7話 告白現場
いろいろ考えさせられる事があった部活初日……。
結局の所私のドコが鈍感なのさ!?
「ねぇねぇ、私って鈍感?」
友1「う〜ん…何て言うかあさって鋭すぎて逆に鈍感みたいなトコがあるよーな」
友2「そうそう!なんかウチらの行動全部分かってて、一歩踏み込みすぎて全然違うみたいな?あっ、日本語になってない……(汗」
「な、何だかよく分からないけど……そんなもんかな?」
友1「多分あさだけだよ、ソレ」
「まだ時間あるよね……私トイレ行ってくる」
今日も部活がある…大丈夫かなぁ?何か変な事やらかしそうな気が……。
うん、今日こそしっかり部活やるぞ。
あんな女に惑わされずに……。
皆堂英輔は騒がしい教室の中で1人、決意を固めていた。
「皆堂さんちょっといいですか……?話があるんですけど」
その時、オタク系の女子が声を掛けてきた。
クラスでは見た事無い…他のクラスか。
「いいよ、どこで話す?」
「あの……廊下でいいですか?」
その女子について廊下に行った。
廊下はかなり騒がしかったが女子が連れて行ったのは、あまり人の居ないトイレの前。
「あの……付き合ってくれませんか?」
その女子は恥ずかしそうに俯いて耳まで真っ赤になりながら言った。
そこまでなるなら言わなきゃいいのに……と、こんなシーンを何十回と体験しているオレは思った。
「あのさ……無理だっての分かってる?」
流石に自分でも冷たいな…と思うのだから、言われている女子はかなりの衝撃だろうなと心の隅で思った。
よくよく考えれば誘われた時点でそんな事になるって事は容易に予想できたのに、それを回避しようとしない自分は何て欲深いのだろう…。
いや、欲求不満?
そうだ、手に入らない者への欲求不満……。
それだ。
「何で…ですか?付き合ってる彼女もいないし…あなたの事だから好きな人も居ないんでしょう?だったら……」
「あのさぁ。まだ好きじゃないけど好きになれそうな奴ならいるからさ、今努力してるとこなの。だから邪魔されっと、ウザいんだよね」
「そう…ですか。聞いてくれてありがとう、じゃあ」
その女子は名前も言わず、上靴をキュッと鳴らして去っていった。
「あの……付き合ってくれませんか?」
その声が聞こえたのは用も済んで、手を洗っている時だった。
びっくりして思わず流していた水を止めて(ついでに息も殺して)聞き入っている自分が居た。
(ここここここれはウワサに聞く、ここここ告白シーンではないか!)
数秒の沈黙の後、男子の声が聞こえた。
「あのさ……無理だっての分かってる?」
その声は皆堂のものだったが、いつも自分と会話している時のような柔らかく耳に心地よい低音のそれではなく、冷たく無慈悲な鋭い声だった。
多分教室で誘われてここに来たのだろうと思うけど、こんな事ぐらいイヤって程体験しているはずなのに、それを避けようとしないって事は自分がその女子に与えている影響を分かってないし、自分の欲求不満を隠してるとしか見えない……。
今までの人間ウオッチングのノウハウをフルに活用して皆堂の気持ちを考える。
「何で…ですか?付き合ってる彼女もいないし…あなたの事だから好きな人も居ないんでしょう?だったら……」
「あのさぁ。まだ好きじゃないけど好きになれそうな奴ならいるからさ、今努力してるとこなの。だから邪魔されっと、ウザいんだよね」
…冷たい声。あれじゃー相手の女子もキズつくわな。
好きなれそう?なってやるみたいな言い方。気に食わね〜。
それを自分が手に入れれなくてイライラしてんだろうな〜。
「そう…ですか。聞いてくれてありがとう、じゃあ」
嗚呼、相手の女子のほうがよっぽど偉いな…。
ヤバっ、授業始まっちゃうよ〜!
この状況で部活ん時皆堂に会うのって気まずい……。
あ、でも皆堂でも手に入らない女子って一体だれだろ?