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18話 夏合宿! 初日


何だか急に夏編に突入してしまいましたが…。

すいません、作者の都合でネタが思い浮かばないと言う緊急事態なので、かねがね考えていた夏編にぶっ飛びます。


カンカンと照りつける太陽。

パシャパシャと波しぶきに戯れる友人達。

う〜、夏だ!!

イェイ☆

パコッ


「いてっ」


峯「お前まで浮かれてどうすんだ。一年代表なんだろ」


ちょこっとムスッとした峯…部長が太陽を背負って立っていた。

何で不機嫌になって…?

んーもしかして…


「先輩、泳げない?」


峯「なっ、そんなこと無い!!」


すると峯の高い背の後ろから、身長差約20cmの北嶋がひょこっと顔を出した。


北嶋「おっ、あさちゃんイイとこ気付いたねぇ♪コイツめちゃめちゃカナヅチなんだ」


峯「なななな何言って……おい北嶋!」


北嶋「あはははっ、やーいカナヅチカナヅチ!!」


「……あの(汗」


2人は追いかけ、追いかけられて遥かかなたの方へ行ってしまった。

…おいおい。



夏合宿最初の一日はずうっと暇(と言うか休日)なので、みんな夕方まで波打ち際で遊んでいた。

太陽が西に傾いて光がオレンジ色にかわったころ、私は皆が見える防波堤の上に座っていた。

すると急に日が翳ったと思ったら、後ろに皆堂が立っていた。


「よぉ、今まで何してたんだ?皆ビーチバレーに誘おうって探してたぞ」


「あれ、そうなの?ありゃー。私ずっとここに居たんだけどな」


「へぇ…ここからあっちがよく見えんじゃん」


「うん、まぁだからここに居たんだけどね」


……沈黙でさえ、柔らかい海の風にさらわれてゆく。


「いいなぁ…私もあんな風に無邪気に遊べたらいいのに」


「だったら何も考えずに遊べばいいじゃないか。……何でそれが出来ないんだ?」


「……別に。皆堂には関係ないことだよ」


独特の物悲しさを抱えて、立ち上がった。

幅2mほどの防波堤は先に行くにつれ、どんどん細くなるように見える。


「そっちは危な……」


ビュウッ


「きゃあっ」


よりによって風が吹いてきて、あさの体が海の方へ傾いた。


「うわっ……」


助けようとして、あさの手を握った皆堂も一緒に海に落ちた。

ドッパーン!


「ぷはぁっ。ごめん、巻き添えにしちゃったね」


「けほっ、別に。それより泳げるか?」


「大……丈夫、だけどゲホゲホッ…喉が痛い」


…大丈夫じゃなさそうだな、と判断した英輔はあさを背負って泳ぎだした。

あさもおずおずと彼の首に手を回す。

しがみ付かれた首と背中からじんわりと温かさが伝わってくる。

手に入れたい女が自分の手の中にいる……


「ごめん」


「え…?」


くるっとあさの腕の中で向きを変えた皆堂が、あさの口唇に自分のそれを押し付けた。

まだ足のつかない深さの海の上で2人は揺ら揺らと漂っていた。

皆堂があさの口唇を食むたび、海水もどっと流れ込む。


「……あっ…はぁ」


「…くっ……大丈夫か」


「何とかね、そっちが溺れさせようとしてたんじゃない」


「どっちに」


「皆堂英輔に。でしょ」


「正解」


頭を掻きよせるようにして口唇をむさぼる。

ふいに向きを変えて、砂浜の方に向かって泳いでいく。


砂浜に着くと、皆が遊んでいる所からは50mほど離れていた。

そこで皆堂は自分が主導権を握れるようにと、やや上に乗る格好になった。

砂浜に左肘をついて右手であさの顔にかかっている前髪をかき上げる。


「そろそろバーベキューの時間じゃないかな」


「少しは遅れたっていいだろ」


さり気なくこの先には進みたくない、と意思表示をしたのだが、さらっとかわされてしまった。

チュッ

と、音を立てて皆堂の顔が近くになり、口唇に体温を感じる。


「……皆堂って、結構モテてるけど意外と欲求不満?」


「…だな。あさの言うとおりだ、自分が一番欲しい女は手に入らない」


パッと皆堂の手を振り払う。


「こんな強引だったらそれもしょうがないんじゃない?」


「……そうかもな、でも分かって欲しいんだ。心にぽっかり空いた亀裂を」


「私…だってずっと求めてた。でも誰も手を差し伸べてくれなかった。だから…諦めたの、希望なんてお気楽な言葉を」


「俺も拒絶されるほうなのか」


「まぁ、そんなものよね。でも皆堂の心の穴は分かるつもりだし、友達ぐらいなら許容範囲だから。じゃあ私BBQの方に行くから」


甘い予感は2人の胸に、確実に足跡を残した。

余韻は長々と尾を引いて残り、夏の夕暮れに飛行機雲となって消えた。

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