イシュカル城へ
グラリア達は降伏した。
平和派の部隊の一部が、グラリア達を見張ることになった。
武器もすべて回収した。
「レスティ、降伏した者を殺したりはしないだろうな」グラリアが問いかける。
「当然だ。しかし、質問はさせてもらうぞ。フラン将軍はどこにいる?
残りの兵力はどれくらいだ?」レスティが必要なことを聞き出そうとする。
「城内にいる。残りの兵力はフラン将軍と、その部下が少しだけだ。
もう、女王も終わりだな」グラリアが淡々と言う。
この男は忠誠心などで動いてはいない。自分の利益になることがあればいいのだ。
レスティはグラリアをあまり好いてはいなかった。
「フラン将軍も間抜けなものだ。あんな女王に忠誠を誓うとは」
グラリアがフランを侮辱した。
レスティは思わず、グラリアを殴っていた。
「何をする」グラリアが忌々しげにレスティを見る。
「フラン将軍への侮辱は許さない。あの人にはあの人の道があるんだ」
「そうです。あなたにフランの何がわかるのですか」クレリアも怒りを表している。
「事実を述べたまでだ。私は自分の利益のために行動した。
しかし、あの将軍には忠誠心しかない。お前たちはあの女王が正しいと思うのか?」
グラリアが笑った。
確かに、女王が正しくないのは事実だ。
何が、フラン将軍をあそこまで駆り立てるのか。
それは、わからなかった。昔なにかあったとクレリアが言っていたが。
「ラドの街の者まで、皆殺しにしたのだぞ。まったく、大したものだ」
グラリアが言った。
「ラドの街を皆殺し?どういうですか」クレリアが驚いて問いかけた。
「言葉通りの意味だ。女王の命令で、ラドの街の者を皆殺しにするように、
フラン将軍に命令が出た。将軍は命令通りそれを実行した」グラリアが告げた。
「そんな」クレリアが驚愕している。
「それは間違いです」平和派に見張られていた、白い兵士が口を挟んだ。
「将軍は、隠れてラドの街の者を北の砦から逃がしました。
ラドの街の者たちは無事です。街を焼き払って、皆殺しにしたように見せかけました」
「なんだと」グラリアが苛立った表情をしている。
レスティは思案していた。
やはり、あの人は善人にしか思えない。
俺たちの事も見逃してくれた。
何故だ?女王への忠誠。何が彼女をそうさせるんだ?
二人で過ごしてきた時間が長かったからか。
俺が将軍になる前から、フラン将軍は将軍の地位にいた。
二人にしかわからない何かがあるのか。
「いずれにせよ、戦わなきゃならねえ。それは、決定しているんだ。
相手がどんな善人だろうとな。あの女王の味方をする限りは」エイルが迷わずに言った。
その通りだ。
女王を野放しにしてはおけない。
フランにも降伏するように、宣言はするつもりだ。
しかし彼女は戦うだろう。
「どうして、こんなことに」クレリアが寂しそうに呟いた。
「フランは私にとても良くしてくれました。こんな運命になるなんて思ったことはなかった。
レスティ、出来るならフランの命だけは」クレリアが願った。
「それは、約束できない。本気で戦っても勝てる相手かどうかわからない。
俺は一人で戦ってるんじゃない。仲間と共に戦っているんだ。責任がある。
勿論、生かせるようなら努力はする」レスティが答えた。
「話はここら辺にしようぜ。話すだけ辛くなる。行こうぜ、イシュカル城へ」
エイルが切り出した。
「そうだな、行こう。これで最後だ」レスティが頷いた。
イシュカル城へと部隊を連れて進み始めた。
最後の砦、フラン将軍の待ち構えるイシュカル城へ。




