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最後の命令

 イシュカル城の一室でフランが横になっていた。

他にも負傷者の姿がちらほら見える。

「う、うう」フランが呻き声を上げた。

フランが目を覚ました。

ここは、治療室?

私は敗れて、治療されているということか。

エリシア様は無事なのか?

立ち上がろうとすると、体が少し痛んだ。

だが喰らった傷の割には痛くない。魔法の力だろうか。

立ち上がり、すぐに部屋から出ようとすると、クレリアが部屋に入ってきた。

「フラン、起きたのですね」クレリアが安心した表情を見せた。

「姫、エリシア様は」フランが急いで状況の説明を求める。

「そのことであなたに話をしなければなりません」クレリアは説明するつもりのようだ。

「突飛な話ですが、母上は伝承上の存在の悪魔に、体を乗っ取られていました。

紫色をした異形の怪物です。意識は今まであったそうですが、

悪魔に抗う事は出来なかったと言っています」

「悪魔ですって?」フランが驚いた。

「そのせいで、エリシア様は変わってしまったと?」

「はい。今は元の母上に戻っています。是非、会ってあげてください。

民の反発も考えながら、母上が今後どうするかを決めねばなりませんが、

とりあえず今は休憩しています」クレリアが面会することを勧めてきた。

「話がしたいです。エリシア様は起きていらっしゃるのですね?」フランは安心している。

「はい。母上の部屋で休んでいます。傷は大丈夫ですか、フラン?」

「大丈夫です。部屋まで、行って参ります。治療、感謝します」フランが礼を言った。

フランはクレリアに一礼すると部屋を出た。

エリシアの部屋に向かう。

悪魔に取り憑かれていた。すぐには信じがたい話だが、

優しいエリシア様が豹変したのもそれで説明がつく。

そして、今は元のエリシア様に戻ったと。

フランは急いで部屋まで来た。ドアをノックする。

「エリシア様!フランです!」

「フランですか。入ってください」

中から声がした。

そのままドアを開け、フランが中に入った。

疲れた顔の女王が横たわっていた。

「エリシア様、よくぞ無事で」フランが心から安心している。

しかしエリシアはフランの方を見ようとしない。

「どうかなさったのですか?悪魔の話は聞きました。もう、元のエリシア様に戻られたと」

フランは態度に疑問を覚えた。俯いたままエリシアが申し訳なさそうにしている。

「あなたに合わす顔がありません。私は酷いことをしてしまいました。

決して、許されない。民たちも、あなたも、散々苦しめました」女王が語る。

「しかし、それはエリシア様の意思ではなかったのでしょう。

全て悪魔が悪い。そうでしょう?」

「でも、体を乗っ取られていても、意識はあったのです。抵抗する力があれば、

なんとか出来たかもしれない。それなのに私には何も出来なかった。

国を混乱に陥れ、民たちの平和を奪い、部下に酷い命令を出した。

私は、死にたい。責任があるから、死にはしませんが。

この罪を償わなければなりません。

あなたには、私が間違った道を歩んでいるのがわかっていたはず。

何故、私のために戦ってくれたのですか?」女王が問いかけた。

「あなたのために命を捧げる覚悟だったからです。昔、約束しました。

隠れて命令違反をしたこともありましたが」フランが答える。

「どうして、あなたはそこまで」エリシアが涙ぐんでいる。

「泣かないでください。私は忠実なあなたの部下です。私はあなたと共にいられることを、

幸せに思います」

「ありがとう、フラン。一つだけ、お願いがあるのです。最後の命令です」

「なんでしょうか?」

「あの子の、クレリアの力になってあげて。私が母親としてあの子にしてやれることは、

もうほとんどない。あの子のために、剣を振るってください」

「わかりました。その命令、必ずや遂行しましょう」フランが力強く答えた。

「クレリアを頼みます。悪魔と戦わなければなりません。

悪魔の話はグラリア将軍から詳しく聞いてください。

今の城の指揮官は、クレリアとグラリアです」

フランは女王がもとに戻ったことに喜びを感じていた。

再びこの優しい女王が戻ってきた。

フランは幸せだった。

だが、悪魔と戦うという話で少し緊張した。

悪魔が攻めてきているのか?伝承上の悪魔が。

「わかりました。急いでグラリア将軍の元に向かいます。エリシア様、体をお大事に」

フランが一礼し、部屋を出ていった。

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