報告
女王の間に二将軍が集まっていた。
フランが報告をする。
「エリシア様、命令を遂行いたしました」
フランが暗い表情で報告した。
「私も様子を見てきました。街ごと焼き払っていました。
いや、見事見事。フラン将軍の忠誠心を少々見くびっていたようです」
グラリアが笑う。
フランが唇を噛んだ。
「見事だぞ、フラン。平和派などという甘い考えを持つからこうなるのだ。
この効果が少しは甘い民共に効けばいいがな」エリシアは淡々と言った。
その時、グラリアの部下がグラリアに向かってきた。
「何事だ。重要な会議中だぞ」グラリアが兵士に言った。
「報告です。平和の砦が落とされたとのことです」兵士が報告する。
平和の砦?何故いまさらあんなところを。
「ヘインセルと連携を取るつもりか」エリシアが険しい表情で呟いた。
「なるほど。戦力が拮抗しているとみて、ヘインセルに助けを求めに行ったと。
厄介ですね。ヘインセルの戦力がさらに加わると、我々の現在の戦力では」
グラリアが思案しながら話す。これは、まずい。
ヘインセルの戦力次第では強硬派が負ける。
そろそろ潮時か。グラリアは思った。
こんな女王に従って死ぬのは勘弁だ。
隙を見て逃げ出す。部下など知った事ではない。
「グラリア将軍」フランが急にグラリアに話しかけた。
「何か?」グラリアが顔を上げて受け答えする。
「もし逃げようなどと思っているようだったら、私は貴様の首を飛ばすぞ」
凄い剣幕だった。
「私の部下をお前につける。逃げ出そうとしたら、容赦はしない。エリシア様、いいですね?」
フランがエリシアに同意を求めた。
「それでよい。最後までお前たちには戦ってもらう」エリシアが許可を出した。
フランめ、余計なことを。グラリアは舌打ちしそうになった。
「逃げ出すなどと、とんでもない。最後まで戦って見せましょう」
グラリアが口にした。もっと早く逃げ出すべきだったか。
だが、まだ負けたと決まったわけではない。こうなれば、なんとかして打ち勝つしかない。
「ヘインセルの戦力が加わるとして、どうされます?こちらから攻めますか?」
グラリアが作戦を練り始めた。
「いや、城で迎え撃つ。奴らは必ずここに来る。城にて総力戦だ。
グラリアが全ての部隊の指揮を取れ。城下にて戦うのだ。
フランは城内で防衛をせよ。最後の砦だ。絶対に一人たりともここに通すな」
エリシアが命令を告げた。
「わかりました。必ず守り抜いてみせましょう」フランが真剣な表情で誓った。
「前よりも少し戦力が結集しています。その者たちと連携を取るため、
すぐに準備に入ります」グラリアが言った。
「エリシア様」フランがエリシアを見つめた。
「最後まで、戦われるのですね?」
「当然だ。奴らごときに負けはしない」エリシアが当たり前のように答える。
「承知しました。最後まで、お供しましょう」フランが一礼する。
グラリアは思った。馬鹿かこいつは。
こんな女王に忠誠を誓うなどどうかしている。
たまたま、利用できそうだから利用しようとしたからこそ、この女王の下で戦ってきたが、
こいつは本当にこの女王に忠誠を誓っている。
こんな奴と共に戦わなければならないのか。
「素晴らしい忠誠心ですね。尊敬いたします」
グラリアが言った。皮肉だったが。
「さあ、準備にかかれ。絶対に負けることは許さない。行け!」
エリシアが号令を出した。
二将軍が女王の間から出ていく。
最後の戦いに向けて。




