投降
グラリア達との激戦は続いていた。
しかし、ここにきてグラリア達の前線部隊が持たなくなってきた。
平和派の勢力に押されている。
「いけます!皆、あと少しです!」クレリアが激励した。
ヘインセルの部隊は後衛部隊に対して攻撃を続ける。
やがて、グラリアの前線部隊が持たなくなった。
クレリアが、ここが勝機とばかりに前に出る。
敵の後衛部隊はほぼ壊滅している。
今ならグラリアに接近できる。
「ちっ、これほどまでとはな」グラリアが舌打ちした。
クレリアが剣を振るいながら前線の部隊と共に前に出る。
グラリアの姿を捉えた。
「グラリア!もう勝機はありません!投降しなさい!」クレリアがグラリアに向けて叫んだ。
投降。グラリアは考えた。
このまま戦っていれば間違いなく死ぬ。
武装を解除すれば、もう襲われることはないだろう。
ややグラリアが思案したのち、クレリアに対して言った。
「わかりました。投降しましょう。皆の者、武装を解除しろ!我々の負けだ!」
グラリアは剣を地に投げ捨てた。
兵士たちは戸惑っていたが、上官の命令だ。
兵士たちも次々と武装を解除していく。
甘い平和派なら、武装解除した我々を攻撃したりはしまい。
フランの部隊は不満があるようだったが、グラリアの指示に従うように言われている。
仕方なく武装を解除した。
レスティ達の勝利だ。
「武器を回収するか。城に突入して後ろから攻めてくる可能性もある。
とりあえずは、俺たちの勝利だな」エイルが安堵しながら言った。
レスティ達が投降した兵達の武装を回収していく。
レスティはグラリアに近づいた。
「投降してくれて助かる。今のお前たちでは、勝ち目はない」
グラリアに対してレスティが告げた。
グラリアは唇を噛んだ。
この裏切り者め。調子に乗りおって。
だが、今戦うのは無謀だ。
大人しく投降するべきだ。
生きていれば、また一から積み直して、地位を得ることも可能なはずだ。
「私たちは投降するが、城内にはわからず屋の将軍がいるぞ。
そいつがどうするかまでは、私にはわからん」グラリアが告げた。フランのことだ。
フランが城内で待ち構えている。この戦力で、フランだけで何が出来るのか。
レスティは疑問だった。
城の外から戦いの音が聞こえる。
やがて、戦いの音が止んだ。
勝ったのか。敗れたのか。どちらかはわからない。
だが、恐らく敗れたのではないだろうか。
フランにはそんな予感があった。
フランはレスティに対して、一騎打ちを申し込む気でいた。
私が勝てば大人しく兵を引けと。
甘い考えであることは承知している。
だが、一度はレスティ達を私は見逃した。
レスティならば、受けて立つだろう。
エリシア様の元には向かわせない。絶対に。
フランは静かに、少数の部下達と共に佇んでいた。
「お前たち」フランが部下に向けて話しかけた。
「私はレスティ将軍に一騎打ちを申し込む気でいる。お前たちは下がっていてくれ」
フランが決意を話した。
「しかし、レスティ将軍は最強の将軍。フラン将軍が危ないのでは」
部下がフランを心配した。
「私はエリシア様の剣。こんなところで負けはしない。
それに、外が突破されていた場合、総力戦ではもうこちらに勝ち目はない。
お前たちの命も無駄にしてほしくない」フランが語る。
「最後の最後まで、ついてきてくれて礼を言う。お前たちのような部下を持てて、私は幸せだよ」
フランが笑顔を見せた。彼女が笑顔を見せるのは珍しい。
レスティ達は城内に侵入する準備をしていた。
グラリア達はもう戦えない。
残るは、フラン将軍。
兵力差では圧倒的に勝っているだろうが、何があるか油断は出来ない。
レスティを先頭に城へと歩みだした。
最後の砦を突破するために。




