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勇者04──防衛省異世界対策室の少年  作者: 朱実孫六
再会

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第5話 ニート寸前! つぎのバイト先は防衛省

新章はじまりました。なろう公式アプリから読んでブックマークしていただけるとランキングが上昇して作者のモチベが上がるので、ぜひよろしくお願いします。

 ──翌日。


 11月1日。月曜日の朝


 朝倉真琴は、今朝も寝癖のついた頭で起きた。




 眼鏡をかけて、布団のなかでLINEを開く。年賀メール以外の交流がなかった友達からもメッセージが入っている。通知は二桁を越え、どのグループチャットも動いている。


 内容は一様に、昨日警察に保護されたあとの彼女を心配した言葉で始まっていた。


 真琴は小さくため息をつく。


「たしかに、本人だって普通に帰るとおもってなかったし……」


 押し込まれたパトカーでは、てっきり牢屋に向かうものと思って怒鳴り散らしていたが、彼女は病院で手当てをうけ、その場でかんたんな事情聴取があって、父の名と職業を告げたあとはパトカーで官舎にある自宅前まで送ってもらえた。




 寝返りをうつ。


「けど、だいぶ拡散してんだな……」


 事件現場で野次馬が撮影したTikTokほか動画の件だ。


 ぼやいた。


「ったく。肖像権でひともうけしちゃうぞ……」


 窓の外は、昨日とかわらない晴天だった。


 


 画面をスクロールする親指が途中で止まった。バイトで一緒だった友人もあれから無事だったようで、胸をなでおろした。返信をうちこむ。


「気にしないでいいよ、っと」


 スクロールをくり返すうち、懐かしいみんなの顔が、一人ずつ頭に浮かんだ。市ヶ谷から数駅のこの官舎には、中学のとき引っ越してきた。幹部自衛官の父は転勤が多かった。


 暮らす土地が数年ごとに変わるのは、慣れている。友達をあたらしくつくることも、別れることも。あまり苦痛じゃない。


 それに、つながろうと思えば、こうやってつながっていられる。


 止まっていたLINEのグループチャットは、どれも今やさながら同窓会の様相で賑わっていた。ある意味、これ以上、自分の返信は必要ないのかもしれない。







 起き出して、ジュースのパックにストローを刺す。リビングであぐらをかいて、テレビをつけた。のっけから報道特番が昨日の西新宿大規模テロを報じている。


 チャンネルを変えるが、通販とMX以外は、どれも特番だ。しかたなくリモコンを置き、静かだったリビングにアナウンサーの声と専門家の解説が流れた。スマホをいじっていると、報道がスタジオから中継に切り替わった。




 空撮に新宿駅から都庁にかけて、中央通りとテロップにある通りが大地震後の様相を呈していた。死者・行方不明者は数千。負傷者は一万人を越えている様子だ。


 現場の女性アナウンサーはヘルメットを被ったまま、新宿駅西口でも、特異体同士の戦闘があり、そのうち少年の姿をした一体を警視庁が確保したと伝えている。


 真琴は、眉をひそめた。


「……特異体とくいたい? なにそれ。中二か」


 スマホで検索すると、それらしい項目がWikipediaにできていた。政府は、西新宿で確認された五体の人型をした未確認生物を零級特異災害体と定義し、その略称を〝特異体〟としたとある。


 怪訝な変顔を上げる。


「五体? あの場にいたのは四人のはず……」


 指を折りながら数える。


「魔王。筋肉。熟女剣士。あと、勇者。ほかにも……どっかにいたのかな」


 眼鏡の下、まぶたをこする。


「てか、あれ、事件じゃね? なんで災害あつかいなの……」




 点けたテレビには、新宿ハルク前での特異体同士による交戦が映っていた。


 けれども型の古い防犯カメラが撮影していた画像らしく、画角は固定されたままだし、画素もひどく粗い。


 そのなかで光を放つ青い鎧の少年が、赤い胸甲の女剣士と打ち合っている。


 モザイク処理はかかっているものの、駅側の歩道には、いたずらウイッチコスの自分らしき姿も映っている。


 真っ黒なため息が漏れた。


 あの野次馬とスマホの数だ。ネットでは、さらに鮮明なぼかしのない画像が出回っていることだろう。妙なハッシュタグが付いているかもしれない。もっと怖ろしいのは名前や学校まで特定されているかもしれないこと……。


 いや。すでに特定されているにちがいない。でなければ誕生日でもないのに全国からこうして一斉にLINEが来るはずがない。




 真琴は、ぼんやりと昨日の彼を目に浮かべた。


 ローテーブルの上には、クリアファイルがある。昨夜帰宅して、いちばんはじめにひっぱりだしたものだ。タイトルに、母の字で『朝倉真琴画伯・画集』とある。


 その一冊目、幼稚園生編を開く。


 クレヨン絵の勇者が、そこにいた。


 ページをめくる。そこにも赤いマントの勇者が立っている。懐かしくも生々しい生命の鼓動が宿っている。


 ふと、腰を抱えられたときの感触がよみがえってきた。


 絵をなぞって、すこし、陶然とした。






 ──と、その時、スマホが鳴動して、真琴は小さくとびあがった。


 通知を覗きこむと【ボス】とある。


「めずらしいな、勤務中に……」真琴は呟きながら受話ボタンを押した。「おはよ。どうしたの」


 電話は父親の朝倉真二だった。


『どうしたもこうしたも、事件翌日の娘を心配しない親があるか』


 聞こえる声は、いつも通り。それだけに真琴の胸の奥のこわばりがゆるんだ。


 彼女はテレビを消した。


「かわんないよ。今起きたところ」

 

 真二は言う。


『学校には休むってメールしておいたぞ』


「さすがボス。仕事がはやい」


 こちらから言いだせばサボりになるところも、親からの話なら愛になる。真琴は自由をかみしめるようにパジャマの両脚をのばした。


 けれど電話からの声は心配そうだった。


『出席日数は大丈夫なのか』


 それは真琴にもわからない。


「どうかな。ひと月はかかるんじゃない。ネットの騒ぎが落ち着くまでだから」


 登校したところで、校門前がワイドショーの続きになりそうな気がする。


『学校に事情を汲んでもらう他ないな。怪我の具合はどうだ』


「うん。まあ、一晩寝たら、もうすっきりよ……」


 言いながら、声のトーンが落ちた。


 鼻をかむ。


 真二が沈黙を破った。


『ほんとか』


「ごめん、うそ……」


 真琴はソファーに身をもたせかけた。


 擦り傷は痛むし、警官につかまれたり引っ張られたりで、できたあざは背中にもあった。肘や手首は紫色で、長袖の季節でよかったとしか言えない。


「でも、ま。謎の薬草もあるし」


 真二の声がつぶやいた。


『なんだそれは』




 ジュースのパックを飲みきる。


「むしろ、寝られなかったのがつらいかな」


 目を閉じると、砕けたガラスと路上の血が浮かんでくる。ついでに、あの鬼女みたいな女剣士の顔も。息をはきながらソファーに身を預けた。


「ボスは国の大切なお仕事。わたしも来年は成人式。へーきよ。もう大人だから」


 手が震える。押さえつけるように親指を握った。クッションに顔を埋める。本当はこわい──またひとりの夜がくることが。



ブックマークや下の☆☆☆☆☆にて評価いただけると嬉しいですヾ(≧▽≦)ノ


次回は、本日15:00に公開予定です!

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