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2.5m㍍の人権戦争  作者: へろ
6/12

能力者として

「お前は俺の話を聞いてくれるか?ひとりの能力者として…」


僕はそう目の前で語る彼、出雲いずも晴希はるきの話を静かに聞いた。


俺は自室の真ん中に立っていた。

暑苦しい太陽の光と異常に高い湿度が夏を感じさせてくれる少年院の自室だ。

自室といっても3人部屋であったために他に2人いるが2人は寝ている。

俺は部屋を出ようとしたがある物につまずいた。


「なんだこれ?」


そこにはよく見慣れた物が転がっていた。

それは、ベッドで寝ている友達の腕だった。


「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」


俺は怖くなってその場から立ち去った。

その時一番最初に思ったことは、俺がやったのか?だった。


食堂まで走ってその光景を目にした時は本当に絶望だった。

食堂に集合していた他の部屋の子供どころか

大人もみんな殺されていたんだ。


俺はもしこれを自分がやったんだとしたら自分は死ぬべきだと思ったがどう考えても俺には無理だったんだ。皆んなを殺すなんて…


だから俺は真犯人を探し出すと決心したのだがそこにやって来たゴミ収集員が少年院の光景を見て、俺が皆んなを殺したと勘違いして警官に通報したんだ。


俺は逃げた。そして、逃げる途中に2人の警官と鉢合わせた。


「そこの君!止まりなさい!」


ゴツい警官に呼び止められた俺は身体中震えているのを感じた。

そして、警官の手が俺の肩に触れたところで

能力を使った。


俺の能力は2.5m範囲の物体を自由に触ったり持ち上げたりできるもう一本の見えない腕を操ることだ。


「うぉ!?」


その腕で、警官の足を引っ掛けてこかしたが警官はすぐさま俺から距離をとって拳銃を構えた。


動きがどうも闘い慣れしていると思っていたら、その警官は言った。


「元SATをナメるなよ能力者、貴様を今ここで撃ち殺す。」


無理だ、勝てるわけがない。

そう思いながら自分の人としての権利が無くなったことを思い知った。


いくら元SATといえど許可もなく人を撃ち殺すなんてことはあり得ない、だがしかし目の前の男は俺が能力者だと分かるや否や撃ち殺すと言ってきたのだ。


そこからのことは、興奮していてほとんど覚えていないんだがその2人を殺したことだけはハッキリと覚えている。

あんな光景は忘れることができない…


「…これが俺の全てだ。」


…出雲の話を聞く限りではもう1人能力者がこの町にいることになる。単なる人間が少年院の人間全員を虐殺するなんて信じられない。


いや、そんなことよりも警官殺し?

冗談じゃない。

こっちは完璧な無実だっていうのに出雲と一緒にいればそれだけで有罪だ。


「で、お前はどうするんだ?」


出雲が僕に問いかける。


「え、なにが?」


僕はなんのことだと思ったが、すぐに出雲が


「これから先どうするんだってことだよ。」


と呆れたように言う。

そういえば僕はこれから先どうやって生きていけばいいんだろう。

朝になれば僕のことだってニュースで流れるだろうし、ハッキリ言ってこの国に逃げ場などは無いわけだ。


「出雲はどうするの?」


そう聞こうとした瞬間外からパトカーのサイレン音が幾つか聞こえてきた。


「ばれたのか!?なんでだ!」


出雲には思い当たる節が無いようだが僕にはある。多分和也かずや達だ。


すぐさま立ち上がった出雲が僕に言う。


「俺は…俺は戦う」


「出雲!?」


確かに、出雲の能力ならば人を殺すなんて造作もないだろう。

それでも武が悪すぎる。

警官の数は10人やそこらじゃないはずだ。


「お前はどうする?俺と一緒に戦うのかそれともここから1人で逃げるのか?今なら、まだ間に合う。」


僕は…どうする?どうしたい?

そもそも何でこんなことになったんだ?

何が悪いんだ?能力者か?人間か?


「はやくしろっ!」


出雲が叫ぶ。

僕はその場に立ち上がり


「僕も戦うよ、君とは違うやり方で!」


「違うやり方!?」


そうだ、何も戦う必要なんかないじゃないかただ戦うだけなら今朝の国会議事堂のニュースと同じだ!

それじゃあ何も変わらない。

変えなければならないんだ。自分たちの力で!


「僕はデモを起こす!それも、この国中に散らばった能力者全員でだ!」


「はぁ!?なに幼稚なこと言ってんだ」


出雲は呆れているようだった。

しかし、僕は大真面目だ。


「君のやり方は間違っている!賛同できないね!」


「お前!好き勝手言いやがって」


なんとかして出雲を止めなければならない。

彼には一緒に戦って欲しかったんだ。


「この野郎!」


出雲が、近寄ってくる。

僕はすかさず足元にあったカップ麺の中身を前方に投げかけた。


「!?」


出雲はそれを彼の能力である透明な腕でガードしたが、それが僕の狙いだった。

狙いどうり彼の腕にはカップ麺のスープや具が付き、腕のある場所がまるわかりになっている。

それを確認してから

僕はまっすぐに走り出す。


出雲は腕で僕を捕まえようとしているが

僕はそれを瞬間移動でかわし、出雲の後ろに回る。

勝った!そう思った瞬間


「がっ!?」


強い衝撃と共に、僕はその場に倒れこんだ。

顎を強く打ったようで、意識が朦朧としている。


「お前、人を信用し過ぎるんだよ。」


出雲の腕はまだ出雲の前方にあり、出雲自身も僕の倒れている方には目すら向けていない。


完全に後ろをとったはずなのに僕が倒れている。考えられることがあるとすれば…


「俺、この腕を二本操れるんだ。」


そう出雲が言うのとほぼ同時に僕は気を失った。


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