脱出
「次の部屋行くぞ!」
中年くらいの男の声が聞こえる…
足音から考えれば人数は3人前後だ。
声が確認できたのは2人だけ…
「5人以上だときついな…」
僕が使える「瞬間移動」の回数は3回前後だ
だとすると、警官と戦闘になるのは好ましくない。
このままだと確実に捕まる…
「くそ!なにか手はないのか!?」
ガチャ!
「おい、この部屋鍵がかかってるぞ!」
ドアの向こうで警官達の声が聞こえる。
どうすればいいのか僕の焦りは次第に高まる
まるでスローモーションのように感じた…
なにか手は?この部屋から出る方法…
なにか…なにかないか!?
頭が沸騰しそうに熱い
こんなに頭を使ったのは初めてだろうか。
バキッ!
鍵が壊された!
僕は慌てて壁に手をつく
「いけるか!?いや、やるしかない!」
バタン!
「誰かいるのか!?いるなら出てこい!」
「…巡査長…誰もいないみたいです…」
「くそ次だ!早くしろ!絶対に逃がすな…」
声が遠ざかる。
ハァハァハァ…
息が苦しい。あまりの焦りと緊張に押しつぶされそうだった。
焦りと緊張そして慌てていた事が影響してか僕はとんでもない事をしでかしてしまった。
「なんとか…生きてる。」
体を触って確かめる。
心臓は、動いている。
僕は壁を越えたんだ。
今まで何も障害物と呼べるものはない状況下でしか使ったことのなかった「瞬間移動」を
「壁」という絶対的な障害を挟んだ隣の部屋に移動した。
賭けだった。
もし、この能力が物体をすり抜けられるような代物じゃなければ僕は壁にぶち当たってそのまま捕まっていただろう。
「まだ…応用が…効くか…試してみる…価値ありだな。」
息が苦しい。
どうやらかなりの体力を消耗したらしい。
僕は壁を支えにしながら立ち上がり、ゆっくりと部屋を後にした。