邂逅
バタン
扉を開け中に入る、僕は手当たり次第使えそうなものを探した。
ここは僕と和也が住んでいる学生寮だ。
築25年という年数ながら、まるで50年以上前からあったといわんばかりのオンボロ感である。
まずは食料だ。冷蔵庫の数少ない中身をありったけ鞄に詰める。
ペットボトルに水を入れ、貯金箱の中身を財布に詰める。
すでに外は暗くなっており、蝉の声と
パトカーのサイレン音のみが町中にこだましている。
「さて、これからどこに行こうか…」
そう考えながら
寮一階の玄関口から出た僕は最初から決めていたように東へと進み始めた。
町中を歩いていると何台かのパトカーとすれ違ったが特に何もなかった。
そうこうしているうちに、ある場所へとたどり着いた。
町外れにある神社のさらに東に進むと見えてくる一昔前までマンションとして使われていた廃屋だ。
小学生の時によくここで鬼ごっことかしたなと思いながら中へ入る。かなりボロいが夜中に山の中をうろつくよりは絶対に安全だ。
なにより、部屋の中身はそのままの場合が多いのであわよくばベッドで寝られそうだ。
階段を登り4階あたりまで登った時、人間の足音が聞こえた。僕以外に人が居るとは思えない。
まさか警察か?
そんなことを考えながら僕は足音のしたほうへ近づく、この部屋からか?
407号室…恐るおそる扉を開け中へ入る。
すると部屋の中にはランタンが置かれてあった。
やはり誰かいたのか。ホームレスか?
「おい」
その声に驚いた僕はバッと後ろを振り返ると同時に中に浮いた。
何かに首を強く締め付けられている感じがする。
そうとう苦しいなこれは。
「なにもんだ?お前」
目を下に下ろすとそこには僕と歳は同じくらいであろう男の子が立っていた。
色白で髪の毛も白い、いわゆるアルビノというやつだろうか。
ちなみにアルビノというのは色素欠乏の事で、ホワイトライオンやホワイトタイガーなんかもアルビノ種と呼ばれるものだ。
中に浮いている僕の体はゆっくりと地面に降りてその場に倒れこんだ。
ゴホッゴホッ…
思わず咳き込む。
「お前は誰だ?」
またその男の子が質問してくる。
僕はかすれ気味の声をなんとか振り絞り
「瑞牆巧弥能力者だ。」
と言った。
人間1人の体をても触れずに持ち上げるような奴だ、能力者で間違いない。
「そうか、お前がもうひとりの…」
やっぱり、多分こいつは少年院で見つかった能力者だという僕の予想はどうやら合っていたようだ。
「すまない。立てるか?」
そう言うと、彼は僕に手を差し伸べた。
なんだ?案外話のわかる奴なのか?
僕は彼の手をとり立ち上がる。
それから数分の間僕は彼に食料を分けそして今日体験したことの全てを打ち明けた。
「そういえば、君の名前を聞いていなかったね。」
そう僕が切りだすと、彼はボソッと言った。
「晴希…出雲 晴希だ。」
と言った。
しばらくたわいもない会話をしていると出雲が自分のことを話し始めた。
「俺はすでに、人を殺してしまっている。」
その言葉を聞いた瞬間に僕は凍りついたがなんとか平静をたもつ。
しょうがなかったんだ、そうしなければ俺が殺されていた。
その懺悔に僕は何も言えなかった。
「お前は俺の話を聞いてくれるか?ひとりの能力者として」
…あぁ、と答え僕は出雲の話に耳を傾けた。