6話 鈍感にもほどがある
ん〜今日は部活初日かぁ……
「あさ!何1人でぶつぶつ言ってんのっ、気味悪いじゃない!」
「あ?ぶつぶつ声に出しては言ってなかったつもりだったんだけどなぁ」
「アンタがそのつもりじゃなくても、周りの人にぶつぶつが聞こえてたのは事実」
「あ、そう。ごめん」
テキトーにあしらってやっぱりボケ〜っと考え事(途中から妄想)をしていた。
あ〜今日は部活初日……か。
「おいエースケ!お前って独り言言うキャラだっけ?」
「え?オレ独り言なんか言ってたのか?…そんなつもりじゃなかったんだけど」
「そのつもりなくても言ってたよなぁ?」
「うん、いつになく大声で」
「あ、そーか。ごめんな」
「部活って言えば、英輔って最初サッカー部か野球部で迷ってるって言ってたよなぁ。でもその後で何でテニス部にしたんだ?」
「そうやって惑わせておけばキャーキャー女子が少しは減るじゃないか」
「あー、まぁそうだけど…その情報信じてサッカーと野球のマネージャー志願が増えて困るって部長達が言ってたぜ」
「別にいいだろ。あいつらも相当溜まってるだろうし、ちょうどいい捌け口を用意してやったんだから逆に感謝されてもいいと思うな。…高屋敷と有須川なら」
あ、有須川ってのはファンクラブの会長の事ね。
「まぁ確かに…(苦笑)、俺もあいつらなら一回はヤってみたいし」
後半きたない会話になってしまってすいません。
イイ男子が2人して妖笑みを浮かべている絵図はかなり怖いものだった(女子には)。
「わ〜遅刻だぁー!!」
何故にあさが学校中を走り回っているのかと言うと、
1:当番だったので学級掃除とプリント配りを平行して行っていたため、転んだ際に集めていたゴミと大量のプリントを撒き散らしてしまい、集めるのに一苦労だった。
2:更に風紀委員での仕事も重なったため、先生のパシリにされていたわけで……
以上の点により、かなり時間をロスしてしまった訳で…と言ってもロスした時間は10分程度なんだけど。
靴を履き、鞄を引っ掛け、メガネのズレを直し、一回躓き、ながら所定のテニスコートに向かった。
「おっくれてすいませ〜ん!!当番の仕事と委員会の仕事がかぶったもので…」
「ま、まぁまぁ落ち着きなよ、まだ来てない奴らも居るからさ」
先輩らしき女子が話してくれた。
まだ息を切らしているあさは、テニスコートの人たちが笑っているのを見てかなり恥ずかしくなった。
「あ…そうですか。すいません、騒がしくて」
と、真っ赤になりながら言った。
どうやら新入部員は10数人、これだけの様だ。
(あの超ウワサになってる皆堂が居るワリには意外と少ないなー…それだけこの情報が出回って無いという事か)
赤くなっている割には冷静に観察しているあさは置いといて、テニスコートの周りがかなり五月蝿かった。
(あの入部希望の中に確か移動は許されないって書いてあった……つまり周りのキャーキャー女子は入って来れない訳か)
「上手い事なってんな〜」
あっ…つい独り言が……。
「え?何が?」
隣に居る先輩が聞いてきた。
「あ、部活の移動はないって事です。周り五月蝿いんで」
「あ〜確かに…あっ、やっと来た!遅ーんだよ皐月ぃ!」
先輩が向こうの男子に叫んだ。
「ごめんごめん、じゃあ新入部員もいる事だし早速自己紹介でもしてくんないかな?そこの隅っこの子から」
って私?どどどどーしよ(汗
「えっと1年3組の鈴木あさです、好きな事はメガネ集めです」
「私は波木梨花です!得意な事は料理全般でとくにお菓子作りが好きです!」
あ〜コイツも皆堂の事ちらちら見てるってー事はきっと好きなんだな。
確かに自己紹介ってのは自分をアピールする時だけど……ちょっと目的違うと思うな。
それからかなりの女子と男子が自分をアピっていって次は皆堂の番になった。
「俺、高木祥平、好きな事は…やっぱ運動かな」
男子も女子にモテようと必死だねぇ。
「1年2組皆堂英輔、最近の趣味は…雑談かな」
う〜む、シンプルイズベストな自己紹介。
私もあーゆう自己紹介にした方がよかったかな?
「1年生は全員終わったか…じゃあ俺も。峯皐月、部長やってまーす」
「あれ皐月言ったの?…しょうがない北嶋翔子です、得意な事…やっぱりテニスかな」
一通り自己紹介が済んだ後、皆でファミレスに行って打ち上げ(?)をやった。
でも私と皆堂は断った。
私は勉強があったし、そーゆーどんちゃん騒ぎはキライだったからで。
皆堂は女子に絡まれるのがヤだったんじゃない?
そーゆーワケで一緒に帰る事になってしまった。
彼曰く、女子が1人で歩いてると顔はどうあれ、危ないからだそうだ。
「そーいえば皆堂ってウチにはよく話しかけるけど何で他の女子には冷たいの?」
「……別に、そういうわけじゃない」
あらまー、急にむっつりしちゃって。
「嘘だぁ〜、だって今日凄く静かだったじゃん。何で?」
「うるさい」
「ねー何でってば〜」
「……お前そういうところは鈍感だな」
「え?どういうところ?」
「…もういい、帰るぞ」
「どこどこどこどこどこ〜?」
住宅地に虚しく響く質問。
「ねぇどこなのさ〜!?」