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アリス

 カストル砦を目指してレスティ達が歩んでいく。少数の部隊だ。

進んでいくと、やがてセフィラのいた村が見え始めた。

「セフィラ、寄っていくといい。カストル砦の帰りにまた寄る。

それまで、村でゆっくりしていくといい」レスティが言った。

「感謝します。何か必要なことがあれば、すぐに戻ってきてください」セフィラがお礼を言う。

セフィラは村の近くまで来ると、一人で村の方に向かっていった。

「行ってきます。ローウィンによろしくお伝えください」



 セフィラが一人で村までやってきた。

みんな、いつも通りの生活に戻っているようだ。

少し、安心した。アリスは大丈夫だろうか。

緑豊かな村の中、アリスの両親の姿をセフィラが発見した。

そちらへセフィラが近づいて行く。

両親がセフィラに気がついた。

「セフィラ様!」両親は何故か泣きそうな表情を作った。

「今戻りました。また、発たねばなりませんが。どうかしましたか?」

両親の雰囲気を感じ取ってセフィラが訊ねた。

「娘が、娘が」母親は泣いている。

まさか、何かあったのか。私のいない間に。

セフィラは動揺した。

「娘が、亡くなりました」父親が母親の肩を抱きながら言った。

え?

セフィラは事態が呑み込めなかった。

アリスが、死んだ?

「そんな」セフィラが絶望した声を出す。

「セフィラ様がいない間に、病状が悪化して。最後まで、苦しんでいました。

私たちは何もしてやれず」

父親が暗い声で説明した。

「娘から手紙を預かっております。セフィラ様が帰ってきたら渡して、と。

家においでください」母親が涙を拭いながら言った。

両親が家の方向に向かって歩いていく。

セフィラが後ろをついていった。

傍にいてやるべきだったのか。

あの子が、死んでしまったなんて。

セフィラに後悔の念が押しよせていた。

家まで辿り着くと、両親が家にセフィラを招き入れた。

「これが、手紙です。娘がお願いしていました」

母親が手紙を引き出しから取り出した。

セフィラはそれを受け取り、読み始めた。



セフィラ様へ

セフィラ様、私もう死んじゃうかもしれない。

傍にいてほしい。

でも、セフィラ様は戦わなきゃいけないんだよね。

私たちの平和のために、戦ってくれるんだよね。

セフィラ様が頑張るなら、私も最後まで頑張るよ。

だから、セフィラ様も最後まで頑張って。

絶対に戦いに勝って、また平和に暮らそうね。

また来てくれるの待ってるからね。

私が死んじゃっても、セフィラ様のせいじゃないからね。

今まで優しくしてくれてありがとう。



 セフィラは手紙を読み終わった。

涙が止まらなかった。

傍にいてやるべきだったのだ。病気の進行も抑えられたかもしれない。

どうしてあの子が死ななければならないのだ。

もう会ってあげることは出来ない。

話をしてあげることは、出来ない。

「セフィラ様、泣かないでください。娘の意思を汲んでくれるなら、どうか」

父親がセフィラに言った。

アリスの意思。

『セフィラ様も最後まで頑張って』

私は戦うことを選択したのだ。

レスティ達と共に平和を取り戻さなければならない。

もう、アリスはいない。アリスとは平和に暮らすことは出来ない。

けれど、私は決めたのだ。戦うのだと。

セフィラは涙を拭った。

「辛い思いを二人ともなさったでしょう。あの子は、いい子でした」

セフィラが二人を慰める。

「私はこれからカストル砦に向かいます。平和のため、最後まで頑張ります。

死んでしまったあの子のためにも」

セフィラが決意を込めた表情で言った。

「どうか、ご無事で」両親がセフィラに言った。

セフィラは一礼すると、強い足取りで家を出ていった。

平和を取り戻す。強い光がその目に宿っていた。

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