城下の戦い
いよいよイシュカル城に攻め入る時が来た。
皆の準備は完了した。
「皆、これが最後の戦いになるだろう。これで終わらせるんだ」レスティが言った。
「これより、イシュカル城に攻め込む!強硬派に打ち勝つぞ!」
レスティの号令と共に、カンタール砦から部隊が出撃し始めた。
レスティの部隊。ヘインセルの部隊。平和派の部隊。
大部隊で前進していく。
緊張感が張りつめいていた。
だが、負ける予感はしていなかった。
この大部隊なら勝てるはずだ。
しばらく城に向かって前進した。
強硬派の偵察兵が、レスティ達の部隊に気がつき、急いで城に戻った。
「報告です!敵の大部隊が接近しています!」偵察兵が報告に戻ってきた。
「来たか。部隊を予定通り展開しろ!迎え撃つぞ!」
グラリアが号令をかけた。
ここまで来たらやるしかない。
私とて、帝国五将軍の一人。
女王が強硬派になってから活躍の機会は増えたが、
それ以前は影が薄かった。
ここで活躍し、さらなる地位の向上を目指す。
そのためにも負けられない。国のためなどではない。
グラリアとフランの部隊が展開していく。
レスティ達の部隊が接近してくるのが目視できた。
かなり数が多い。
気後れしている兵士達もいるようだ。
「恐れるな!我々強硬派の力を見せつけてやるのだ!」
グラリアが喝を入れた。
そのままレスティ達が城下に接近してくる。
入り口の門をくぐり、侵入してきた。
「来たぞ!前線部隊、対応せよ!」グラリアが指示を出す。
レスティ達の部隊の先頭は、平和派の部隊だった。
レステイ達の部隊は確実にフランの部隊に当てる。
グラリア達の相手をするのは、ヘインセルの半数と平和派の部隊の役目だった。
「我が国の平和のため!皆、死んではなりません!いきますよ!」クレリアが号令をかける。
前線部隊が衝突した。
まずは、互角の戦い。
ヘインセルの部隊がすぐに魔法で後衛への攻撃に移った。
魔法の効果は高かった。
反撃されずに攻撃出来るというのは、かなりの強みだった。
しかし、おかしい。グラリアの部隊しかいない。
「おい、フラン将軍の部隊が見えないぞ。どうなってる」
エイルが辺りを見回しながら、レスティに訊いた。
「死角に隠れている。それしかない。フラン将軍の部隊が顔を出したら、すぐに対応する。
皆、奇襲に気を付けろ!奇襲部隊には俺たちが対応する!」
レスティが相手の動きを読んで号令を出した。
その通りだった。
グラリアの指示を待ち、フランの部隊は死角に隠れていた。
「魔法の勢力が予想以上だな。少し早いが、このままでは魔法の餌食だ。
やるしかないな。フラン将軍の部隊!今だ!」グラリアが指示を出す。
白い甲冑の部隊が死角から飛び出してきた。
四方八方にいる。
ヘインセルの部隊を狙っている。
「散って対応するぞ!俺の部隊は白い兵士を優先して狙え!」レスティがすぐに指示を出した。
全員を倒す必要はない。
グラリアさえ落とせば、投降してくる兵達もいるはずだ。
フランの部隊を倒せれば、グラリアに集中出来る。
しかし、それは簡単な事ではない。
クレリアの平和派の部隊が、グラリアの元まで辿り着いてくれるのが一番だった。
フランの部隊に、グラリアが指示を出しているように見える。
フランはここにいないようだ。やはり城内か。
レスティが状況を読んでいた。
一方クレリアは、自分の役割をしっかりと認識していた。
一刻も早くグラリアの元まで辿り着くこと。
焦らずに、だが着実に進んでいくこと。
「我々は目の前のグラリアの部隊に集中するのです!」クレリアが叫ぶ。
レスティの部隊とフランの部隊は、ほぼ互角だった。
ヘインセルの部隊に近づけさせないように、戦線を保っている。
中央のグラリアとクレリアの部隊のぶつかり合いが鍵だった。
クレリアが優勢だ。
ヘインセルの援護が強かった。
前線さえ崩せれば、もう敵の後衛部隊はかなり損傷している。
「我らの国のため!負けるわけにはいきません!」クレリアが大きく叫ぶ。
兵達も全力だ。
ここを突破すれば、グラリア将軍の元まで辿り着ける。
戦いは終局に近づきつつあった。




