。
「な、なに」青い悪魔が倒れる。
「私は人間だ。お前たち異形のような者のいう事など信用出来るか。
総員!戦闘開始だ!城を守りきるぞ!」グラリアが叫んだ。
「グラリア将軍」セフィラが安心した表情を見せた。
戦いが始まった。
フラン達が救援に向かっているのだが、
グラリアとセフィラ達はそれを知らない。
自分たちだけでなんとかしなければならないと思っていた。
ここを突破されれば城を占領される。
決死の防衛戦が始まった。




